全日病ニュース

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ホーム全日病ニュース第807回/2013年8月15日号「全日病プライマリ・ケア宣言2013」

「在宅医療、在宅介護、認知症へ積極的に取り組む」ことを宣言

細部にわたる論点で様々な意見。議論集約にはなお時間が?

▲「全日病プライマリ・ケア宣言2013」を発表する西澤会長(中央左)と丸山常任理事(同右)

「在宅医療、在宅介護、認知症へ積極的に取り組む」ことを宣言

【「全日病プライマリ・ケア宣言2013」】
全会員に在宅医療・介護への取り組みを提起。全日病として認知症の研修会を展開

 全日病は、高齢化の下で焦眉の課題となっている在宅医療・介護および認知症対策に対する医療提供者としての考え方をまとめ、8月7日、厚労省の記者クラブで「全日病プライマリ・ケア宣言2013」として発表した。その中で、会員病院に在宅医療・介護の推進を提起する一方、全日病として認知症対策に積極的に対応していく決意を表わした。

 

 「宣言」は、プライマリ・ケアの充実、とくに、在宅医療・介護と認知症対策の推進が国民的課題となっている現状を踏まえ、本会として関連事業を展開するとともに、会員病院にも積極的な取り組みを呼びかける旨を簡潔な表現で表わしている。
 今年2月に、設置されたプライマリ・ケア検討プロジェクトで議論を重ねた結果、高齢化にともなって複数の慢性疾患をもつ在宅患者がかつてなく増える時代を迎えているが、これら領域における病院の取り組みは必ずしも十分ではないという点で認識が一致。
 病院団体として施策を提言するだけにとどまらず、会員中心に病院界に取り組みを促すとともに、全日病としても積極的な支援等の活動を展開すべきということでプロジェクトの意見が一致した。
 その考えを鮮明にする方法について、プロジェクト責任者である丸山泉常任理事は全日病の宣言として対外表明する方法を提案、第4回常任理事会(7月20日)の機関決定を経て、発表にいたった。
 第4回常任理事会は、また、プライマリ・ケア検討プロジェクトを常設のプライマリ・ケア検討委員会(丸山泉委員長)とし、高齢社会における医療提供のあり方に関する考察と提言活動を進めることを決めている。
 医療系記者の集まりである厚生日比谷クラブでの発表には西澤会長と丸山常任理事が出席、30分にわたって「宣言」の内容を説明、質問に応じた。
 「宣言」を踏まえた活動について、丸山常任理事は、①「病院職員のための認知症研修会」を9月11日に開催する、②MSWを対象にした研修会など当該領域に取り組む病院に対する支援活動を強めていく、③専門医認定等の第3者機関と連携を図る中で「総合診療専門医」の養成を応援する立場から現場の声を届けていく、④日医を初めとした各団体との連携を図る、などの方針を明らかにした。
 西澤会長は、「この活動は、全日病も地域で実際に実践している病院の立場に立ち、国立長寿医療研究センターや日本プライマリ・ケア連合学会等との連携をとりながら進めてまいりたい。病院団体として宣言したからには重大な覚悟で今後の活動に臨んでいきたい」と、決意のほどを明らかにした。

「全日本病院協会プライマリ・ケア宣言2013」

【全日本病院協会の理念】
 全日本病院協会(全日病)は、関係者との信頼関係に基づいて、病院経営の質の向上に努め、良質、効率的かつ組織的な医療の提供を通して、社会の健康および福祉の増進を図ることを使命とする。

 全日本病院協会は、上記理念に則り、これまで『医療は、患者(国民)と医療人が協力して整備を図るべき公共財であり、国民の健康・生活に直接関係する点で極めて重要である。』との認識のもとで、医療関係者ばかりではなく、患者、家族、地域住民などのすべてのステークホルダーとの協働を図ってきた。
 2013年、われわれは、プライマリ・ケアの重要性を認識し、新たな行動目標として以下を宣言する。
1. 在宅医療・介護対応宣言
 全日本病院協会は、少子・高齢・人口減社会の医療・介護のあり方を直視し、すべての会員施設が地域におけるそれぞれの役割を確認し、診療所をはじめ医療・介護・福祉施設との連携を進め、さらなる在宅医療・介護の充実に協働することを宣言します。
2. 認知症対応宣言
 全日本病院協会は、国民的な課題である「認知症」に、個別的に、かつ包括的に対応ができるよう、さまざまな具体的方策を提言・実行することを宣言します。

 

□丸山常任理事の会見発言(要旨)
 本格的な高齢社会を迎え、疾患構造の変化、医療資源の偏在など、対応すべき様々な課題が生じている。とくに、高齢者に関しては、多疾患の併発や認知症等だけでなく、終末期の問題も喫緊の課題であり、これらにどう対応するかが問われている。そこで我々は、まず、できることから始めようと考え、このプライマリ・ケア宣言で、その方向性を示した。
 この取り組みはおのずと長期的にならざるを得ないが、我々は、その一番に「在宅医療・介護対応」をあげた。在宅医療・介護は会員病院のほとんどがすでに実践している。我々はそれを、病院、診療所、福祉施設等との連携の下でより推し進めていくべきと考える。
 認知症は、MCIを含めると900万弱と推計されるように大きな問題になっているが、例えば、高血圧、褥瘡、嚥下性肺炎と多疾患を併発した認知症患者が増えるなど、現場には混乱も出ている。
 病院の今の体制でしっかり受け止められるのかという点で、危機感をもっている。必要な支援、実態の補足と公表、政府への提言等をしていきたい。