「食中毒について」

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「食中毒について」

リリース日: 平成26年3月27日

食中毒の症状

 食中毒とは、有害な微生物や化学物質を含む飲食物を食べたときに生じる健康被害のことです。
食中毒の代表的な症状は、腹痛、下痢、嘔吐といった胃腸障害や発熱。症状の激しさや、食事から発症までの時間は、原因物質によって異なります。

食中毒の原因

食中毒の主な原因は、細菌とウイルス。なかでも代表的なものを紹介しましょう。

細菌

サルモネラ

潜伏場所
人や家畜など広く分布
主な原因食品
鶏卵や食肉
症状
悪寒・嘔吐から始まり、腹痛、38度前後の発熱など。

腸炎ビブリオ

潜伏場所
海産性の魚介類など
主な原因食品
魚介類やその加工品、二次汚染された食品
症状
下痢、腹痛、吐き気、嘔吐など。発熱はほとんどない。

病原性大腸菌(O157もこの一つ)

潜伏場所
主に牛の腸管
主な原因食品
牛の糞便によって汚染された食肉やその加工品、井戸水など
症状
発熱、激しい腹痛、水溶性の下痢、血便、吐き気、嘔吐 など。

黄色ブドウ球菌

潜伏場所
人や動物の傷口、のど、鼻腔内など
主な原因食品
調理する人の手によって汚染された食品(おにぎり、弁当、サンドイッチなど手作りのもの)
症状
激しい吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など。

カンピロバクター

潜伏場所
豚、牛、鶏の腸内
主な原因食品
食肉やその加工品、牛乳や飲料水
症状
発熱、頭痛、下痢、腹痛など。

ボツリヌス菌

潜伏場所
土壌、河川、海岸、沼地など
主な原因食品
酸素のない状態にある缶詰、瓶詰、パック製品、ハム・ソーセージなど
症状
悪心、嘔吐などに続いて、めまい、頭痛、複視、瞳孔拡大、眼瞼下垂などが起こる。
症状が進むと、発生困難、嚥下困難、起立不能などの神経障害、呼吸困難を起こすことも。

セレウス菌

潜伏場所
河川や土の中など自然界に広く分布
主な原因食品
米・小麦などの農産物を原料とする食品。焼き飯、ピラフ、スパゲティなど
症状
激しい吐き気、嘔吐を伴う嘔吐型と、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐の下痢型がある。

ウイルス

ノロウイルス

潜伏場所
ヒトの腸管内やカキなどの貝類内
主な感染経路
カキなどの貝類、調理従事者を介入して二次汚染された惣菜など
症状
吐き、嘔吐、下痢、腹痛。発熱や頭痛、筋肉痛を伴うことも。症状は1~3日続く。

家庭における食中毒の予防法

「(細菌を)つけない」「増やさない」「殺す」が、食中毒予防の三原則と言われます。

① 細菌をつけない・持ち込まない

  • 調理前、生の肉や魚、卵などを扱う前後、残った食品を扱う前などには手を洗いましょう。
  • まな板もよく洗うこと。
  • 生の肉をつかむ箸と焼けた肉をつかむ箸は別のものに。

② 細菌を増やさない

  • 細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発に。食べものは低温保存が基本です。
  • 肉や魚などの生鮮食品、お惣菜は、購入後、できるだけ早く冷蔵庫に。
  • 冷蔵庫に入れても細菌はゆっくりと増殖するため、早めに食べること。

③ 細菌を殺す

  • ほとんどの細菌やウイルスは加熱によって死滅します。特に肉料理は、中心部を75度で1分以上加熱すること。
  • ふきん、まな板、包丁などの調理器具も、洗剤で良く洗ってから熱湯をかけて殺菌。
  • ただし、なかには耐熱性があり、加熱しても死なない細菌も。代表例がセレウス菌。ただし、セレウス菌の毒素「セレウリド」は菌が食品中で増殖しなければ産生されないため、室温に放置しない、残ったものは冷凍・冷蔵保存するなど菌が増殖しないようにすることで予防することができます。

食中毒の判断と応急処置

 食中毒の一般的な症状は、下痢、腹痛、嘔吐、発熱などで、食中毒特有の症状というものはありません。そのため風邪などに間違われることがよくあります。しかし、食事後、数時間してからこうした症状が起きた場合、食中毒が疑われます。
 「食中毒かな」と思ったら、脱水症状を起こさないように水分補給をすること、吐き気や嘔吐がある場合は吐きやすいように横向きに寝かせることが大事。仰向けではなく横向きに寝かせるのは、吐いたものがのどに詰まるのを防ぐためです。特に、乳幼児や高齢者の場合、吐いたものが口の中にあれば、薄いビニール手袋などをしてかきだしてあげましょう。
 下痢が続いた場合、下痢止めの薬を飲みたくなるかもしれませんが、自己判断で市販薬を使うのはおすすめできません。食中毒の原因である細菌やウイルスが体外に出るのを邪魔し、症状を悪化させてしまうことがあるからです。同様に、市販の解熱鎮痛剤なども使わないほうがいいでしょう。
 ただし、下痢が1日10回も続く、血便がある、あるいは、激しい嘔吐や呼吸困難、意識障害などの重い症状がみられる場合は、医療機関を受診してください。

糞便や嘔吐物の処理方法

 床等に飛び散った患者の吐物や糞便を処理するときは、使い捨てのエプロン、マスクと手袋を着用し、汚物中の細菌やウイルスが飛び散らないようにペーパータオル等で静かに拭き取りましょう。拭き取った後は次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すように拭いて、その後水拭きをします。拭き取りに使用したペーパータオル等はビニール袋に密封して破棄しましょう。ウイルスによる食中毒の場合には乾燥すると空気中に漂いやすくなるため、乾燥しない内に処理をしてください。

 お子さんが布団などにいきなり嘔吐された場合などは、付着物を静かに拭った後に、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いしましょう。その際にしぶきを吸い込まないように注意してください。下洗いしたリネン類の消毒は85℃、1分間以上の熱水洗濯が適していますが、難しい場合には次亜塩素酸ナトリウムの消毒も有効です。この場合には漂白による色落ちに気を付けてください。またスチームアイロンや乾燥機にかけることも効果的です。

病院での治療方法

 まず、食中毒を起こした原因物質を特定します。
 治療は、脱水症状を予防するための点滴、抗生物質を使った薬剤療法が中心です。
 回復までにかかる期間は、原因物質によって異なります。
たとえば、ノロウイルスによる食中毒の場合、通常3日以内に回復に。一方、腸炎ビブリオは2、3日、サルモネラの場合は1週間以内と言われています。
 食中毒を起こしたら、まずは水分を摂ること。そして吐き気や嘔吐が収まったら、バナナやおかゆ、ゼラチンなど、味が薄く、消化がよいものを少しずつ食べてみましょう。もし吐き気が戻るようであれば、数時間は飲食を控え、落ち着いてから再び少量から食べ始めること。味の濃いもの、揚げ物、乳製品、高脂肪や糖分の多い食べ物は、食中毒の症状が治まるまで避けたほうがいいでしょう。

特に食中毒に気をつける人

 一般的に、抵抗力が弱い人が食中毒になりやすいと言われます。
そのため、消化器官や免疫力が未発達な乳幼児、高齢者、虚弱体質の人などは気をつけたほうがいいでしょう。
 また、過労や睡眠不足、過度なストレスなどで体力が落ちている人も食中毒になりやすいものです。
 特に、乳幼児や高齢者は、症状が重症化しがちなので、医療機関を受診しましょう。