全日病ニュース

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厚労省「病院・診療所の訪問看護報酬を引き上げる」

厚労省
「病院・診療所の訪問看護報酬を引き上げる」

【2015年度介護報酬改定】
病院・診療所訪問看護の減少に歯止め。訪問リハ評価体系の再編も視野

 10月22日の介護給付費分科会に、事務局(厚労省老健局老人保健課)は、2015年度介護報酬改定で病院・診療所による訪問看護の報酬を引き上げる方針を示した。訪問看護を実施している病院・診療所が年々減少している事実に、急遽対策を迫られたもの。
 分科会で、迫井正深老人保健課長は、「地域包括ケアという観点からも、病院と診療所には一定程度、訪問看護を提供していただく必要がある。減少傾向に歯止めをかけたい」と説明した。( 4面に関連記事)

 地域包括ケア体制を構築していく上で、介護保険で提供される訪問看護はきわめて重要な役割を担っている。
 しかし、事務局が示した資料によると、訪問看護の利用者数は02年の22.2万人から14年の35.5万人(いずれも4月審査分)に増加しているが、同じ期間の訪問看護事業所数の推移をみると、訪問看護ステーションは1,056から5,405 に増えたものの、病院・診療所の訪問看護(請求事業所数)は3,874 から1,687 へと大きく減少している。
 この間、介護報酬と診療報酬は訪問看護ステーションの育成強化に努めてきたが、実は、その過程で、病院・診療所の訪問看護部門が弱体化するという逆行現象が生じていたのだ。
 病院・診療所が訪問看護から撤退していく背景には、報酬上の格差、看護師の不足など様々な要因があるが、少なくとも現にある病院・診療所の訪問看護に報酬面からテコ入れし、これ以上の減少を阻止、さらには底上げを図りたいというのが、厚労省の本音である。
 15年度介護報酬改定における「訪問看護の報酬・基準見直し案」として、事務局が示した方針(別掲)は、(1)訪問看護ステーションの在宅中重度者を支える対応体制を評価する、(2)病院・診療所からの訪問看護の報酬単価を増額する、(3)訪問リハについて、訪看ステーションと訪問リハ事業所の評価の見直しも含めた再整理、の3点からなる。
 (1)は、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、ターミナルケア加算のいずれも一定以上の算定実績等をもつ、在宅中重度要介護者の医療ニーズに重点的な対応体制をしいている訪問看護ステーションを評価する(新たな加算を設ける)というもの。14年度診療報酬改定で新設された「機能強化型訪問看護ステーション」に対応する措置だ。
 (3)は、訪問看護ステーションと病院等訪問看護事業の訪問リハの評価体系を再編を含めて見直すというものだが、その方向性について、事務局は「今後の通所リハと訪問リハに関する議論にあわせて、これらも整理してはどうか」と提案した。
 生活期リハについては、現在、「高齢者の地域におけるリハビリテーションの新たな在り方検討会」で、今回改定に向けて、その充実化を図る具体策が議論されている。
 その検討課題には、①廃用症候群への早期対応、②居宅サービスの一体的・総合的提供とその評価、③通所と訪問の連携や他のサービス事業所間・専門職間の連携、があげられている。
 この議論を先取りし、事務局は、8月27日の介護給付費分科会に、通所介護の重度者対応機能と心身機能訓練を強化して地域連携拠点化していく中で、看護やリハの専門職については「他事業所との連携等による人員配置の見直しも必要」とする考えを表明するとともに、「訪問系サービスと通所系サービスの一体的・総合的な機能分類と評価体系」の必要性を提起している。
 委員からは、「通所介護と医療機関を含む訪問看護の連携」「既存の事業所同士の連携強化に加えて複合化した多機能一体型の創設」「居宅施設と訪問看護事業所の委託契約」「自施設利用者に対する訪問看護を通所介護が行えるようにする」などの検討を求める意見が示された。
 こうした、在宅の中重度要介護者を支援するリハを地域という面展開の中に位置づける上で、訪問リハの評価体系を再編・見直すとともに、病院・診療所の訪問リハを増点して底上げを図るというのが、訪問リハに対する厚労省の15年度介護報酬改定の方針である。

介護給付費分科会 「訪問看護の報酬・基準(案)」10月22日

論点1  在宅中重度者を支える訪問看護ステーションの対応体制の評価について
 在宅での中重度の要介護者の療養生活に伴う医療ニーズに対応する訪問看護ステーションの体制を評価してはどうか。
対応
・在宅での中重度要介護者の療養生活を継続するための支援を更に強化する観点から、医療ニーズに対応したサービス提供体制の評価を行うため、新たに加算を設ける。
・在宅中重度要介護者の医療ニーズに対して、以下のような重点的対応を実施している体制を評価する。
 電話等により常時対応できる体制や緊急時に訪問看護を行う体制(緊急時訪問看護加算)、特別な管理を必要とする利用者に対して計画的な管理を行う体制(特別管理加算)、在宅での死亡まで看護を提供する体制(ターミナルケア加算)のいずれも一定割合以上の算定実績等があること。
論点2  病院・診療所からの訪問看護の報酬算定の見直しについて
 将来的な訪問看護従事者の増員を図るべく、病院又は診療所からの訪問看護供給量の拡大を促し、同時に病院看護職に対するOJT(訪問看護への従事)による訪問看護職の育成を推進するため、病院又は診療所からの訪問看護の報酬の見直しを行ってはどうか。
対応
 病院・診療所の訪問看護の報酬単価を増額する。
論点3  訪問看護ステーションにおけるリハの見直しについて
 訪問リハについて、訪問看護ステーションと訪問リハ事業所との評価に、見直しも含めた再整理が必要ではないか。
対応
   今後の通所リハと訪問リハに関する議論にあわせて、これらも整理してはどうか。