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ホーム全日病ニュース第808回/2013年9月1日号中医協の議論と大筋同じ方向の対応を確認...

中医協の議論と大筋同じ方向の対応を確認。「消費税改定」を実施

中医協の議論と大筋同じ方向の対応を確認。
「消費税改定」を実施

【介護給付費分科会】
消費税の介護報酬補填 高額投資対応は回避。基本単位と一部加算に上乗せ

 8月21日に開かれた社会保障審議会の介護給付費分科会は、消費税率が8%に引き上げられる際の介護報酬における対応案について議論。対応の考え方を概ね了承するとともに、引き上げに際して消費税改定を行なうことを確認した。

 

 消費税率引き上げへの対応について、同分科会は昨年9月の議論で「中医協における議論の動向を踏まえる」という方針を確認。高額投資の消費税負担に関する実態調査を実施する一方、分科会に付設されている介護事業経営調査委員会に検討を付託し、関係団体のヒアリングや実態調査結果の分析等を進めてきた。
 この日は、同委員会が7月19日にまとめた検討結果(別掲)にもとづいて議論を行なった。
 その結果、介護事業経営調査委員会の検討結果を大筋で了承。①高額投資にかかわる特別な対応はしない、②引き上げ幅に応じて基本単位と一部加算の単位数を上乗せ補填する、③上乗せする具体的な単位数は「介護事業経営概況調査」の結果などをもとに年末までに決めるなど、対応の基本的枠組みで合意した。この方針は中医協における消費税対応の考えと概ね一致する。
 また、事務局(厚労省老健局老人保健課)が7月19日の介護事業経営調査委員会に示した、消費税率の引き上げが来年4月に実施される場合は(対応分に限った)介護報酬の一部改定を実施するという方針を了承した。

「5%分は介護報酬に上乗せ済み。だが、内容は不詳」

 消費税が課税されていない介護保険事業収入における控除対象外消費税負担の問題は、介護給付費分科会では、中医協ほど熱い議論となっていない。
 介護保険が創設された2000年時点の消費税は5%。医療保険(診療報酬)における対応にならえば、介護報酬の単価は5%の課税負担への補填を含めて決められたものと思われるが、事務局は5%上乗せ分の詳細をつまびらかにしない。したがって、介護給付費分科会における議論で、保険局医療課が中医協に示したような上乗せの内容やその算定根拠を示すこともしていない。
 この点について、事務局は本紙の質問に、「消費税の導入と5%への引き上げは介護報酬がない時代、つまり、予算で措置されていたときの話だ。当然、消費税の補填分は織り込まれていたと思う」と説明する。しかし、それがどういう内容であるかは「当時の審議会の議論を追っていただくしかない」とつれない。「当時の審議会」とは、医療福祉審議会の介護給付費部会のことである。
 仮に消費税が課税となると上乗せ分の返還という問題に直面する。事務局は「返還を求めることになれば、その時点で過去の経緯から上乗せの内容を把握、返還部分の根拠を明らかにすることになろう。しかし、今は3%引き上げ分への対応が課題。そうした議論をする状況ではない」と釈明する。
 上乗せ分返還がテーマでないことはその通りだが、過去の上乗せについて、検証どころか経緯や詳細も視野にないとする事務局の説明は、いかにも木で鼻をくくったような対応に思える。だが、過去の上乗せをめぐる質問は分科会委員からも聞かれない。
 中医協ほど熱い議論となっていないのは、医療機関に比べると人件費率が高く、物件費が低い上に、零細の事業所が多いなど控除対象外消費税額が相対的には少ないため、病院に比べると経営上深刻な問題として捉えられていないのではないか、との見方がある。
 また、「介護保険3施設の居住費は利用者負担であり、保険給付の対象外であるため、消費税の回収が一定程度できている」ことや「運営母体が社会福祉法人やNPOなど事業税非課税が多い」などを、“課税問題に対する関心が低い”理由にあげる関係者もいる。
 しかし、施設投資が大きく、介護報酬の枠内で医療サービスを提供している介護保険3施設にとって消費税の負担は決して小さくないはず。
 中には、「消費税の負担が大きいのは介護保険3施設。その開設者に消費税対応問題を主導している病院が多いことが、結果的に介護保険事業者の声を弱めているのではないか」と指摘する向きもある。

□消費税率引上げへの対応-介護事業経営調査委員会における議論のまとめ

1. 消費税率8%引上げ時の対応
・介護報酬とは別建ての高額投資への対応については、介護における高額投資の実態、対応に伴うメリット・デメリット、医療保険における議論の動向も踏まえ、実施しない。
・引上げに伴う影響分を補填するため、介護報酬への上乗せ対応を行う。上乗せの方法としては、基本単位数への上乗せを基本としつつ、消費税負担が相当程度見込まれる加算があれば、それらにも上乗せすることを検討する。
・基準費用額、特定入所者介護サービス費(居住費・食費関係)、区分支給限度基準額についても、給付実態等を勘案しながら、引き続き検討する。
2. 消費税率10%引上げ時の対応
・8%引上げ時の対応を踏まえ、医療保険における議論の動向も見ながら、引き続き、対応を検討する。

 

1人訪問看護ステーション特例の10月終了を答申

 同日の介護給付費分科会は、東日本大震災の被災地の一部に訪問看護ステーションの1人開業を認めている特例措置を経過措置を設けた上で終了するという厚生労働大臣の諮問を了承した。
 答申に際して、介護給付費分科会は、特例措置を10月12日まで延長した上で同日をもって終了するとした。ただし、経過措置の期限は決めなかった。
 この日の介護給付費分科会は、また、この9月30日までの適用となっている、「要介護認定等の有効期間を12月間までの範囲内で市町村が定める期間延長可能とする」特例省令の期間を14年3月31日まで延長する方針を決めた。対象地域は、福島県の南相馬市、双葉町、浪江町、飯舘村の4市町村。