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ホーム全日病ニュース第805回/2013年7月15日号看護師を除くコメディカル業務範囲...

看護師を除くコメディカル業務範囲の検討に着手


看護師を除くコメディカル業務範囲の検討に着手

【チーム医療推進方策検討WG】
医療各職の団体が要望を多数提出。業務拡大とともに資質向上の仕組みを希望

 チーム医療推進会議に付設されている「チーム医療推進方策検討WG」が6月26日に10ヵ月半ぶりに開かれ、看護師を除くコメディカルスタッフの業務範囲の議論を開始した。
 冒頭、事務局(厚労省医政局医事課)は、今秋の医療法等改正で同時に法改正等が行なわれる診療放射線技師と歯科衛生士の業務に関する見直し内容について紹介。
 診療放射線技師に関しては、「医療現場で抜針等、現行の診療放射線技師の業務範囲に含まれていない行為が相当程度実施されている」とした上で、「多様な医療スタッフが互いに連携・補完し合い、それぞれの専門性を最大限に発揮するチーム医療を推進するために、診療放射線技師の業務範囲を拡大する必要がある」と論じ、①造影剤の血管内投与、②下部消化管検査におけるカテーテルの挿入と造影剤および空気の注入の2行為を、診療放射線技師の業務範囲に追加する改正を行なうと説明した。
 歯科衛生士に関しては、予防処置を実施する場合に緊密な連携が確保されていれば歯科医師は必ずしも立ち会うことを要さないというもの。
 いずれも、コメディカルスタッフの業務範囲にかかわる解釈の明確化あるいは解釈の変更である。この日の会合は、まさに、そうした議論に着手するもので、議論の素材として日本薬剤師会とチーム医療推進協議会を招いてヒアリングを行なった。
 日本薬剤師会の要望事項は、在宅訪問時の薬剤師業務として、(1)医師の処方せんにもとづいて内服薬等の計数調剤を行なう、(2)調剤薬交付時に、処方医への疑義照会を行った上で薬剤の計数変更を行なう、(3)患者等から求めがあった場合に、処方医の同意を得た上で調剤剤の使用に関する実技指導を行なう、などの行為を位置づけてほしいというもの。
 一方、16の医療関係職で構成されるチーム医療推進協議会は、法改正を伴うものと伴わないものとに分け、つごう14団体からの要望事項を列挙して提示した。
 総括的な要望事項としては、(1)卒前教育におけるチーム医療教育の推進、(2)専門職の質向上のための臨床研修システムの確立、(3)免許更新制度の推進、(4)包括的指示の積極的な運用と活用範囲の拡大、(5)全職種の身分法への「連携」項目の追加、をあげた。
 個別項目に、まず、法律改正等を伴う要望事項として、①「卒後臨床研修制度の確立」(日本診療放射線技師会)、②放射線治療における肛門からのカテーテル挿入、③包括的指示にもとづいた微生物学的検査等検体採取の実施、④包括的指示に基づいた臨床心理士による心理相談(各種心理検査など)の実施、⑤臨床心理職の国家資格化の早期実現などが列挙された。
 法律改正を伴わない要望事項としては、⑥救命救急センターへの社会福祉士の配置、⑦包括的指示に基づく病棟における管理栄養士業務の拡大(緩和ケア領域または摂食機能療法領域)、⑧包括的指示にもとづくチーム医療による訪問リハの提供(作業療法士または理学療法士)、⑨理学療法士の病棟配置、⑩集中治療室への臨床工学技士の配置を初め、多数の項目が並べられている。
 こうした要望には、各職業務とは次元の異なる事項も多く含まれており、中には、免許更新制度の推進、全職種の身分法への「連携」項目の追加(いずれも日本救急救命士協会)と不可解な事項もある。
 また、「包括的指示にもとづく」という表現を多用した項目が多く、構成員からは「包括的指示の乱用はいかがなものか」と揶揄される一幕もあった。
 要望事項には「免許更新制度」という一項があるが、これは、厳格な意味の資格更新ではなく、生涯学習的な研修を重ねる中で、その修了歴を名簿登録に書き込むという発想であるという。
 この「免許更新制度」にしても、「卒後臨床研修制度の確立」にしても、その理由を「若い人達はなかなか勉強しない。制度的な手立てがない中で強制もできない。インセンティブとして何らかの研修制度を創設してほしい」と説明したチーム医療推進協議会のメンバーには、医療系の委員から、「制度や法令の強制力に頼ろうというのは安易ではないか。まずは自律したプロフェッショナル意識が必要では」との批判が投げかけられた。
 とは言え、努力目標である新人看護師研修制度が通知等の行政指導を得て看護師の底上げをもたらしつつあるように、厚労省が関与した仕組みを通して、医療技術やチーム医療など医療の進歩に対応できる人材を輩出していきたいというのが、この日出席した各団体の希望。業務範囲の拡大と医療各職の資質向上は裏表の関係というのが各団体共通の認識であり、そのために何らかの制度的担保を望んでいることが判明したヒアリングであった。