全日病ニュース

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項目を見直す「重症度、医療・看護必要度」は15%を継続すべき

【2016年度診療報酬改定入院医療の検討課題と見直しの方向性について】

項目を見直す「重症度、医療・看護必要度」は15%を継続すべき

地域包括ケア病棟は手術等の包括と包括外で入院料を分化させるのが適当

副会長(入院医療等の調査・評価分科会委員) 神野正博

 10月15日の第10回入院医療等の調査・評価分科会をもって、2014年度改定の影響調査とその結果の解釈についての議論が終わった。2016年度の診療報酬改定に向けて、「検討結果の(最終)とりまとめ」は、膨大な別添資料と共に武藤正樹分科会長によって、10月21日の中医協総会で報告された(4面を参照)。

 本稿では、特に今後の会員病院の存続にかかわることが大きいと考えられる項目を中心に議論の流れと今後のあるべき姿を提言する。

□急性期入院医療と重症度、医療・看護必要度について

 厚生労働省医政局所管となる地域医療構想区域ごとに、2025年度の推定機能別必要病床数に収斂させるのは、区域毎に構想会議(協議の場)での話し合いであるとされる。一方、保険局所管の診療報酬では、財務省の圧力の下、病院の思いや地域における希望とは裏腹に、いわば『兵糧攻め』で2025年度の姿に、「早急に」収斂させようとしていると言える。
 その陰には、2020年のプライマリーバランスの黒字化という現内閣・財務省の国際公約が足かせとして見え隠れする。
 今回の調査結果でも、7対1入院基本料(以下7対1)から10対1入院基本料(以下10対1)へ転換した理由の第1は重症度、医療・看護必要度であり、ついで平均在院日数と続く。ならば、7対1を国の意志を持って減らすならば、攻めどころは重症度、医療・看護必要度ということになる。
 そこで、これを簡素化するという大義の下で見直しをすることによって、より高度急性期患者のみを7対1で診るようにしようという方向性と、それにどう贖あがなうかがカギとなろう。そもそも、諸外国では高度急性はICU、HCU以上の看護配置が常識であり、7対1などと言ったら笑われるだけである。
 紹介状を持って、歩いて来院し、予定手術がなされる患者ではB項目を稼げない。そういった「高度急性期病院」救済の意味でA項目のみで評価する要件が入った。今回「せん妄」に関する項目の入れ込みに力を注いだ。全日病調査においても看護現場におけるせん妄患者の増加が大きな問題になっているからだ。本来は、A項目に値すると主張したがB項目入りとなった。
 さて、問題は項目を見直した上で、要件となる現行15%をどうするかということになる。中医協の議論に委ねられるが、分科会では、項目を見直しても患者数は変わらないという前提だった。したがって、項目の見直しの上で15%のままが基本となる。いたずらな%アップは現場の混乱を招くだけと考える(表)。
 さらに、この重症度、医療・看護必要度、データ提出加算と共に7対1だけではなく、広く他の入院基本料、特定入院料に拡がる可能性がある。
 病棟間で役割機能分化されているのか、それとも同じ病状の患者あちこちの種別の病棟にいるのか? この問いに対しては、それなりに機能分化されているはずであるという立場に立つと、各種別間で統一された評価基準を提出するという方針に反対するわけにはいかないと考える。
 7対1以外の病院も、これらの項目に対しての準備に掛かるべき時期と考える。今回、必須項目にならなくとも、加算項目として収益アップに貢献するかもしれない。

□地域包括ケア病棟入院料と病棟群別入院基本料について

 地域包括ケア病棟が増え続けている。
 7対1の基準維持が厳しくなった場合、病院が選ぶ道は、全病棟を10対1以下にするか、一部の病棟を特定入院料病棟にするかしか道はない。全体を10対1にする減収効果よりも後者を選ぶ経営判断が多いことだろう。このような思惑で地域包括ケア病棟を選択するのは大病院に多い傾向が今回の分科会で示され、これら病院では、当然のことながら、ほとんどの患者が急性期後の患者であった。
 この流れに贖あがなうには、われわれ四病協・日病協が提言している病棟群別入院基本料制度の導入しかない。7対1全病棟を転換するのではなく、患者の病状に合わせて病棟群で転換し、同じ病棟群の中における看護師の傾斜配置を認めるというものである。
 これによって、(背伸びしている)7対1病棟は確実に減少するはずである。
 もし、10対1から7対1へ増加するのではないかと危惧する勢力があるとすれば、10対1から7対1へのアップは認めないという一項を付ければよいだけであろう。
 分科会では、この地域包括ケア病棟における手術料と麻酔料などを包括外にすべきか、現行の包括内のままでいいかという議論があり、両論併記となった。
 地域包括ケア病棟入院患者には大きく2つの累計がある。病床機能報告制度で回復期に属する急性期後の患者と急性期に属する在宅からの軽度急性患者である。前者の手術料等は包括内、後者のそれは包括外であるべきと考える。すなわち、地域包括ケア病棟入院料の2分化である。
 病棟群別を認めないまま、7対1の要件を厳しくすれば、複数病棟で7対1を持つ病院はケアミックスとして地域包括ケアへ行かざるを得ない図式となる。場合によっては10対1よりも少ない看護師に患者の安全な周術期管理を任せることで現場の疲弊を招く。いわば、医療の粗悪化かつ安売りである。
 したがって、手術料等を包括外にしてここで手術患者を管理させようという考え方には反対である。
 一方、在宅医療を支援する小病院においてすべての病棟を地域包括ケア病棟とする場合(いわば地域包括ケア病院)があり得る。その際には、地域から在宅患者の軽度急性期を任されることもあり得る。ここでは、小手術や輸血などの手術料等を出来高払いで認めるべきであると考える(図)。

□慢性期入院料について

 療養病棟から在宅復帰患者は自宅から入院した患者の在宅復帰は高いものの、他の病院からの転院者のそれは極めて低かった。かつ、在宅復帰機能強化加算の算定病棟の退院患者の入棟期間は31日以上入院患者が多かった等のデータから、他院・自院の入院からと在宅からといった入院経路によって在宅復帰率の算定式が変わる可能性がある。
 また、療養病床で診る患者の多様化によって、現行の医療区分の定義、対象病態は見直す時期に来ている。きちんとした議論の早急な開始を望みたい。
 障害者施設等入院料及び特殊疾患病棟入院料等の見直し、廃止、療養病床との統合論が渦巻いた。しかし、意識障害を有する脳卒中の患者など、状態像が療養病棟の対象患者と重複している患者が一定程度入院しているという資料が出たものの、同時に明らかにこれら入院料病棟への入院患者は、療養病床に比して医師、看護師の診療、観察密度が高いことを主張し、その必要性を唱えた。
 脳卒中患者の入棟基準に関して何らかの変更はやむ得ないものの、これら病棟の必要性は訴え続けていただきたい。