全日病ニュース

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生活習慣病の重症化予防の評価が課題に

生活習慣病の重症化予防の評価が課題に

【中医協・総会】
調剤報酬は次期改定でも引続き抜本的な見直しを行う

 中医協総会(田辺国昭会長)は3月29日、次期診療報酬改定に向けて、外来医療と調剤報酬をテーマに議論した。外来医療では、生活習慣病に対する医学管理や重症化予防の取組みを課題とし、かかりつけ医と専門医療機関との連携や多職種協働の評価などを論点とした。調剤報酬の議論は今回が1回目。かかりつけ薬剤師・薬局を評価する調剤報酬の抜本的見直しを前回改定に引き続き議論していく方針が示された。
生活習慣病の重症化予防を議論
 厚生労働省が示している外来医療の検討項目のうち、「予防から治療まで一貫したサービス提供・システム連携の推進」に関連して、生活習慣病に対する医学管理や重症化予防の取組みを議論した。
 生活習慣に関連する主な疾患(高血圧性疾患、脳血管疾患、心疾患、糖尿病、悪性新生物(大腸がん、肺がん))の入院外医療費は約4兆円で、医療費全体の約3割を占める。外来患者数に対する割合は約2割だ。また、死因のうち、生活習慣に関連する主な疾患の割合は5割を超えるというデータがある。
 生活習慣病は、生活習慣の改善によって重症化や合併症を予防することが可能だが、治療を受けなかったり、受けても中断してしまうことが少なくない。例えば、2012年国民健康・栄養調査によると糖尿病が強く疑われる40~ 49歳の約5割が治療を受けていない。特に働き盛りの年齢層で、適切な治療が行われていない実態がある。
 これに関し、支払側の委員は「仕事が忙しく、受診できないサラリーマンが多い。ICT を活用した遠隔診療を推進すべき」と主張した。診療側委員は、「あくまで対面診療が原則であるべき。働き方改革など社会全体の取組みも重要になる」と、遠隔診療の積極的な活用には、慎重な対応を求めた。
 一方、生活習慣病に対する医学管理や重症化予防の取組みとしては、行政や保険者が実施している事業がある。
 厚労省は特に、健康日本21と特定健診・特定保健指導制度を取り上げた。
 また、自治体の糖尿病の重症化予防の事例などを紹介した。具体的には、◇退院患者のうち重症化リスクの高い者への保健指導や連携機関との情報共有を行う糖尿病性腎症重症化予防プログラム◇検査データ等でハイリスク者を抽出し、かかりつけ医、腎臓専門医、保健師等が連携して多面的に支援◇患者の行動変容を促す積極的な介入で、BMI やHbAlc を改善─などの取組みを紹介した。
 これらの状況や取組みを踏まえ、厚労省は、「かかりつけ医と専門医療機関等との連携の推進」、「かかりつけ医を中心とした多職種との連携による効果的な医学管理等の推進」、「医療機関と保険者・自治体等の予防事業との情報共有の推進」の評価を論点とした。
 ただ診療側の委員からは、「診療報酬の守備範囲を超えているものが含まれている。十分な財源が次期改定で期待できない中で、評価の対象を広げすぎるよりも絞るべきではないか」との意見が出た。厚労省の迫井正深医療課長は、「診療報酬でやるべきこととそうでないものを整理し、優先付けする必要はある。ただ今回の改定は、医療・介護全体の課題を総ざらい・総点検して、その上で、やるべきことを考える必要がある。そのために早めに議論を開始している」と述べた。
院外調剤と院内調剤の格差是正を
 調剤報酬は、2016年度改定に引き続き、「患者のための薬局ビジョン」などを踏まえ、次期改定でも、調剤報酬の抜本的な見直しを行うことが政府の方針。2016年度改定では、「かかりつけ薬剤師・薬局の評価」、「薬局における対人業務の評価の充実」、「後発医薬品の使用促進策」、「いわゆる門前薬局の評価の適正化」などを行った。
 厚労省は2016年度改定について、「現時点では限られたデータ」と断った上で、一定の成果がみられるとの見解を示した。例えば、「かかりつけ薬剤師指導料等」の届出薬局は半数以上に達するなど、対人業務の増加傾向が確認できるとした。また、薬剤師の専門性の発揮が、「多剤・重複投薬の防止や残薬解消などを通じ、医療費適正化に貢献する」と強調した。
 しかし、かかりつけ薬剤師・薬局の評価を手厚くすると、院内調剤との差が拡大することになる。例えば、解熱鎮痛剤・抗生剤を7日分処方する場合、院内調剤の評価だと、薬剤料を除き、「調剤技術基本料8点+調剤料9点+薬剤情報提供料10点」を合わせて27点。これに対し、いわゆる門前薬局での評価は105点~ 110点、かかりつけ薬剤師・薬局では178点。その差は歴然としている。
 全日病副会長の猪口雄二委員は、「差がありすぎる。同じ仕事をした場合には同じ報酬であるべきだ」と訴えた。厚労省は「独立して調剤する薬局と医療機関では評価の観点が異なる」と答えたが、他の委員からも「調剤技術基本料8点は低すぎる」との声があった。
 また、論点が「患者本位の医薬分業の実現」となっていることに対し、診療側の委員から、「なぜ医薬分業ありきなのか。医薬分業でなくても、患者本位の調剤は可能だ」との疑問が出た。支払側の委員は、「患者本位の医薬分業を前提にしないと、調剤報酬の抜本見直しの議論が進まない」と反論した。

 

全日病ニュース2017年4月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 中医協総会> 遠隔診療のサービス提供モデルの評価を今後検討

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170301/news02.html

    2017年3月1日 ...中医協総会】 外来医療を総論的に議論. 中医協(田辺国昭会長)は2月8日に総会を
    開き、次期診療報酬改定に向けて外来 ... 厚労省の分析によると、入院・入院外の医療
    費の伸びの多くは、高齢化で説明できるのに対し、調剤は高齢化の要因が他の要因より
    小さい。 ... 化予防や健康指導・管理といった多様なサービス提供モデルが検討されて
    おり、様々な状況で実用化に向けた取組みが行われている」と紹介した。

  • [2] 16年度改定基本方針決まる|第861回/2015年12月1日号 HTML版 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20151215/news05.html

    2015年12月15日 ... 12月2日の社保審医療保険部会と12月4日の同医療部会は2016年度診療報酬改定の
    基本方針案についてそれぞれ ... 等の取組」「調剤報酬の見直し」など、中医協総会で
    先行して審議されつつある16年改定の焦眉の課題が盛り込まれた。

  • [3] 厚労省「医療機能の分化・連携と地域包括ケアシステムの推進」を重点

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20151101/news04.html

    2015年11月1日 ... 不正が発覚した調剤報酬に関する検証も必要」(松原日医副会長)などの意見が示され
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