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次期改定に向け入院医療の議論に着手

次期改定に向け入院医療の議論に着手

【中医協総会】
診療報酬と地域医療構想の関係で診療側・支払側の意見分かれる

 2018年度の診療報酬改定に向けて検討作業に入っている中医協(田辺国昭会長)は1月25日に総会を開き、入院医療の総論的な議論を行った。厚生労働省が入院受療率や平均在院日数、許可病床数の減少など、最近のデータを示すとともに、限られた資源で、医療ニーズの変化に対応できる、質の高い効率的な医療提供体制の評価に向けた検討を求めた。また、診療報酬と地域医療構想の関連をめぐって、診療側と支払側で意見の違いが表面化した。
 次期改定に向けた初めての入院医療の議論に際し、厚労省が現状を示す様々な資料を提出した。それによると、入院医療をめぐる状況は厳しい。外来患者の微増に対し、入院患者数は減少傾向にあるほか、入院受療率の低下は65歳以上で顕著である。病院数はゆるやかに減少し、一般病床もやや減少傾向を示している。なお、病床の半数以上(約55%)を医療法人が占める。
 病床利用率は低下から横ばいの状況にあり、平均在院日数は減少している。一般病床の平均在院日数は16.5日(2015年)。一方、1日当たり入院医療費は伸びている。1人当たりは0~4歳、75~ 84歳の伸び幅が大きい。医療経済実態調査で一般病院の損益率をみると、2013年度の1.3%から2014年度は▲ 2.8%に悪化した。医療法人は2.2%から2.0%で、ほぼ横ばい。
 7対1入院基本料は届出病床数、1月当たり算定回数ともに減少している。
 7対1以外を含め、一般病棟入院基本料の稼働率は、概ね低下傾向にある。
 これらの実態とあわせ、厚労省は、◇高齢化の進展で認知症などのニーズが増加◇人口減少で支え手が減少◇開設者別に医療機関の運営実態に違いがある◇前回改定で、医療機能に応じた適切な評価の推進と手厚い医療の評価の充実を図ったことを留意点としてあげた。
診療報酬の関連付けは時期尚早
 また、地域医療構想に関する資料が多く提出された。これに対して、診療側の委員から、「診療報酬で、地域医療構想の実現を誘導するのか」と質問があった。診療側委員は、内閣官房の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」が作成した2025年の推計値を資料に盛り込んだことにも反発。「地域により異なる医療機能別の病床の必要量を全国ベースで積み上げても意味はない。医療機能の分化・連携は、医療機関の自主的な取組みにより、収れんしていくものだ」と述べた。
 専門調査会の推計は、医療機能の分化・連携により、2025年までに、病床数を全国で34万床程度削減しても医療ニーズを満たせると推計している。
 厚労省の迫井正深医療課長は、「地域医療構想に診療報酬が、どう寄り添うかは、今後議論になる」と回答した。
 一方、支払側の委員からは、「地域ベースでみても、将来的に多くの地域で、急性期が過剰になり、回復期が不足する。その是正を診療報酬がやるとまでは言わないが、その環境を作る必要はある」、「地域医療構想が想定する病床の必要量に近づけるために、診療報酬改定を考えるのは自然」などの意見が出た。
 全日病副会長の猪口雄二委員は、「病床機能報告制度で、医療機関に自主的に医療機能を判断してもらっている段階。高度急性期、急性期、回復期、慢性期の地域医療構想の4機能を、診療報酬と関連付けるのは時期尚早であり、今後もそうならない」と述べ、診療報酬による直接的な誘導に反対した。
 また、厚労省が示した論点に、「地域において求められる医療機能や、患者の状態に応じた入院医療の提供体制の推進」との文言があったため、支払側から、「地域独自の診療報酬を設定するのか」との質問が出た。迫井課長は、「地域の取組みの推進に資する診療報酬の意味で、必ずしも地域独自の診療報酬を考えているわけではない」と答えた。
 医療療養病床25対1の取扱いについては、介護療養病床から「介護医療院」などへの転換の経過措置が、6年になったことから、「25対1の期限も6年間延長すべき」との主張があった。
 そのほか、「前回改定で、7対1と10対1の病棟群単位の届出が認められたが、使い勝手が悪い。病棟群のあり方を含め、改善が必要」、「大病院が地域包括ケア病棟を増やしている。地域包括ケア病棟の届出を開設者別、医療機関の病床数別に把握し、対応を検討すべき」などの意見が出た。
キイトルーダのガイドライン案了承
 厚労省は1月25日の中医協総会に、キイトルーダ(MSD)の最適推進使用ガイドライン案を示した。効能・効果は、「PD − L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」。オプジーボと同じく、がん細胞による免疫システム抑制を防ぎ、免疫システムががん細胞を異物として除去するよう作用する。
 一般名は、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)。
 オプジーボでは、化学療法が未治療の患者の有効性・安全性が確立されていないのに対し、キイトルーダは化学療法未治療の患者にも投与できる。
 施設要件は、◇がん診療連携拠点病院等、地域がん診療病院◇特定機能病院◇がん診療連携病院◇外来化学療法室を設置し、外来化学療法加算1または2を取得する施設─とした。
 また、肺がんの化学療法及び副作用発生時の対応に、十分な知識と経験を持つ医師を責任者として、配置することなどを求める。5年以上のがん治療の臨床研修を受け、うち2年以上は臨床腫瘍学の研修を受けた医師などの要件を明記する。
 ガイドライン案について、特に異論がなかったため、厚労省はキイトルーダの保険収載時に、留意事項通知を発出する予定とした。
 部会の委員からは、キイトルーダの薬価について、オプジーボよりも市場が拡大する可能性が高いため、それを見込んで「薬価を低くすべき」との意見が出た。厚労省は、現行の薬価算定のルールに従って、薬価を設定する考えを示した。

 

全日病ニュース2017年2月15日号 HTML版

 

 

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