全日病ニュース

全日病ニュース

診療側 治癒率低下と平均在院日数短縮の評価めぐり分科会の見解を批判

診療側 治癒率低下と平均在院日数短縮の評価めぐり分科会の見解を批判

【診療報酬基本問題小委員会】
DPC分科会が「退院時転帰の指標に『治癒+軽快』の採用」を提案。基本小委は否定

 12月3日に開かれた中医協の診療報酬基本問題小委員会で、平均在院日数短縮傾向に対する評価のやりとりが出現。
 診療側の医科委員は、異口同音に「短縮はほぼ限界に達している」という認識を示した。診療側の見解に、支払側の白川委員(健保連副会長)も一部同意した。議論は、基本小委の質問に対する診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会の回答をめぐって行なわれた。
 DPC評価分科会による「2013年度退院患者調査の結果報告」を検討した10月8日の基本小委は、報告を基本的に了承したが、その際、診療側の中川委員(日医副会長)は、(1)DPC対象等病院における退院時転帰で治癒が減少している理由、(2)(出来高病院を含めて)平均在院日数が継続的に短縮している要因を示してほしいと、同分科会に要請した。
 この指摘について、DPC評価分科会は11月10日と26日の2回にわたって検討した結果、要旨以下の見解をまとめ、この日の基本小委に回答した。(1)過去5年の退院患者調査結果をみると、退院時転帰は、治癒は減少傾向にあるが、「治癒+軽快」に着目すると、すべての病院類型に若干増減があるものの、経年的な変化の傾向は認められない。今後、この調査では、病院のアウトカム指標として、治癒と軽快をまとめてモニタリングすることが妥当ではないか。(2)出来高をふくむすべての病院類型で短縮傾向が認められる。また、DPC対象病院の平均在日数はその他病院よりも短い。その要因として、①診療報酬上の評価、②医療・看護技術の進歩(在宅・外来での化学療法、急性期のリハ、内視鏡手術など侵襲性の低い技術、認定看護師等による合併症発生の抑制やADL低下の防止)、③病床機能の分化(後方病院の充実)など、複合的要因が考えられる。
 この回答に対して、中川委員は「予期せぬ再入院」の割合が年々増加している事実をあげ、治癒割合の減少と「予期せぬ再入院」の増加が相関している可能性に懸念を示すとともに、治癒と軽快を合わせた指標とする考えに強く反対し、同分科会に再検討を求めた。
 また、平均在院日数短縮化の取り組みは出来高病院を含めて強化の一途をたどっているとも指摘。病院現場を疲弊させるなど「短縮はもはや限界に達している」と主張、その政策を見直す時期にきているという認識を表明した。
 平均在院日数に関する見解に診療側の鈴木委員(日医常任理事)と万代委員(日病常任理事)も同調し、DPC評価分科会に再検討を求めた。
 一方、支払側の白川委員は「基本的には、DPCの病院だけでなく、病院全体として、平均在院日数を減らすべきだと思っている」としつつも、「現実には様々な機能の病院があり、すべてを同列に議論するつもりはない」と述べ、平均在院日数の機械的な短縮論とは一線を画す立場を表明した。
 その上で、「DPCの病院に関しては、(診療側の指摘に)同意できる点もある。とくに、予期せぬ再入院が増えているのは何故なのか、私も関心がある。引き続き注目し、かつ、議論していかなければならない重要な問題だ」と発言、DPC評価分科会とは異なる認識を表わした。
 基本小委の指摘に反論を試みたDPC評価分科会の見解に対する中川委員の反駁はさらに続き、「DPC対象病院がこれだけ増えた現在、DPCという制度がこのままでいいのかという検討を積極的にしなければならない」と、DPC制度の見直し論にまで及んだ。
 治癒率低下や平均在院日数に関する診療側の意見に、事務局(厚労省保険局医療課)は「そうした指摘があったことを分科会にあらためて報告し、今後の議論に反映させていきたい」(佐々木企画官)と述べ、今後の議論で十分留意する意向を表明した。これを受け、基本小委はDPC評価分科会の回答を了承した。

激変緩和措置 廃止是非議論の資料へ、当該病院を調査

 この日の基本小委は、また、DPC評価分科会から上がった、激変緩和措置対象病院に対する特別調査の実施案を承認した。
 激変緩和措置とは、DPC対象病院の調整係数を基礎係数と機能評価係数Ⅱに段階的に置き換えていく中で、医療機関係数別係数の変動によって生じる診療報酬収入の変化を2%の範囲にとどめるために暫定調整係数を調整することをいう。
 置き換えはすでに調整係数の50%に及び、次回改定で75%、18年度改定で100%となって完了、DPC/PDPSはすべて機能実績による評価となる。
 しかし、激変緩和措置によって調整係数の置き換えを猶予していくと、18年度の置き換えは収入変動の激変を招くことになり、分科会では、次回改定も実施すべきかという議論が行なわれる中で、当該病院の経営実態と意識などの調査を実施し、その結果を踏まえて廃止の是非を判断することになったもの。
 調査対象は、14年度改定で同措置を受けた135施設(変動率+2.0%以上82施設、変動率-2.0%以下53施設)。
 調査内容は、①財務状況(DPC病棟だけでなく医療機関全体の収支変動)、②人員配置、③医療提供体制(医療計画における5疾病・5事業・在宅医療にかかわる当該医療機関の地域における役割)、④DPC参加前後の入院診療の外来移行の実態、⑤DPC参加の経緯、⑥18年の調整係数廃止に向けた要望、からなる。