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[ 2004年5月15日の「全日病ニュース」から ]
※『全日病ニュース』は全日本病院協会が毎月1日と15日に発行する機関紙で す。
記事No. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 
■ 慢性期分科会
慢性期に患者分類。次期改定で包括評価を導入
医療・ケア各指標で9区分。出来高に透析・リハ・感染症対策等
 2006年の診療報酬改定に導入が見込まれる慢性期入院医療包括評価に用いる患者分類の考え方が示された。5月11日に開かれた診療報酬調査専門組織・慢性期入院医療の包括評価調査分科会に、事務局(厚労省保険局医療課)がたたき台としてイメージを提示したもの。
 患者分類は、患者に提供される資源を医療とケアの2軸に分け、それぞれを医療必要度と手間のかかり具合に応じて段階化し、その組み合わせから導かれる。たたき台は、医療とケアの各指標組み合わせから9分類を例示した。わが国独自のものとして、長期療養に関する初のケースミックス分類となる。
 分科会はたたき台を基本的に了承。今後、集計中の患者特性およびタイムスタディ各調査結果からデータの裏づけを得て精緻化を進め、6月末をめどに分類案を完成させることを確認した。7月には中医協・診療報酬基本問題小委に報告する。
 事務局は、秋口にかけて医療現場で妥当性を検証した後に補正を加え、年明けの点数づけ(改定作業)に間に合わせる考えだ。併せて、出来高払いの範囲についても検討を進める。担当官は、リハ、透析、感染症対策などを例示した。
 長期療養の包括評価については、介護報酬との関係やRUG評価などをめぐって各方面の意見調整が難航していたが、ようやく、慢性期入院診療報酬体系の改革に向けた具体的な議論が開始されることになる。
■ 慢性期分科会
包括評価で影響評価調査。改定に反映
“患者規制”の検証を提起。患者の流れと病床の再編を指向
 5月11日の慢性期入院医療の包括評価調査分科会に示された慢性期入院医療包括評価に用いる患者分類は一律な包括点数によって医療必要度の高い患者の受け入れが難しかった医療保険療養病床に、一般病床からの患者還流と在院患者の更新とをもたらす可能性がある。
患者分類にもとづく包括評価によって、人員配置、医療費原価、診療報酬収入の把握が可能となり、病床転換を含む病棟政策が明確となる。それによって療養病床の再編が促進される。患者分類は同時に、療養病床における質の追求を担保し、生き残るべき病院の戦略を明確とさせる。
 介護保険との機能分担が制度と報酬の面から本格的に推進されようとする中、医療療養病床のあり方に、ひとつの展望が生れようとしている。
 慢性期入院医療へのケースミックス導入は一般病床、医療療養病床、介護保険療養病床それぞれの機能明確化につながるもので、病床の機能分担議論は、残る亜急性病床の位置づけを得ることによって、ようやくスタートラインに立つことができる。
 こうした動きを促すために、慢性期分科会の猪口委員(当協会常任理事)は、慢性期調査データから、現行診療報酬下の各種患者規制を洗い出し、療養病床で対応可能な患者の分布を明確化させる考えだ。

 慢性期調査は、諸般の事情から、この2月実施と立ち遅れた上、調査項目が多岐にわたるために集計・分析に大幅な時間がかかることが懸念されていた。さらに、患者分類を導くデータ解析の方法について分科会として意見集約が遅れ、調査結果の粗集計が示された3月31日の時点で方向性が打ち出せずにいた。
 次期改定に間に合わせるためには、日程上、5月初めにコンセンサスを得ることが必至とみられていたが、事務局が関係方面の意見調整に努めた結果、今回の枠組みで合意を得たもの。
 患者分類のフレームは、患者毎に提供されるケアはADLと問題行動(認知症)の程度によって段階を分け、医療については病名、病態、処置などの提供実態から区分する。
 現場の負担を考慮して、できるだけ簡便なものを目指した結果、「ケア区分」と「医療区分」からなるマトリックス上に、各軸とも3段階からなるボックス(9区分)がイメージされた。
 たたき台は、医療区分のイメージとして、「区分3」に「頻回の喀痰吸引、レスピレーター装着等」という状態像を、「区分2」には「褥そう3度、糖尿病(毎日注射)」を割り付けた。
 ケア区分のイメージとしては、「区分3」に「食事、排泄共に介助の場合」を、「区分2」には「どちらか一方について介助」を根拠例としてあげた。
 たたき台は、包括評価から外れる出来高払いとして「リハ、透析等」を例示するにとどまっているが、担当官は現行の出来高範囲を踏まえた上で、一般病棟への転棟を回避するための「感染症対策」を考慮する必要があることにも言及、質の視点を重視する意向を明らかにした。
 分科会は今後、区分設定、加算方式、出来高範囲などについて検討を加えるが、たたき台の枠組みは概ね確定したと言える。

