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ホーム全日病ニュース第802回/2013年6月1日号研修医の募集定員激変緩和措置...

研修医の募集定員 激変緩和措置の2013年度末廃止で概ね合意

研修医の募集定員
激変緩和措置の2013年度末廃止で概ね合意

【医師臨床研修部会】
廃止の影響を懸念する意見に対して、都市部集中のより強い抑止を求める意見も

 2015年度からの医師臨床研修制度見直しについて議論している医道審議会の医師臨床研修部会は、5月23日の会合で、①募集定員の設定方法、②地域枠への対応、③臨床研修病院群のあり方について検討、①については前回見直した募集定員の設定方法を継続した上で激変緩和措置は予定どおり13年度末で廃止する、②については現行どおりマッチング枠内で運用していくという方向で概ね意見が一致した。③に関しては議論半ばで終わった。

 

 この日は冒頭にヒアリングが行なわれ、全日本病院協会と日本病院会が陳述した。
 全日病からは指導医講習会のプログラムディレクターを務める星北斗医療制度・税制委員会委員が出席、地方の研修病院として、町立病院や診療所等の協力施設とともに、救急から亜急性期や在宅医療にいたるまでプライマリケアが幅広く身につくプログラムで研修医に高い満足度を与えている自院(星総合病院)臨床研修の状況を紹介した。
 星参考人は、同部会委員に「医師偏在の原因を単に医師臨床研修制度に求める考え方には不満がある。そこで、地方の小さな病院がどのように苦労し、かつ、がんばってプライマリケアが身につく研修を行なっているかを知っていただきたい」と語りかけた。
 そして、「初期研修を終えるとほぼ全員が大学に戻ってしまう。だが、その後に医局からの派遣というかたちで自院に戻ってくる医師も少なくない。各病院とも地域でそれぞれ質の高い研修への努力を重ね、いつか医師が戻ってくることを願っている。これが研修病院の実態である」と研修病院の意気地と誇りに触れて、報告を終えた。
 一方、日病からは福井次矢臨床研修委員会副委員長が出席、現行臨床研修制度に対する見解を、①指定基準の「年間入院患者数が3,000人以上」という項目は撤廃すべきである、②研修プログラムは7診療科の必修に戻すべきである、③修了要件の1つである到達目標を満たしていない研修医がいる可能性がある。したがって、到達目標の達成度について、より厳密な第3者評価を行なうべきである、と説明した。
 福井参考人の説明に、大学病院の委員からは「新医師臨床研修制度と医師不足・偏在との間には明確な関係がある。その事実を無視することができるのか」などの批判が相次いだ。
 この日は、①募集定員の設定方法、②地域枠への対応、③臨床研修病院群のあり方について議論した。
 前回の見直しから、募集定員は、全国の研修医総数を都道府県別人口で按分した数と都道府県別医学部入学定員数で按分した数の多い方に、地理的条件を勘案した数を加えるかたちで各都道府県の上限を設定。各病院は、過去3年の研修医受入実績の最大値に医師派遣等の実績を勘案した上で、都道府県上限との調整を行なった上で設定されている。
 ただし、①各都道府県の上限は前年度実績の90%を下回らないようする、②各病院の定員は前年度内定者数を下回らないようにする、いわゆる激変緩和措置が13年度末までとられている。
 多くの委員は研修医が都市部に偏らないように調整する現行方法を肯定、激変緩和措置についても延長を図る必要はないという認識でほぼ一致した。ただし、桐野部会長(国立病院機構理事長)は「激変緩和措置を廃止すると都市部の研修医はさらに減少をたどる」と展望、「そうした変化は初期よりも後期研修をより重視する動きを加速させる可能性がある」と指摘した。
 桐野部会長の言は、都市部に多い研修病院に対して、地方の大学病院の方に研修医がより集まりかねないことを懸念したものだ。この点は、神野委員(恵寿総合病院理事長・全日病副会長)も「激変緩和措置を廃止するだけでもきわめて大きな変化が生じる」と述べ、その影響を考察する必要を認めた。
 桐野部会長は「急激な変化は地域医療にも大きな影響を及ぼす。段階的に考えざるを得ないのでは」と、激変緩和に向けた次善の策を検討する必要を提起したが、逆に、小川委員(岩手医科大学学長)は「激変緩和措置を廃止するだけでは偏在解消につながらない」と発言、研修医がより地方に集まる策を検討すべきとの認識を示した。
 桐野部会長は、議論を「激変緩和措置廃止の意見が多いので、とりあえずその方向で臨むものとし、廃止による影響を含め、今後、さらに詳しく検討したい」と整理した。
 「基幹型臨床研修病院は、協力型臨床研修病院、臨床研修協力施設(病院又は診療所)又は大学病院と連携して臨床研修を行う(病院群の構成は同一の2次医療圏内又は同一の都道府県内にあることが望ましい)」とされている研修病院の指定基準に関しては、以前から、大学病院の委員は「地域ごとに大学病院を軸とした臨床研修病院群をつくるべきである」と主張、こうした意見に、研修病院の委員は「大学病院を含む病院群を要件にすべきではない」と反対している。
 この日も大学病院の委員はこれまでの主張を繰り返したが、時間不足もあって、議論は次回に持ち越された。
 事務局(厚労省医政局総務課医師臨床研修推進室)は、8~9月にかけて制度見直しの骨格を固め(中間まとめ)、年内には最終報告をまとめる方針だ。しかし、論点は多々にわたり、検討済みのものも議論を深めるまでにはいたっていない。そのため、8月以降は同部会を月2回開催し、議論の時間を確保したいとしている。