全日病ニュース

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外国平均価格調整のあり方を議論

外国平均価格調整のあり方を議論

【中医協・薬価専門部会】
米国薬価は調整から除外すべきとの意見が大勢

 中医協の薬価専門部会(西村万里子部会長)は1月25日、薬価制度の抜本改革に向け、外国平均価格調整のあり方を議論した。他の比較国と比べて、極端に高額になりがちな米国の薬価の取扱いが焦点となっている。米国の参照価格の基準が他国と異なり、市場実勢価格の把握が難しいことから、委員からは米国の薬価は除外すべきとの意見が相次いだ。
 外国平均価格調整は、薬価の算定において、外国価格とのかい離が大きい場合に調整を行うものである。平均を算出する際に、「米、英、独、仏」の4カ国の価格を用いる。類似薬効比較方式と原価計算方式のいずれかで、調整前の薬価が、外国平均価格の1.25倍を上回る場合は引下げ調整を、0.75倍を下回る場合は引上げ調整を行う。また、「新規性に乏しければ、引上げ調整は行わない」などの特例がある。米国の価格が、他国よりも高く、平均価格を引き上げる傾向にあることが、以前から問題となっていた。このため、◇最高価格が最低価格の3倍以上であれば、その外国価格は除く◇最高価格がそれ以外の平均価格の2倍超であれば、最高価格を平均価格の2倍とみなす─などの仕組みを導入した経緯がある。過去3年で、日本の収載品目の価格と外国価格との比率の平均値をみると、英国は1.19倍、ドイツが1.64倍、フランスが1.14倍であるのに対し、米国は3.41倍で突出している。
 米国の薬価が高いのは、他の国が公的医療保険制度における公定価格等であるのに対し、製薬企業の希望小売価格である、いわゆるリストプライスを採用しているためとの指摘がある。米国は、民間保険が主体の自由価格であり、市場実勢価格を反映した価格の把握が難しいとの事情がある。
 このため支払側の委員から、「米国の薬価を他の国と同様に参照するのは、違和感がある」との意見が出た。診療側は、米国の薬価の市場実勢価格を把握することの可否を厚生労働省に質問した上で、「把握が無理なら、米国の薬価は除外すべき」と主張した。他の委員からも、米国の薬価を除外して、平均価格調整を行うべきとの意見が出た。
 トランプ大統領に懸念示す
 一方、診療側・支払側双方の委員から、以前から薬価算定に関する要望を表明してきた米国において、貿易で2国間協議を重視するトランプ氏が大統領に就任したことに懸念を示す意見が出た。これに対し、厚生労働省の迫井正深医療課長は、「薬価制度は公平・公正の原則のもと、適切に運用している。薬価制度を適切に運用するため、覚悟を持って臨む」と答えた。
 なお、厚労省は外国平均価格調整の参照国のほか、今後の検討課題を以下のように整理している。◇引上げまたは引下げ調整の対象とする医薬品の範囲◇類似薬効比較方式で、新薬の1日薬価を既存類似薬の1日薬価に合わせる設定のあり方◇引上げまたは引下げ調整の対象となった医薬品の調整方法◇世界に先駆けて日本で上市された医薬品の薬価が、収載後に外国価格と著しく異なる場合の調整─。

 

全日病ニュース2017年2月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 中医協総会> トルツ皮下注の再申請で薬価算定の不透明感高まる

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20161201/news03.html

    2016年12月1日 ... 中医協(田辺国昭会長)は11月9日に総会を開き、乾癬治療薬のトルツ皮下注(日本
    イーライリリー)を含む35品目23成分 ... 薬価算定における外国価格調整は、米、英、独
    、仏の薬価平均である外国平均価格を算出し、それが調整前の価格 ...

  • [2] 薬価基準の算定について(厚生労働省保険局医療課:H26.2.12)

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2014/140214_2.pdf

    2014年2月12日 ... 一環として中央社会保険医療協議会において、別添のとおり、「薬価算定の基準 ... 薬価
    収載とは、当該銘柄について、薬価に係る厚生労働大臣告示を定め ..... し、外国平均
    価格調整にあたっては、外国の薬剤の国別の価格が2ケ国以.

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