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医療保険の仕組み

1. セーフティネットとしての医療保障

 社会保障とは、国民の安心や生活の安定を支えるセーフティネットです。社会保険、社会福祉、公的扶助、保健医療・公衆衛生で構成されています。

 日本では医療も社会保障制度の下、提供されています。これは、あらかじめ保険料を支払うことにより、病気やケガが生じた際、医療サービスへのアクセスを保障し、経済的な負担を最小限にとどめようとするものです。


表1 社会保障の種類

社会保険

医療保険、年金、介護保険、雇用保険、労災保険など

社会福祉

老人福祉、児童福祉、母子福祉、身障者福祉など

公的扶助

生活保護
1.生活扶助=衣食、光熱費など暮らしの費用
2.住宅扶助=家賃など住まいの費用
3.教育扶助=小・中学校の費用
4.医療扶助=医療サービスの費用
5.介護扶助=介護サービスの費用
6.出産扶助=お産の費用
7.生業扶助=手に職をつける、仕事に就くための費用

8.葬祭扶助=火葬、埋葬など葬祭のための費用

保健医療・公衆衛生

医療サービス、保健事業、母子保健、公衆衛生など


2. 日本の保健統計

 日本の保健衛生の状況は、世界的にも非常に優れているといえます。表2は、保健衛生の概況をまとめたものです。

 なぜ、日本はこのような世界的に優れた状況に到達できたのでしょうか。その理由としては、「教育水準が高い」、「所得水準が比較的平等」、「国民皆保険制度により医療へのアクセスが保障されている」といったことが指摘されています。


表2 日本の保健衛生の状況

衛生統計
(人口静態・動態)

(2011年)※1  
人口 1億2,780万人  

老年人口割合

(65歳~)※2
23.3% 75歳以上11.5%
出生率 8.3(人口1,000人当)↓ 34歳以下は前年より減少、
35歳以上は増加
合計特殊出生率 1.39 女性が産む子どもの数
死亡率 9.9(人口1,000人当)↑  
平均寿命

男79.44歳

女85.90歳
 
死因順位
  1. 悪性新生物(28.5%)
  2. 心疾患(15.5%)
  3. 肺炎(9.9%)
死因順位の第3位が、
脳血管疾患から肺炎に

母子保健

(2011年)  
乳児死亡率 2.3(出生1,000人当) 世界最低水準
周産期死亡率 4.1(出生1,000人当) 世界最低水準
妊産婦死亡率 4.2(出生10万人当)  

成人・老人保健

(2011年)
悪性新生物
1. 肺がん↑
2. 胃がん↓

1. 大腸がん↑
2. 肺がん↑
 
感染症 

結核

(2011年)※3

結核登録者数5.6万人

新登録結核患者数2.3万人
諸外国と比較して
改善の余地あり

エイズ

(2012年)※4

HIV感染者数1万3,913人

エイズ患者数6,371人
増加傾向。HIV感染者数、
エイズ患者数合わせて
2万人を超えた
医療   医師数(2010年)※5 29.5万人 人口10万人当り230.4人

医療機関

(2010年)※6

病院8,670
診療所9万9,82

歯科診療所6万8,384

病院は減少

診療所、歯科診療所は増加

医療費(2009年)

※7

国民医療費36兆67億円

介護給付費8.4兆円(2011年)※8
1人当り28.2万円


 ※1 平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況

 ※2 人口推計(平成23年10月1日現在)

 ※3 平成23年結核登録者情報調査年報集計結果(概況)

 ※4 エイズ動向委員会報告(2012年5月) HIV感染者数、エイズ患者数の累積

 ※5 平成22年(2010年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況

 ※6 平成22年(2010年)医療施設(動態)調査

 ※7 平成21年度国民医療費の概況

 ※8 介護費非等の動向(平成23年度年間分)

3. 日本の医療保険の特徴

 さて、社会保障の一つである「医療保険」。日本の医療保険は、「国民皆保険」「フリーアクセス」「現物給付」が特徴です。

 