慢性期包括評価患者分類のイメージ(厚労省提示資料から)

 医療提供実態から見た医療区分およびADL自立度と問題行動から見たケア区分からなるマトリックスとする。
1.医療区分について:処置・病態・病名等による加算について医療必要度として3段階の区分を設ける

*出来高で算定すべきもの(例:リハ、透析等)については出来高とする。
2.ケア区分について:ADL自立度及び問題行動を反映させた3段階の区分
*認知症については問題行動の中で反映させる。

(患者分類のイメージ)

医療区分のイメージ:
頻回の喀疾吸引、レスピレーター装着等 → 区分3
褥そう3度、糖尿病(毎日注射)        → 区分2
ケア区分のイメージ:
食事、排泄共に介助の場合         → 区分3
どちらか一方について介助          → 区分2


  分科会の猪口雄二委員(当協会常任理事)は、同日の分科会で、データ解析において、一般病棟老人90日超除外規定、180日超除外規定、特殊疾患療養病棟に関連した規定の検証を試みることを提起、事務局の了承を得た。
 猪口常任理事の提案は、現行診療報酬に潜む“根拠のない”規制を見直すことによって、患者が、必要な医療を受けられる病床に移行する環境を確保する意図がある。その結果、医療療養病床のあるべき機能が明確になり、それに沿って病床を再編成することで介護保険との不整合な関係が解消される可能性が生じる。
 猪口提案は、他面で、療養病床の給付から外される可能性がある食事療養の必要性を、療養病床の医療機能の中に根拠づけることにもつながる。医療と介護の分担をめぐる議論に欠けていたエビデンスを確保する重要な提起である。
 また、他委員からは、アウトカム評価につながるクリニカルインジケーターの抽出を求める意見、さらには完成した患者分類を研究者の研究に資するべきという提案も出された。
 同日の分科会で、事務局は、患者分類を前提とした2006年度影響評価調査と、そのための今年度プレ調査の方針を明らかにした。
DPCと同様、影響調査結果にもとづいて診療報酬を見直す体制が構築されることになる。

5月11日に開かれた慢性期入院医療の包括評価調査分科会
▲5月11日に開かれた慢性期入院医療の包括評価調査分科会

ケースミックス分類は医療療養病床の機能明確化に不可欠
一般病床の療養病床該当患者分布も把握、流れを再構
猪口雄二慢性期分科会委員(当協会常任理事)
 全日病や日本療養病床協会の会員病院に協力していただいた慢性期調査のデータにもとづいて、ケースミックス分類を作ることになった。
 慢性期分科会に示された患者分類案は、医療とケアそれぞれに医療資源の投入量を3段階に分け、両者を組み合わせた9タイプが想定されている。これに、透析などの出来高払いが加わる。
 ケアは、ADLと問題行動にもとづいて手間のかかり具合を評価する予定である。データを見る限り、ADLのスコアと要介護認定はパラレルであることが分かる。
 今後、点数設定においては、区分ごとに人員配置を加味した評価がなされるべきだろう。
 現行の診療報酬はフラットなものにいくつかの加算があるというシンプルなものだ。これでは、長期にわたり医療を必要とする患者は医療療養病床として受け入れにくい。その矛盾を放置して、医療療養病床は医療機能が低いという批判が横行している。
 しかし、介護病床では対応できない慢性期の患者は確実にいる。また、一般病床にも療養病床に移行できず、除外規定で長期入院している患者も多数存在する。そういう患者のためにも、今回のようなケースミックス分類は絶対に必要であり、また、それに応じた人員配置を考えなければ、質と安全の面でも向上しない。
 データの解析において、一般病棟老人90日超除外規定、180日超除外規定、特殊疾患入院医療管理料や特殊疾患療養病棟入院料(1・2)各患者規定に該当する患者の分布状況や医療提供実態などを明らかにしたい。
 その結果は、現行診療報酬に内在する患者規制が妥当なものであるか、適正に機能しているかを教えてくれるはずだ。そして、どこに、どういう疾病や状態の患者が偏在し、それを、ふさわしい病床に移行させるためにはどうすればよいかが明らかになるだろう。おそらく、前出の患者群は、今回の患者分類では医療区分の「2」か「3」辺りに該当するのではないだろうか。それが明らかとなれば、長期入院の患者像が浮かび上がり、例えば、一般病床から療養病床への患者の流れが良くなり、病床・病棟の機能分化が推進される。
 これまでは、データやエビデンスが無い中で、機能分担が漠然と論じられてきた。その結果打ち出される政策は、現実の医療現場の感覚とは乖離するものが多かった。慢性期患者を医療区分とケア区分にもとづいて、それにふさわしい機能を持つ病床に誘導することは、急性期と慢性期、さらに慢性期と介護施設の機能分化を促進することになる。
 今回の慢性期包括評価分科会から、今後の規範となるようなケースミックス分類が生み出されることを願ってやまない。

