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全日本病院学会

全国から延3,600人。全日病学会として提言を発表

全国から延3,600人。全日病学会として提言を発表

【第51回 全日病学会 鹿児島大会】
プログラム、動員、運営すべてで成功。鹿児島県支部の底力を発揮

  第51回全日本病院学会鹿児島大会(上村俊朗学会長)が11月21日、22日に鹿児島市で開催された。全国から延3,600人が集まり、延87会場で繰り広げられたプログラムを介して、医療崩壊阻止と地域医療の再生について論じ、情報を発信した。
 第51回全日病学会を担当した鹿児島県支部(上村俊朗支部長)は、長く続く医療費抑制策に呻吟する地域病院の声を結集した提言をまとめ、閉会式で「安心安全な地域医療の維持に資する恒久的安定財源の確保を」と訴えた(別掲)。
 鹿児島県支部が初めて担当した第51回全日病学会は、鉾之原大助実行委員長以下薩摩藩に似たエネルギッシュな構成と篤姫を思わせる細やかな心配りの運営によって大盛況に終わり、第52回学会を担当する兵庫県支部(西昂支部長)へ学会旗を引き継いだ。

 メインテーマに「地域医療維新」、サブテーマに「崩壊から新生へ 薩摩からの提言」を掲げた鹿児島学会は、演題登録が334題、参加者実数が2,000名と、いずれも学会史上最高を記録する、かつてない盛り上がりをみせた。開会式には伊藤祐一郎鹿児島県知事も列席、祝辞を述べた。
 シンポジウム「医療崩壊」では、医療費抑制に抵抗してきた尾辻秀久参議院議員が、厚生労働大臣時代に小泉内閣の経済財政諮問会議とわたりあった体験を披露、「2,200億円を5年間続け総額1兆1,000億円を抑制した。その70%が診療報酬抑制によるものである」ことを明らかにした。
 シンポジウム「医療崩壊」には、小泉政権時代に主計官を努め、2,200億円抑制を実践してきた財務省の向井治紀理財局次長も登壇。「当該年度にそれだけ抑えた実績を踏まえて翌年度分の抑制額が課される。したがって、実際は2,200億円以上抑制するというのが当初の考えであった」と、2,200億円抑制の構想をあらためて明らかにした。
 こうして、社会保障費が国家財政のプライマリーバランスを達成するターゲットとされ、さらには医療が草刈場とされた結果、今日の地域医療荒廃が生じたわけだが、病院経営の危機を民間病院は座視しているわけにはいかない。
 シンポジウム「医療従事者不足」で発表した全日病猪口副会長は、地域医療を支える民間病院の1つの行き方として、地域一般病棟を今日の情勢に適合させた「地域連携病院」という類型を提起、私案として披露した。
 また、チーム医療の進化による医療の質向上と効率化を追求するとともに病院勤務医の負担軽減を促す視点から、病院のあり方委員会(徳田禎久委員長)は「病院における各職種の業務範囲のあり方と役割分担について」という委員会企画を開催、会員病院を対象に実施した調査結果を発表した。
 病院職員が等しく参加することが特色の全日病学会はコメディカルスタッフが主役の一般演題が売り。334題にのぼった演題はどこも若い職員でにぎわった。中でも「リハビリ」「病院管理・事務管理」「安全確保」「感染防止」等のブースは大勢の病院スタッフで埋まった。
 こうした意気軒昂ぶりにもかかわわらず、民間病院を取り囲む情勢は予断を許さない。多忙な中駆けつけた厚労省保険局の佐藤敏信医療課長は、2010年度診療報酬改定を迎える現下の情勢を詳しく語るとともに、政権与党となった民主党の改定をめぐる発言が後退している事実を紹介。いたずらな期待を戒めるかのように、診療報酬改定に課せられた課題を淡々と語った。

