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審議報告 「療養機能強化型」創設の一方、特養の基本報酬引き下げを明記

審議報告
「療養機能強化型」創設の一方、特養の基本報酬引き下げを明記

【2015年度介護報酬改定】
介護給付費分科会 処遇改善加算は継続、病院訪問看護は引き上げ。マイナス改定への不安相次ぐ

 12月19日の社会保障審議会・介護給付費分科会に、事務局(厚労省老健局老人保健課)は、2015年度介護報酬改定に関する審議報告案を提示。分科会での合意事項を踏まえて議論結果をまとめるかたちで、改定方針を諮った。
 その中で、処遇改善加算の継続と上乗せ加算の新設、介護療養型医療施設の看取り等機能の新たな評価、病院・診療所の訪問看護の評価引き上げなど報酬を増やす項目が明記される一方、介護老人福祉施設や小規模型通所介護の基本報酬、集合住宅に居住する利用者に対する訪問系の報酬など、引き下げの対象とする項目が明らかにされた(要旨を別掲)。
 このうち、処遇改善加算の継続には日経連などの委員が、特養の引き下げには介護保険施設系の委員が、介護療養型医療施設の機能に対する新たな評価には、保険者や日経連等が反対意見を表明するなど、この日は、審議報告案をとりまとめるには至らなかった。
 また、委員からは、新聞報道などで取りざたされている「マイナス3.0%」という改定率への懸念や反対意見の表明が相次いだ。
 1%のマイナスで介護保険給付に要する政府予算が約1,000億円削減できるとされる中、消費税再増税の延期の下、06年度以来9年ぶりのマイナス改定がとりざたされている。
 事務局は、次回1月9日に運営基準改正案の諮問・答申を見込んでいるが、並行して審議報告案の議論も進め、月中までにとりまとめ、その後、改定率を受けて速やかに新たな報酬案を示し、1月内に答申を得たいとしている。
 「審議報告案」には、介護療養型医療施設における「療養機能強化型」報酬体系の創設が書き込まれている。これは、介護保険におけるリハ体系の再構築とともに、今改定のもっとも大きなできごとといえる。
 医療を必要とする重度患者を受け入れる「療養機能強化型」は、「生活機能を維持改善するリハ」や地域貢献活動の実施という新たな機能の獲得を経て、自らを地域包括ケアにどう位置づけていくか、3年後に迫る「廃止」に向けた重要な布石になろうとしている。
 介護給付費分科会には「介護療養型医療施設の延命策ではないか」と警戒する向きがある中、厚労省は、医療を抜きにしては成り立たない地域包括ケアの、しかも、後期高齢者が増加をたどる2025年に向けて、医療保険の負担を減じる可能性も含め、“医療型介護保険施設”の必要性を認めたといえよう。

介護保険施設等の主な改定方針―「2015年度介護報酬改定に関する審議報告案」から

●介護老人保健施設
・リハ専門職の配置等を踏まえ、在宅強化型基本施設サービス費と在宅復帰・在宅療養支援機能加算を重点的に評価する。
・入所前後訪問指導加算は、退所後を支援する要件を満たす場合に、新たに評価を行なう。
●介護療養型医療施設
 介護療養型が担っている機能を確保するため、以下の要件を設けて、重点的に評価する。
①重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者が一定割合以上
②一定の医療処置を受けている患者が一定割合以上
③ターミナルケアを受けている患者が一定割合以上
④生活機能を維持改善するリハの実施
⑤地域に貢献する活動の実施
●介護保険施設等の口腔管理の充実化
・経口維持加算は口腔機能を踏まえた多職種による経口維持管理を評価するものへと見直し、充実を図る。併せて、口腔機能維持加算を口腔衛生管理加算に、口腔機能維持管理体制加算を口腔衛生管理体制加算へと名称変更する(いずれも仮称)。
・経口移行加算は、栄養管理に加え、咀嚼能力等の口腔機能を含む摂食・嚥下の機能面への対応の取り組みを評価するものへと見直し、充実を図る。併せて、名称も経口移行訓練加算(仮称)と変更する。
・療養食加算は経口移行加算または経口維持加算との併算定を認め、かつ、評価を見直す。
●訪問看護
・緊急時訪問看護加算、特別管理加算やターミナルケア加算のいずれも一定割合以上の実績等がある事業所の体制を評価する新たな加算を設ける。
・病院・診療所からの訪問看護は基本報酬を増額する。
●リハビリテーション
 訪問看護ステーションによる理学療法士等の訪問と訪問リハは基本報酬の整合性を図る。
●介護職員処遇改善加算の拡大
 現行の加算の仕組みは維持しつつ、さらなる資質向上の取組、雇用管理の改善、労働環境の改善の取組を進める事業所を対象とし、さらなる上乗せ評価を行うための区分を創設する。処遇改善加算の将来的な取り扱いは、引き続き検討することが適当。
●サービス提供体制強化加算の拡大
 介護福祉士の配置割合がより高い状況を評価する区分を新たに創設する。
●集合住宅居住者への訪問サービスの評価の適正化(訪問看護・訪問リハ等の場合)
①事業所と同一または隣接する敷地内の建物(養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サ高住に限る)を訪問する場合は、人数に関わらず、報酬を減算する。
②事業所と同一建物以外の建物(同上)の場合は、利用者が一定数以上である場合に、新たに減算する。

 

全日病ニュース2015年1月1日・15日号合併号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2013年11月1日号) - 全日本病院協会

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2013/131101.pdf

    2013年8月2日 ... 厚生労働省は10月11日の社保審医療部会に、一般・療養の病床数を病床機能報告
    制度. の医療機能ごとに ... 別に基準病床数を4区分ごとに定める(案1)、(2)新たな
    病床区分や基準病床数は設け. ないが、機能 .... あり、各県医療審議会や傘下の医療
    計. 画策定の ..... 相当する額に自然増9,900億円を加算し. た額の範囲 ...... 見(日経連
    の委員=参考人)も出た。 ... 本体 +1.38%(急性期、処遇改善、在. 宅医療、 ...

  • [2] 第788回/2012年10月15日号

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2012/121015.pdf

    過去に加算という方法. もあったが、我々 ... 年度内に報告書. がまとまる予定」と説明
    した。 嘉山委員は、看護必要度の内容見直. しの必要性を述べる一方で看護必要度. の
    A項目に ... 大学病院の不正請求支払側が詳しい報告と対応策を求める. 10月3日の ....
    減と処遇改善の状況、⑦慢性期精神入. 院医療や ..... 審議報告のメール送信を開始.

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