全日病ニュース

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亜急性期入院医療管理料と亜急性期の議論が交錯

亜急性期入院医療管理料と亜急性期の議論が交錯

【入院医療の調査・評価分科会】
厚労省は亜急性期全体のあるべき姿を提起。「回復期リハとの統合」には慎重?!

 

 中医協の「入院医療の調査・評価分科会」に事務局(厚労省保険局医療課)は「2012年改定の亜急性期入院医療管理料見直しに関する影響調査」結果を示し、亜急性医療の機能として、①急性期からの受け入れ、②在宅に帰す、③緊急時の受け入れという3点を提起。
 論点に「亜急性期の患者像と機能を明確化し、さらなる評価を充実することをどのように考えるか」ことを、議論課題に、亜急性期入院医療管理料の病棟単位評価への移行、13対1と療養病棟をも視野に収めた再編などをあげた(6月1日号既報。1面記事を参照)。
 議論では、現行の亜急性期入院医療管理料をめぐって疑問が相次ぎ、現行評価の廃止あるいは回復期リハ病棟入院料との統合を求める意見も出た。
 これに対して、委員である神野正博副会長は、事務局が提案した3つの機能案に賛成した上で、「亜急性期は急性期の受け皿として欠かせない。中小病院にも可能な亜急性期の評価が必要」と論じた。統合には慎重な見方を示した。他の委員からも現行評価を擁護する意見が示され、分科会は統合で賛否が分かれた。
 分科会後のブリーフィングで、事務局は「亜急性期機能としてあげた3点は亜急性期入院医療管理料というよりも亜急性期全体に求められる機能である」との認識を披露。統合問題については「議論から出たもの。我々が用意した本来のテーマではない」と述べた。
 しかし、亜急性期医療の中のリハに特化した病棟である回復期リハと亜急性期入院医療管理料の統合問題に終始する向きも多く、7対1等の急性期病棟を亜急性期に移していくという事務局の問題意識からはずれた意見が多くみられた。

■事務局が提示した課題と論点(要旨)

【課題】

・高齢化に伴い、地域の医療を支えるため亜急性期医療の充実が一層重要。

・亜急性期入院医療管理料の患者は、13対1病棟、回復期リハ病棟1より重症度・看護必要度の最高得点が低い。レセプト請求額は13対1よりは高い。

・亜急性期入院医療管理料にも、悪性腫瘍等の特定除外患者の受入、緊急入院の受入が7対1と同程度の病室が一部ある。在宅復帰率が7対1よりも高い病室が多い。

・療養病床にも、特定除外と緊急入院の受入や在宅復帰率が7対1と同程度の病棟がある。

【亜急性期医療に求められる機能(案)】

①急性期からの受け入れ、②在宅・生活復帰支援、③緊急時の受け入れ

【論点】

・地域の医療を支えるため亜急性期医療を充実することをどう考えるか。

・亜急性期医療を病棟単位の評価に移行することをどう考えるか。

・療養病床にも亜急性期機能をもつ病棟があることをどう考えるか。

・亜急性期の患者像と機能を明確化し、評価をさらに充実させることについてどう考えるか。

 

「入院医療等の調査・評価分科会」の主な議論 5月30日

・手のかかる患者はもっぱら亜急性期以外にいる。亜急性期の患者像をはっきりさせる必要がある。亜急性期には急性期後のまだ医療依存度の高い人を入れ、看護必要度B得点の高い患者を次の療養型に移していく形にすべきだ。

・亜急性期というのは、まだ、概念的に定まっていないようだ。この病床が増えないのは分かりにくさもあるからではないか。

・急性期から来てリハというのは分かりやすいが、亜急性期の役割は分かりにくい。定義をはっきりさせたほうがいい。

・今後も亜急性期入院医療管理料を評価していくのであれば、急性期からの受け入れや在宅復帰率などに深掘りした検討が加えられてしかるべきではないか。

・亜急性期の機能を明確にして要件をもう一回決め直すということではないか。その際、亜急性期機能を有している療養病棟を一緒に考えたほうがよい。亜急性期病棟ができて10年近くたつのに1万床しかない。病棟として残すべきか否かの回答はもう出ている。病棟として残さないのであれば、療養に行っていただく病床があるのではないか。病態像を明らかにしてスクリーニングをかける仕組みをつくればいい。

