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高齢者の保健医療

1. 高齢者とは

 いつから高齢者と感じるようになるかは、かなりナイーブな問題で人により意見が異なるかもしれません。基準が異なると正確な統計を得ることはできないので、一般には65歳以上を高齢者(老人)と分類しています※1 。最近では、65歳といっても現役で元気が良い方が多いので、医療へのニーズが高まる年齢層として75歳を境に、65-74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と分けることもあります。


 高齢者の割合は最近では一貫して上昇しています。現在、高齢者は全人口の18.0%ですが、2010年には23%、2020年には28%に増加すると推計されています。日本では、高齢者のスピードが諸外国に比較して非常に速いのが特徴です。その理由としては、

1. 平均寿命の延長:日本の平均寿命は男性78.3歳、女性85.2歳と世界でも最長です。
2. 出生の減少:少子化が進んでいます。合計特殊出生率※2 は1.33と最低記録を更新しています。
3. 移民の制限:日本では他の先進国と比較して移民の受入れに慎重です。


 現在では、社会の高齢化には、1.よりもむしろ2.による影響が大きく寄与していると考えられています。


 図1に高齢者人口割合と後期高齢者人口割合の推移を示します。ともに増加傾向にあります。1970-2000年までの30年間に高齢者は3.0倍の増加ですが、後期高齢者では4.1倍となっており、特に増加は後期高齢者で顕著です。後期高齢者では前期高齢者と比較して、医療や介護のニーズが急増します。表1に年齢別の医療費を示します。全年齢平均では年間医療費は24.6万円ですが、65歳以上では67.3万円、75歳以上で86.1万円と急速に増大しています。医療費全体の49.1%が65歳以上に、26.2%が75歳以上の方に使用されています。



図1 高齢者割合(65歳以上)と後期高齢者割合(75歳以上)

表1 年齢別の医療費

年齢 医療費(千円)(2004年度)
0-14歳 118.7
15-44歳 101.3
45-64歳 243.1
65歳以上 645.6
70歳以上 732.5
75歳以上 820.3
平均 244.2


※10-14歳を年少人口、15-64歳を生産年齢人口、65歳以上を老年人口といいます。

※21人の女性が一生(15-49歳まで)の間に生む児の数をいいます。2.1程度で人口は拮抗するとされています。

2. 高齢者の健康問題の特徴

 高齢者の健康問題は以下のような特徴を有しています。


・高血圧症、糖尿病などの慢性の疾患が多く、有病率、有訴者率が高くなっています。
・複数の疾患を同時に有することが多く、治療に際して注意が必要です。
・慢性疾患の急性増悪、あるいは慢性疾患を基礎に有していたところに別の急性疾患を発症したという形で医療を必要とすることが多くなっています。
・年齢により個人差が拡大するために、しばしば症状や臨床経過が定型的でなく、診断や治療が遅れることがあります。
・内蔵機能の個人差も大きく、薬剤などの治療効果、副作用の発現が個人により大きく異なることが少なくありません。
・高齢者では環境適応能力が低下しているために、入院・施設収容などで環境が変化すると、それが原因となり痴呆や意識障害を生じることがあります。


 高齢者の治療にあたっては、上記の特徴を十分に考慮に入れて行う必要があります。

3. 老人保健制度

日本の医療保険は被用者保険と国民健康保険の2つに大別されます。被用者保険では会社などに勤めている方とその扶養家族が、国民健康保険は自営業、退職者などとその扶養家族が被保険者の多くを占め、被保険者の年齢構成は高くなっています。高齢になるに従って一人当たりの医療費は高くなるので、被用者保険に比較して国民健康保険では支払い金額が大きくなり、財政的には苦しくなります。このような「不平等」を解消するために、75歳以上の方を対象に、双方の保険から拠出金として共通のファンドをつくり給付を行う老人保健が1983年に導入されました。ここで、被保険者は被用者保険、国民健康保険のどちらかで加入したままであることに注意してください。


 老人保健では、医療保険のみでなく、健康診査など各種の保健事業を行っているほか※3 、医療費の支払に際しても老人の健康問題の特徴には留意した支払方となっており、また一部負担金も所得に応じて1割または2割と軽減されています。


 老人保健制度の特徴を下にまとめて示します。


・対象:75歳以上および65歳以上の障害者
・費用負担:被用者保険、国民健康保険からの拠出金が70%、公費(国・都道府県・市町村)からが30%。公費は段階的に引き上げられ2006年には50%になる予定です。
・一部負担金:1割または2割
・診療報酬の特徴:
 ・ まるめ制度:エックス線検査やリハビリテーションなどを包括して支払がされます。
 ・ 長期入院の是正:180日以上の長期入院者で、難病など厚生労働大臣が定める状態にないものは、入院費が特定療養費化され自己負担を強いられます。
 ・ 患者特性(日常生活障害、痴呆、医療区分など)に応じた患者分類評価がされます。



図2 医療保険と介護保険の構造


※3保健事業には、1.健康手帳の交付、2.健康教育、3.健康相談、4.健康診査(基本健康診査、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、健康度評価、受診指導、肝炎ウイルス検診)、5.機能訓練、6.訪問指導があります。保健事業は40歳以上が対象となります。

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