全日病ニュース

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係数Ⅱの配分見直しは全DPC病院が対象

係数Ⅱの配分見直しは全DPC病院が対象

【DPC評価分科会】
係数Ⅱの7項目の重みづけも検討課題となる可能性

 9月5日のDPC評価分科会は、次期改定におけるDPC制度見直しに向けた検討の方向性を「中間とりまとめ案」に整理した。10月の中医協総会で了承を得た後に、本格的な議論を開始する(1面に関連記事)。  

 「中間とりまとめ案」は、5月28日の基本小委と中医協総会で了承を得たDPC制度に関する「今後の検討課題とスケジュール等」のうち、「診断群分類点数表」「医療機関別係数」について検討の方向性を整理している。
 その基本小委と中医協総会では、医療機関群のあり方について、①Ⅲ群を細分化すべきではないか、②Ⅱ群が「大学病院本院に準じる」病院であるという概念は見直すべきではないか、③Ⅱ群とⅢ群を分ける必要があるのか考えるべきである(機能評価係数で評価する方法もあるのではないか)、という見解が示された。
 分科会におけるその後の議論は、②は基本小委と中医協総会の見解に沿うものとなったが、①と③に関しては見解と異なる方向で議論が進み、今回の報告となった。
 「診断群分類点数表」に関する検討課題のうち、ICD-10の2013年度版には次々回改定以降に対応する方向を打ち出し、重症度を考慮した評価手法(CCPマトリックス)は次期改定での導入を予定してMDC作業班で具体化を進める方針を示している。
 また、激変緩和措置のあり方に関しては、対象病院に対するアンケートを10月以降に実施、実態を把握した上で検討の方向性を決めるとしている。
 医療機関群のあり方については、(1)Ⅰ群を大学病院本院とする現行制度を維持する、(2)Ⅱ群の要件を「地域における機能」とし、病院が地域でカバーしている機能を対象とした基準に見直す、(3)Ⅲ群は細分化しないが機能評価係数Ⅱの配分割合の引き上げを検討するという方向で検討するとした。
 このうち、Ⅰ群に関して、事務局(厚労省保険局医療課)の佐々木企画官は、機能の一部を分院に移したり、総合的機能の一部がないなど「Ⅰ群に値しない本院にはどう対応するのか」という委員からの質問に、「本院はⅠ群が原則である。減算という方法もあるが、どうするかは中医協が判断する問題だ」と答えた。
 Ⅱ群については、「現在はⅠ群に準じるという相対的な要件が設けられているが、それを、何らかの絶対的な基準に変えてはいかがかということ」と説明。その際、「Ⅱ群病院はある程度高度急性期を担うものと考える」との認識を示した。
 この提案は、Ⅰ群とⅡ群をもって高度急性期病院とみなすが、その診療圏域は3次医療圏であり、Ⅱ群病院は基本的には固定されたものとしたい。そのためには、Ⅱ群とⅢ群との間で移行が生じ得る現行の実績要件は好ましくなく、3次医療圏をカバーする機能を評価する独自の絶対的基準値を設けてはどうか、という論理である。
 Ⅱ群に関する考え方を述べる中で、佐々木企画官は「各地域で機能別の病棟配置を考えることになる。その方向を見据えつつ…」と述べるなど、医療計画(地域医療構想)と診療報酬が整合性をもって機能分化・連携を進めるべきという視点を吐露した。
 2次医療圏単位の地域医療構想に対してⅡ群病院は3次医療圏単位という違いはあるが、「Ⅱ群は高度急性期」というかたちの類型化には、今後の機能報告における高度急性期の選択に診療報酬の面で制約を課すという発想がうかがえる。
 Ⅲ群に関して、中間報告は細分化を否定する一方で、医療機能別係数における係数Ⅱの比重を見直すという方向を明記した。ただし、係数Ⅱに対する財源配分割合の見直しは「調整係数の置き換え完了に向けた枠組み」として、Ⅰ~Ⅲ群すべてが対象となる。
 配分割合の見直しとは係数Ⅱの比重を高める方向を意味している。基礎係数によって報酬の大枠が画一的に決まる現行制度の下では、医療の質を上げても増収につながりにくく、質を評価するはずの機能評価係数Ⅱは十分な配分を得ていない。
 分科会で少なからぬ委員から示されたこうした見解に対して、佐々木企画官は、「係数Ⅱの重みを増すことによって、各病院の取り組みを質の向上に誘導していくことができる」という認識を示した。
 同企画官は、分科会後に「分科会における議論は、バラエティーに富んだⅢ群を評価する上で、今の機能評価係数Ⅱの財源は少し足りないというものだった」との認識を披露しており、財源配分の見直しはⅢ群の調整に重点が置かれる可能性がある。
 その一方で、複数の委員から、7項目が等分に配分されている係数Ⅱの「重みづけも検討すべきではないか」という意見が示され、「そのことによって激変緩和措置がいらなくなるのではないか」との指摘もあった。
 佐々木企画官は7項目の配分見直しに否定的な反応を示したが、「係数Ⅱに関してはまだ議論が残っている」ことを認め、今後の議論に含みを残した。
 分科会は、中間報告で示された課題の検討作業を10月の基本小委と中医協総会に諮った後に開始し、14年度内に医療機関群のあり方等医療機関別係数に関する基本方針を決め、15年度から具体的な係数設定の作業を開始する予定だ。