・これが増えないのはニーズがないからだろう。こういう病棟が果たして必要なのか。高度急性期から早く受け入れてリハビリ等をして在宅へつなげるポストアキュートは要るが、今の亜急性期をそのまま拡大しても何の意味もない。

・私は反対に、この病床をこれからの医療のベッドシフトへの誘導装置にどうやって使っていくかを考えると、非常に魅力的な装置ではないかと思う。

・亜急性期の定義をきちんとした上で、一般病床の杯型の図がピラミッド型に患者が流れていくような病院の類型は必要。私は、その途中の亜急性期は必要だと思う。

神野委員 今の形の亜急性がよいか悪いかという話は中医協で議論するテーマ。ただ、流れとして、一般急性の後に何らかの亜急性機能は必要である。色々なデータを踏まえ、亜急性期機能はどうあるべきか、そのためにどういう患者像であるべきかというエビデンスをさらに収集していくべき。今回示された3つの機能に私は賛成する。

武藤分科会長 私もそう思う。ぜひとも亜急性期の3つの機能を議論していただきたい。

・療養病棟にも亜急性期機能をもつ病棟があるというエビデンスとして特定除外患者の受け入れだけを示しているが、果たしてそのデータのみで評価できるのか疑問を感じる。

・ここに示された機能は亜急性期病床創設時からのものなのか、最近考えたものなのか。

一戸課長補佐 亜急性期入院医療管理料の現行要件に入っているのは在宅復帰だけだ。急性期からの受け入れは亜急性期という名前と算定上限日数で示されているが、救急の機能等は要件に盛り込まれてない。

神野 前回の分科会で7対1の在宅復帰率要件に疑問を述べたが、高度急性期ですべてを完結させるのではなく、どんどん亜急性に回すべきである。高度急性の病床をある程度亜急性に回していく形をとるために、急性期からの受け入れ機能の間口を少し広げるべきかどうか、どういう患者像かということを、もっと議論していくべきかと考える。

・回復期リハと亜急性期に余り違いがない。高齢化が進むと、病気が治っても機能の回復が必要になるで、回復期できちんと身体状況を回復させて帰すというのが亜急性期の役割。亜急性期と回復期リハを分けずに、急性期の術後、その他急性の状態が過ぎたら回復を進めるといった役割を回復期リハも受け持っていく、そして、そういう機能回復が望めない、もっと長くなる人はそのまま療養型に行くかたちかと考える。

・亜急性期が普及しないので急性期に滞留する現象が起きている。これを整備しつつ、特定除外の議論も進めていく必要があるのではないか。ただし、激変はなかなか難しいことで、そこのところはお願いしたい。

・私もそう思う。7対1とかの誘導が強過ぎたことも普及しなかった一因。それでいびつな構造になった。今は急性期として対応している病態にもう少し見通しの立つ医療をつくり上げていく必要がある。そういう意味で、今までは非常に間口が狭かったのではないか。

・亜急性期と回復期リハではハードが違う、医師・看護師の層も違う。これを集約したときに医師・看護師が踏みとどまってくれるか、雇用問題も意識しておく必要がある。

・亜急性期と回復期リハを分けておく必要があるのか。一体改革のイメージ図では「亜急性期等」とされている。

神野 回復期リハ病棟はリハビリを主とする病棟だが、亜急性期入院医療管理料は病気を治すところで、それにリハビリがついている。配置基準等は明らかに違い、亜急性期には病棟配置のリハスタッフが要らない。そこのところをどう分けていくか。あるいは、同じリハでも部位の制限など中身が違うリハが要求されている。そうした点を比較してみると違いがよく分かるのではないか。ここを統一することにやぶさかではないが、そのときにどういう分類にするか、あるいはどうやって広げるかとか、もう一回中身を見直す作業が必要になってくるかと思う。