■第51回全日本病院学会の提言

地域医療維新-崩壊から新生へ 薩摩からの提言

  地域医療維新-崩壊から新生へ 薩摩からの提言わが国の地域医療は、政府の度重なる医療費抑制策と医師不足等により崩壊への一途を辿り、格差社会と相俟って今や危機的状況に陥っている。すべての国民が安心して等しく医療を受けられる社会保障制度の構築・充実をめざし、われわれは第51回全日本病院学会鹿児島大会の総意として次の提言を行う。

 国民の健康に良質で安心安全な地域医療の維持に資する恒久的安定財源の確保を強く提言する。
一、国民皆保険制度の堅持
一、医療・介護政策決定プロセスの公正性と透明性確立
一、医師不足問題の解消
一、医療・介護従事者の充実
一、医療・介護の質の向上
一、医療・介護難民の救済
一、医療費増額に対する恒久的安定財源確保

            2009年11月22日
                第51回全日本病院学会 鹿児島大会

 

第51回全日病学会鹿児島大会から

 ●公私格差
 「公私格差については言いたいことがいっぱいある」と、西澤寛俊会長は、課税の不公平を取り上げた。「同じ医療をしているのであれば同一の負担と扱いでなければならない。事業税にしても固定資産税にしても、民間には課して、なぜ公には課税されないのか。
 民間と違う医療をしているというのであれば、その証拠を示してほしい。救急が赤字だと言うのであれば、民間の救急も非課税の扱いがなされてしかるべきだ。ともに病院としてe q u a lfootingであるべきではないか」(シンポジウムⅠ. 医療崩壊)

 ●私案「地域連携病院」
 「地域連携病院」は現在も全日病や病院団体が提言している地域一般病棟と同様、主に亜急性期医療を担う病院類型であるが、猪口雄二副会長は「postacuteではなくsub acute の機能を担うものとして考えている。機能分化にもとづく地域連携がより重視される今日の情勢に適合した類型である」と説明する。
 その主たる機能は、入院医療や救急における“ジェネラル”な医療を柱とし、急性期病院や救命救急センター、ERとの連携を確保し、高度な医療を必要とする患者の紹介と手術後患者などの逆紹介をベースとする点にある。
 地域完結型の病院として、MSWの配置を重視するとともに地域連携パスの届出や医療計画における公表を要件とみなすことができる。(シンポジウムⅡ.医療従事者不足)

 ●病院におけるワークライフバランスの事例
 短時間正職員制度など病院におけるワークライフバランスの実態について、会員病院の調査結果から事例を報告してもらい意見交換。パネリストの1人、鳴門山上病院の賀勢泰子管理部長は「育児休業取得率向上に取り組んだ。
 職員のWLBを考慮した様々な取り組みを行なった結果、育児休業取得率は、2006年75%、2007年82%、2008年には100%を達成。一方、看護師の離職率は2004年の10.3%が2008年には5.4%と半減した。育児休業後の“復帰しやすい環境づくり”にも取り組みました」と報告した。(医療従事者委員会企画「職員に選ばれる病院づくり-WLB(ワークライフバランス)」)

 ●特定保健指導の実績
 市民の森病院総合健診センターの飯弘幸子保健師が「88名に6ヶ月の指導を行なった結果」を報告。「目標達成が23%、改善が62%、体重・腹回りの増加が13%、脱落が10%という結果だったが、トータルで体重2.21g、2.3cm、BMI0.8の改善がみられた。初回面談では生活改善の意欲を見せていても途中脱落する方がいる一方、初回面談ではやっと関心期に入ったと思われる受診者が途中からさらにやる気を出し、目標をクリアした後もさらに改善を目指して行く姿をみると、支援の奥深さと楽しさを感じる。さらに工夫をこらしていきたい」と語った。(人間ドック委員会企画第2部「特定保健指導のあり方について」)


▲シンポジウム「医療従事者不足」


▲シンポジウム「医療崩壊」


▲上村俊朗学会長(左)と西澤全日病会長