この記事に関しては、慢性期調査の粗集計を報告した2005年4月15日号No.6の記事を併せてご参照ください。
(2005年5月15日号)

【用語の説明】
●患者分類
  患者と医療提供の関係を、何らかの指標にもとづく患者特性の同質性と投入される医療資源の同等性から分析する方法をケースミックス(case mix)といい、ケースミックスにもとづいて疾患あるいは状態像の違いで患者をグルーピングしたものを患者分類といいます。次項を参照。

●ケースミックス分類
  2003年4月1日号の記事No.4の「用語の説明:ケースミックス分類を用いた患者分類」を参照
【参考】
 平成14年8月1日号の記事No.1の「用語の説明:ケースミックスの考え方」
 平成14年11月1日号の記事No.2の「用語の説明:疾患、重症度、医療必要度、要看護度、状態別にもとづいた人員配置や点数評価」
 2003年9月1日号の記事No.1の「用語の説明:ケースミックス調査」
 2005年2月15日号の記事No.11の「用語の説明:ケースミックス」


●RUG
 2003年6月15日号の記事No.5の「用語の説明:RUG−III」を参照

●一律な包括点数によって医療必要度の高い患者の受け入れが難しかった医療保険療養病床
 医療保険が適用される療養病棟の入院基本料は、一部の処置、検査、投薬、注射、画像診断、リハビリテーション(集団療法)などが包括された1日あたり定額制となる配点が設けられています。看護補助の配置によって2つの点数に分かれていますが、入院期間による点数の増減はなく、加算・減算を含め、入院患者の特性に関係なく、どの病棟も一律の点数を算定する仕組みとなっています。
 こうしたフラットで一律の点数設定には、病院からみると、手間のかかる患者を受け入れるというインセンティブがはたらかないため、医療必要度の高い患者を避ける傾向を強めるという一面があったことは否めません。療養病棟の入院基本料について詳しくは、2003年10月15日号の記事No.2の「用語の説明:療養病棟入院基本料」を参照。
【参考】
  2003年8月15日号No.3の「用語の説明:“患者たらい回し”」および同「用語の説明:前改定でフラットにした」

一般病棟老人90日超除外規定
 平成13年6月15日号の記事No.3の「用語の説明:3ヶ月超患者の転院現象」を参照

180日超除外規定
 2003年8月15日号の記事No.5の「用語の説明:180日超の除外規定」を参照を参照

アウトカム評価
 2004年2月15日号の記事No.3の「用語の説明:医療の質をアウトカムで評価する」を参照
【参考】
  平成14年7月15日号の記事No.6の「用語の説明:アウトカム分析と評価」

クリニカルインジケーター
  2004年2月15日号の記事No.3の「用語の説明:アウトカム評価のための指標」を参照

●DPC
 「DPC」とは、正確には、2003年度から特定機能病院の急性期入院医療に導入された包括払い方式(DPC包括評価)に用いられている診断群分類をいいます。しかし、多くの場合に、その包括払い方式を指した略称として用いられています。本記事においても基本的には、その包括払い方式を意味しています。
 DPC包括評価について詳しくは2003年5月1日号の記事No.1の「用語の説明:特定機能病院へのDPC(包括評価のための診断群分類)導入」を参照。
 DPC(診断群分類)そのものについては2003年5月1日号の記事No.3の「用語の説明:DPC」を参照。

●現行の診療報酬はフラットなものにいくつかの加算があるというシンプルなものだ。これでは、長期にわたり医療を必要とする患者は医療療養病床として受け入れにくい。その矛盾を放置して、医療療養病床は医療機能が低いという批判が横行している。
  前出「一律な包括点数によって医療必要度の高い患者の受け入れが難しかった医療保険療養病床」を参照

●一般病床にも療養病床に移行できず、除外規定で長期入院している患者も多数存在する。
  診療報酬調査専門組織の慢性期分科会が2005年1〜2月に実施した慢性期に関する患者特性調査結果によると、診療報酬の上で一般病棟II群3を算定している病棟に入院している患者の約50%が、調査時点の在院日数60日以上を越えており、180日を越えている患者が27%もいます。
【参考】
  2003年8月15日号の記事No.5の「用語の説明:180日超の除外規定」

●特殊疾患入院医療管理料
  特定入院料の1つ。脊髄損傷の重度障害者、重度の意識障害者、筋ジストロフィー患者、神経難病患者等、長期にわたり療養の必要な患者を8割以上入院させる病室に入院する患者について算定される診療報酬点数(1日あたり1,980点=04年改定現在)。一部の加算を除くほとんどの入院費用が包括されています。

●特殊疾患療養病棟入院料(1・2)
 
2003年12月15日号の記事No.4の「用語の説明:特殊疾患療養病棟」を参照

[ 2004年5月15日「全日病ニュース」から ]記事No. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 
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