全日病ニュース

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25対1の8割弱、介護療養の6割が医療療養20対1への転換を予測

25対1の8割弱、介護療養の6割が医療療養20対1への転換を予測

【医療療養病床・介護療養病床に関する全日病調査】
当該病棟をもつ病院の72.2%が介護療養と25対1の廃止に反対を表明

 全日病は、2018年3月末に予定されている介護療養病床の廃止や療養病床25対1経過措置の終了にかかわる会員病院の実状と意識を把握するために「医療療養病床・介護療養病床に関するアンケート」を実施、このほど、その中間報告をまとめた。
 アンケートは高齢者医療介護委員会(木下毅委員長)の手で、会員のうち療養病床を有する1,346病院を対象に9月末から10月初めにかけて実施され、546病院から回答を得た(回答率40.6%)。
 介護療養病床の廃止と25対1経過措置の終了に対する賛否については、回答した546病院の43.0%が反対と回答した。
 反対との意見は、介護療養病床もしくは25対1を有する234病院では72.2%の高率に達している。
 両病棟の法的根拠が失われた2018年4月時点の当該病棟についてたずねたところ、25対1の77.2%、介護療養の59.7%が、それぞれ「医療療養20対1に転換する」との意向を示した。介護保険施設や介護施設への転換を予測したのは、前者の3.1%、後者の18.2%に過ぎない(複数回答)。
 こうしたことを踏まえつつ、中間報告は「慢性期の患者を在宅でケアする体制がでていない状態で病床再編を行なうのは問題があり、並行して在宅医療の充実と体制づくりをしていかないと医療・介護難民が出てくる恐れが大きい」と指摘。当該病棟の病院から施設へと一方的に誘導を図ろうとする行政の意図に警鐘を鳴らした。
 高齢者医療介護委員会副委員長である土屋繁之構成員は、10月23日の「療養病床の在り方等に関する検討会」で中間報告の内容を説明した。(1面記事を参照)

全日病「医療療養病床・介護療養病床に関するアンケート」中間報告

(1)回答546病院の許可病床数(2015年9月現在)
 一般病床/29,191、療養病床/51,364、その他の病床/7,265 病床の合計/87,820
(2)回答病院における療養病床(51,364床)の内訳
 医療療養20対1/25,823(50.3%)、同25対1/6,986(13.6%)、回復期リハ病棟/9,120(17.8%)、地域包括ケア病棟/667(1.3%)、介護療養・機能強化型A/4,601(9.0%)、介護療養・機能強化型B/1,644(3.2%)、介護療養・その他/2,523(4.9%)
(3)回答病院のうちの療養病床のみの病院
 176病院(21,188床)
(4)療養病床のみの病院における病床の内訳
 医療療養20対1/10,644床(50.2%)、同25対1/2,502床(11.8%)、回復期リハ病棟/2,966床(14.0%)、地域包括ケア病棟/137床(0.6%)、介護療養・機能強化型A/2,272床(10.7%)、介護療養・機能強化型B/1,292床(6.1%)、介護療養・その他/1,375床(6.5%)
(5)25対1経過措置終了と介護療養病床廃止を踏まえた2018年4月の病床予測
 対象病院/回答のうち医療療養25対1・介護療養病床を有する2 3 4 病院(38,372床)。内訳は医療療養25対1保有病院が127病院(6,986病床)、介護療養病床保有病院が159病院(8,768病床)。

(6) 25対1経過措置終了と介護療養病床廃止に対する意見

(7)自由記載意見から(抜粋)
・療養病床が漫然と患者を入院させているわけではなく、機能向上や質の向上等の努力をしていることを国に伝えてほしい。
・医療資源の乏しい地域では、医師や看護師等の確保が難しく、25対1の経過措置が終了すると病院運営ができなくなる。
・慢性期患者の中でも在宅や介護施設等に入居が困難な事例も多数あり、受け皿となる場所の確保が課題である。それが無いうちに療養病床を廃止すれば、医療難民が多数出てしまう。
・「土地」「建物」「人材確保」の費用が重くのしかかり、容易に転換できない。
・居宅系事業者の重症者受入体制の整備を並行して行なわなければ、国が推進する在宅への流れは遅々として進まないと思う。
・「寝たきりを作らない」ことを目的とする新たな類型が必要である。
・療養病床の廃止や見直しを否定しないが、介護難民・医療難民が出ないような体制作りを希望します。
・早く結論を出してもらわないと、平成30年3月末までに体制を整えることができない。
(8)まとめ
 調査の結果から、医療療養は20対1病棟が半数を占めており、重度の患者を多くの職員でケアしていることがうかがえる。
 医療療養25対1と介護療養病棟とも、平成30年4月時点の病床予測においては医療療養20対1等への転換を想定している。
 回復期リハや地域包括ケアの病棟へ転換予定と回答している病院も少なからずある。その一方、介護保険施設等と回答した病院は少ない。
 ただし、転換に際して「土地」「建物」「人材確保」など困難なことが多く、実現できるかどうかは不明である。
 在宅での慢性期医療の提供体制がみえてこないことから、慢性期の患者を在宅でケアする体制がでていない状態で病床再編を行なうのは問題があり、並行して在宅医療の充実と体制づくりをしていかないと医療・介護難民が出てくる恐れが大きい。
 患者・利用者に対するメッセージが出されていないのは地域住民を無視していると思われても仕方がない。
 病床数だけを検討するだけでなく、地域の医療・介護提供体制を一体として考えないといけない。