全日病ニュース

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熊本地震 復興への取組みが本格化

熊本地震 復興への取組みが本格化

全日病がAMATを派遣 被災地に対する長期的な支援が重要に

 熊本・大分地方を震源とする一連の地震は、5月の連休後も余震が続いているものの、復興の動きが本格化している。18万人を超えていた避難者の数は、8日時点で1万3,883人となり減りつつあるが、引き続き避難生活を強いられている人たちは、精神的ストレスが大きく継続的な支援が必要となっている。
 4月14日夜に熊本地方で震度7の地震が発生したのに続き、16日未明に益城町で震度7を観測する本震が発生。
 強い揺れを伴う余震が続き被害が拡大した。その後、ライフラインや交通機関は1週間ほどで復旧が進んだ。電力は20日にはほぼ回復した。
 災害ボランティアの受け入れも始まり、復興に向けた動きが本格化する中で、被災地の病院では職員の疲労が蓄積している。余震が続いているため、注意が必要な状況が継続している。

● 復旧が本格化 慢性期の医療ニーズに対応

今後の支援方針を話し合う鬼塚院長、陣内支部長、井上支部長、織田副会長(左から)。

 全日病は4月15日に西澤寛俊会長を本部長、加納繁照常任理事(救急・防災委員会委員長)を統括副本部長とする災害対策本部を設置。厚生労働省や日本医師会との連携体制を確立するとともに、AMATを派遣し、日本医療法人協会と共同で支援活動を行うことを決定した。
 これを受けて、織田病院(佐賀県)とヨコクラ病院(福岡県)が15日に熊本に入り、情報収集と救援活動を開始。16 〜17日には、市比野記念病院、サザンリージョン病院、国分中央病院(いずれも鹿児島県)が強い余震が続き大渋滞の中で支援物資の搬送に当たった。AMATは16日以降、白鬚橋病院、永生病院、南多摩病院(いずれも東京都)、霧島記念病院(鹿児島県)、赤穂中央病院(兵庫県)が順次活動を展開した。25日時点で、支援活動を行った全日病AMATは11隊・43人である。
 被災地では余震が続く中で、日々変化する状況の把握と支援の調整が不可欠となった。このため日本医療法人協会から伊藤会長代行(社会医療法人大雄会理事長)が16日に現地に入った。
 同時に、支援物資の確保・供給に当たるため全日病事務局から職員1人が派遣され、青磁野リハビリテーション病院を拠点に活動。全日病の織田副会長と安藤副会長が現地に入り、情報収集を行った。
 14日の地震発生から3日目までは、水、食料、オムツなどの物資が不足したが、支援活動により供給が加速し、5日目以降、物資の不足は解消に向かっている。地震直後の急性期医療では、脳外科や整形外科が必要とされ、麻酔科医が不足したが、急性期を乗り切った後は慢性期の医療ニーズへの対応が中心となっている。時系列で変わる状況に対応して、人的・物的支援の調整が必要となった。
 現地では、行政の対応の遅れもあり、ニーズの把握と調整が不十分で、支援物資があっても必要な人に届いていない状況もみられた。とくに避難所の体制整備が課題だ。
 安藤副会長は現地の調査を踏まえ、「避難所における指揮命令系統を明確にして、チーム医療が機能する体制をつくる必要がある。とくに小児科のニーズがあり、地域の医師会との連携が必要だ」と指摘。可能であれば、医療スタッフとのパイプ役として保健師の配置を考えるべきだと述べている。

● 被災地のニーズを把握し、会員病院を支援

 4月24日には、被災地に近い福岡、佐賀、長崎の各県の支部長、病院長が博多市内で今後の支援方針を協議した。
 集まったのは、福岡県の陣内支部長、長崎県の井上支部長、田主丸中央病院(福岡県)の鬼塚院長で、佐賀県から全日病の織田副会長が加わった。支援物資については供給が充足しつつあることから、今後はマンパワーの支援に重点を移す必要があるという認識で一致した。熊本市内の病院では、職員自身が被災しながら、医療活動を支えている状況。十分な睡眠がとれない中で通常以上の業務を担い、疲労が蓄積している。
 こうした状況を踏まえ織田副会長は、「医師だけでなく、あらゆる職種の支援が必要だ。民間の中小病院の立場から、長期的な視点で支援を考える必要がある」と述べる。
 東日本大震災の経験からも、急性期の医療ニーズが終息した後は、慢性期の医療ニーズへの対応が重要になることは明らかだ。被災地の病院が通常の医療を提供できるように効果的な支援を行うことが課題。現地の会員病院のニーズを把握した上で、JMATとの役割分担を調整しつつ、支援体制を構築することが求められる。

 

全日病ニュース2016年5月15日号 HTML版

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年5月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160501.pdf

    2016年6月4日 ... AMATは、余震が続くなかで刻々と. 変わる被災状況に対応して支援 ... の地震 強い
    余震で11万人が避難. 医療機関も被災 全日病AMATが出動し支援活動を展開 .....
    取り組みが欠かせないと指摘した。 利用開始時に比べて障害高齢者の日.

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