□DPC制度に係るこれまでの検討結果(中間とりまとめ案)
(編集部注)以下の各項目には9月5日の議論内容が書き加えられる可能性がある。

1.「診断群分類点数表」に係る検討課題
①ICD-10(2013年度版)に係る対応について
 現時点でのスケジュール上、H28年度改定での対応は課題が多いため、次々回改定以降の対応とすることも含め検討してはどうか。
②重症度を考慮した評価手法(CCPマトリックス)について
・導入を検討するMDCは、01(脳血管疾患など)、04(肺炎など)、05(心不全、虚血性心疾患など)、06(結腸、直腸の悪性腫瘍など)、07(リウマチなど)、10(糖尿病など)、12(卵巣、子宮の悪性腫瘍など)としてはどうか。
・14桁コードの上10桁に関しては従前と同様、ツリー図による構造を維持し、原則として下4桁に対応する範囲に関してCCPマトリックスによる精緻化を検討してはどうか。
・MDC作業班でCCPマトリックス導入の検討を進めてはどうか。
2.「医療機関別係数」に係る検討課題
①適切な医療機関群のあり方に関する検討
【Ⅰ群のあり方】
・Ⅰ群を大学病院本院として評価することを維持してはどうか。
・「Ⅰ群の中で分院に機能を移している病院」および「総合的な機能の一部(精神科病床など)を備えていない病院」にヒアリングを実施し、今後の取り扱いを検討してはどうか。
【Ⅱ群のあり方】
・Ⅱ群の病院は地域における機能を要件として、それを満たす病院としてはどうか。
・そのための絶対値による基準値の選定については引き続き検討することとしてはどうか。 (考え方)
・絶対値を基準値にした場合に、それを目指して診療行為がゆがめられる可能性があるため、基準値の策定にあたっては慎重な検討を要する。
・今後は、地域における医療機関の機能の観点も要件として考慮していく必要がある。
【Ⅲ群のあり方について】
 Ⅲ群の細分化は行なわないことにしてはどうか。
(考え方)
 Ⅲ群の中には規模が小さくても、専門性の高い高度な医療レベル、医療の質を持った医療機関があり、必ずしも診療の科目数が多ければレベルが高いというわけではないことを踏まえ、見直しをしていくべきではないかという指摘があったが、専門性の高い高度な医療レベル、医療の質を持った医療機関であっても、それぞれの機能評価係数Ⅱの項目において評価はされているのではないか。
②調整係数の置き換え完了に向けた枠組み
【医療機関群および基礎係数・機能評価係数Ⅱの基本的な考え方の整理】
 基礎係数・機能評価係数Ⅱの重み付けの見直しを検討してはどうか。
(考え方)
 医療レベル、医療の質を上げたとしても基礎係数により画一化されており、現状、機能評価係数Ⅱでは十分に評価されていないのではないかという指摘があるが、機能評価係数Ⅱの重み付けを拡大することで、さらに医療機関の医療の質向上に対する努力を評価することができるのではないか。
③激変緩和措置のあり方
【激変緩和措置のあり方について】
・実態を把握するためにも特別調査(アンケート)を行ってはどうか。
・アンケートを踏まえた上で、激変緩和措置の方向性を決めてはどうか。