国民皆保険
 国民は、皆、医療保険に入る権利と義務を持っています。これは、日本在住の外国人についても同じです。「健康だから医療保険には入らない」という選択は許されません。


フリーアクセス
 健康保険証を持っていれば、全国どこの医療機関でも受診することが可能です。かつ、医療機関が全国に整備されている、受診時の自己負担額が抑えられている、文化的なタブーがないといったことから、病気や怪我になったときに容易に医療サービスを受けることができます。


現物給付
 「現物給付」とは、療養に必要なサービス(現物)そのものを支給すること。一方、出産手当金、傷病手当金のように現金で支給することを「現金給付」と言います。

 日本の医療保険は、診察、薬剤・診療材料の支給、処置・手術、入院・看護などの医療サービスそのものを支給する、現物給付です。


4. 日本の医療保険の仕組み

 医療保険は、下図のような仕組みになっています。

 まず、患者さん(被保険者)は、毎月一定の保険料を保険者(医療保険を運営する組織)に支払い、病気やケガで、医療機関で治療を受けた際は、実際にかかった費用の3割(小学校就学前は2割、70歳以上は収入により1割、または3割)を窓口で支払います。

 残りの費用は、医療機関が「審査支払機関」に請求します。ここで請求が適正かチェックを受けた後、請求書が保険者に送られ、保険者から医療機関へ支払われるという仕組みです。

 

 自己負担額が抑えられているといっても、かかった医療費の総額が高額であれば、3割とはいえ、高額になってしまいます。そこで、1か月にかかった医療費が一定額を超えた場合に、超えた分が支給される「高額療養費制度」があります。


 ※厚生労働省の高額療養費制度のページはこちらです
 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html



 図 医療保険の仕組み

5. 医療保険の種類 … 被用者保険と国民健康保険

 医療保険は、職域を基にした「被用者保険」と、居住地(市町村)を基にした「国民健康保険」の大きく二つに分けられます。被用者保険の対象となるのは、会社員とその扶養家族、国民健康保険は自営業者などです。

 基本的な給付内容は変わりませんが、保険料はその運営主体によって異なります。被用者保険のうち、代表的な保険者である「協会けんぽ」(全国健康保険協会)の場合、保険料は都道府県ごとに定められています。

 また、財政状態については、被用者保険に加入しているのは比較的若年(=健康、医療費が安い)で、高収入の人が多いのに対し、国民健康保険ではその逆。特に、退職後に被用者保険から国民健康保険に入りなおすことが多いため、被用者保険に比べて財政的に困窮していることが少なくありません。


表3 被用者保険と国民健康保険

  被用者保険 国民健康保険
対象 ※1 被用者および扶養家族 7,390万人 自営業者 3,909万人
運営主体 協会けんぽ、組合管掌、共済組合 市町村
財源 保険料、雇用者、国 保険料、国
給付 疾病、外傷、出産、死亡


※1 2010年3月末現在

6. 今後の方向性

 日本の医療保険は、極めて安価に医療へのアクセスを全国民に保障し、日本の保健衛生水準を世界的にもトップクラスに押し上げることに貢献してきました。

 しかし今、急速に進む高齢化や人口構造の変化、社会ニーズの多様化と高度化への対応を迫られています。また、所得水準の格差が広がっているなか、低所得者層の問題も次第に深刻化しつつあります。さらに、日本の財政状況が末期状態にあることは周知の通りです。

 厳しい財源のなか、一定水準の医療や介護を提供し、今後激増する後期高齢者、要介護者を支えるには、効率化は欠かせません。また、医療保険でカバーする医療の範囲に関する議論も不可避でしょう。

 国民の医療・介護に対する要求は高まる一方ですが、病気の早期発見・早期治療のための検診の受診や健康管理など、国民の皆さんも自分の健康を守る意識を高めていただければと思います。