全日病ニュース

専門的医療を行う施設の明確化の方向性で一致

【厚労省・心血管疾患WG】
評価指標の設定は引き続き議論

　厚生労働省の「心血管疾患に係るワーキンググループ」（永井良三座長）は４月28日、急性期の心血管疾患の診療連携体制について議論。地域の医療資源の状況に応じて、「専門的医療を包括的に行う施設」と「専門的医療を行う施設」を明確化する方向性で概ね一致した。ただし、施設の機能を評価する指標に関しては、「ランク付けの誤解を生まない対応が必要」（美原盤委員・全日病副会長）などの意見があり、引続きの検討課題とした。
　迅速な救急搬送が求められる急性期の心疾患治療において、地域の医療資源を効率的に利用し、対応疾患に応じた急性期診療を24時間体制で提供するネットワーク体制の構築が課題。心血管疾患が疑われる場合、患者の状態に応じて専門的治療が可能な医療施設に円滑に救急搬送できる体制が必要との考えでWG は一致している。
　一方、急性期心血管疾患では、疾患によって治療内容が異なる。心不全は「手術なし」が全体の85％を占めるが、急性心筋梗塞の「手術なし」は9.8％で、ほとんどの場合に、手術が必要となる。手術は侵襲性の低い冠動脈インターベンション治療（PCI）など内科的治療が多い。解離性大動脈瘤は「手術なし」が56％と半数を超えるが、手術では半数近くが侵襲性の高い大動脈バイパス移植術など外科的治療となる。
　各地の取組みをみると、岩手県では地域の拠点病院で緊急のPCI が完結できる体制を整えている。拠点病院の常勤医は３名程度で、岩手医科大学の派遣医師で体制を維持している。しかし急性大動脈疾患を拠点施設で治療するのは困難で、盛岡の心臓血管外科常設施設に患者を搬送している。
　また、厚労省が示した研究報告では、急性心筋梗塞に対するPCI 施行施設の約５割は、緊急冠動脈バイパス手術体制を整えていないが、心臓血管外科併設の有無で、PCI 施行後の予後に差は認められない。
　これらを踏まえ、厚労省は「専門的医療を包括的に行う施設」として、「PCI、急性循環不全に対する内科的治療等に加え、外科的治療等も行う施設」、外科的治療等は求めない「専門的医療を行う施設」を明確化することを提案。医療資源が乏しい地域では、「専門的医療を包括的に行う施設」と連携し、平均的な救急搬送圏外で対応するネットワーク体制の構築を提案した。
　これらの連携体制のイメージに多くの委員が賛同した。ただそのような施設を評価する指標については、様々な意見があった。美原委員は、都道府県が医療計画で、地域の目標として設定する「手術件数」や「在宅復帰の患者の割合」などの指標を、施設の指標に適用する場合の難しさを指摘。「慎重な検討が必要である」と強調した。