・亜急性の患者は亜急性期だから入っているのか。実態としてどうなのか。今後を考えると回復期の中に入れてもいいのではないか。病室単位の評価を残す必要はない。その際、緊急入院の概念設定をきちんとしておかないとならない。

課長補佐 緊急の受け入れ機能は今回の調査結果をもとに資料をつくる。亜急性期として緊急時の受け入れ機能は重要。その概念をどう決めるかは中医協の事項であるが、分科会でどういう切り口があるかと議論をしていただくことになるだろう。

神野 病棟単位をいきなり持ってくるのはちょっと乱暴ではないか。病棟単位となると、亜急性期は中小規模の病院にとって難しくなる。

・今日のデータを見ても亜急性期の病像が浮んでこない。データをもっと出してほしい。

・病室単位で算定できる特定入院料のうち、亜急性期入院医療管理料は病態や患者特性が幅広いと思う。加えて、回復期リハは13対1で病棟単位だ。これらを勘案すると病棟単位に転換するのが適切ではないか。

・7対1などの高度急性期の病床数が多いということが看護師の地域偏在にもつながっていると思う。高度急性期と亜急性期をもう少し整理していく必要がある。

 

■分科会後の取材陣との問答から 保険局医療課

― テーマは、亜急性期の患者はどういうものかと亜急性期の機能はどうあるべきかの2点である。亜急性期の位置づけをはっきりさせるということだ。
 亜急性期と回復期リハの統合は議論の中で出てきたもの。亜急性期の2と回復期リハの1は同じ点数だが、人員配置は異なるうえ、片方にはリハ基準や訓練室などの要件がある。そこを完全に統合できるかどうか、議論の中で考えなければならない。もちろん、統合するかどうかは中医協が決める問題。

●統合するとしたら要件的にどうか。
― それは結構ハードルが高い。回復期リハはリハの専門職が必要であるし、患者像が明確に規定されているという点が大きい。議論の結果、亜急性期でやっているリハは回復期リハでやればいいということになればそういうとりまとめになるだろうが、それは、これからの議論次第。今回、我々は、そこは議論の論点にしていないつもりだ。
 あくまでも亜急性期とは何かというのが今回の論点だ。急性期からの受け入れ、在宅に帰す、緊急時の受け入れという3つは、亜急性期の機能という点で誰も異論がないところではないか。医政局の検討会でも、恐らく同様の議論をしているのではないか。

●「亜急性期医療に求められる機能」とは、亜急性期入院医療管理料の病床に求められる機能と理解していいか。
― 亜急性期入院医療管理料に関する調査結果は「亜急性期の特徴は余りない」というものだ。したがって、亜急性期入院医療管理料というよりも、亜急性期全体に求められる機能はこういうものではないかということで示させていただいた。

●患者像を明らかにするというが、今回のデータから見る限りクリアな患者像はない。それをあえて患者像を明らかにするという意味は何か。
― それは多分、亜急性期だけの議論ですむ話ではなく、特定除外制度の見直しとかも関係する。特定除外を見直すと当然受け皿が必要という議論になる。

●病棟単位も考えるというのは、今の病床規制は廃止するということか。
― それは機能とのバランスによる。

●3つの機能のうち、高度急性からの受入機能をもっとも重要視するのか。
― そのテーマは地域の中でやっていく上での中核的な話になっていく。亜急性期を担う医療機関にとって、そこは地域ごとに違ってくるのではないか。

●それは地域密着病床という概念とリンクしていくということか。
― 地域密着病床の話は別途議論することになる。今回調査した項目は最後までやる。全体の絵はひととおり終わったあとで議論することになる。

●回復期リハは別途議論するのか。
― 回復期リハは附帯意見に書いてない。