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ホーム全日病ニュース第810回/2013年10月1日号在宅医療・介護連携の推進体制を介護保険法で恒久化...

在宅医療・介護連携の推進体制を介護保険法で恒久化

在宅医療・介護連携の推進体制を介護保険法で恒久化

【医療部会】
厚労省 介護保険事業計画に在宅医療・介護連携の事業や目標等を記載

 9月13日の医療部会に、事務局(厚労省医政局指導課)は在宅医療と介護の連携を推進する施策の方針を示し、在宅医療・介護連携の推進体制を介護保険法で恒久制度に位置づけた上で、在宅医療連携拠点事業を新たに制度化する地域包括推進事業に組み込むとともに介護保険事業計画に在宅医療・介護連携の事業や目標等を記載するなど、市町村主体で連携推進に取り組むための介護保険法改正の内容を紹介した(1面に関連記事)。
 併せて、医療計画で市町村の役割を明確化するとともに医療計画と地域医療ビジョンに在宅医療の必要量等の推計や推進体制を書き込むなど、市町村の介護保険事業計画との連動性を担保するための医療法関連の措置課題を提起、議論の俎上にのぼらせた。
 在宅医療連携拠点を介護保険法に位置づけるという方針に、西澤委員(全日病会長)は疑問を示し、「そのことの是非を、一度医療部会で議論すべきではないか」と提起した。

 

厚労省 医療計画・地域医療ビジョンに在宅医療の必要量等を記載

 医療部会で、事務局は、在宅医療と介護の連携の推進に取り組む厚労省の方針として、社保審の介護保険部会で検討されている介護保険法の改正事項について報告した。
 その主な内容は次のとおり(9月1日号で既報)。
 (1)介護保険法で在宅医療・介護の連携推進体制(連携拠点の機能等)を恒久的制度とし、全国的に取り組む。
 (2)在宅医療・介護連携拠点の機能を明確にし、介護保険事業(支援)計画に記載する。
 (3)在宅医療連携拠点事業を含む在宅医療・介護の連携推進事業を介護保険法の地域支援事業の包括的支援事業に位置づけ、市町村が主体となって取り組む。
 (4)現行制度では包括的支援事業は全事業を地域包括支援センターに一括委託すると規定されているが、在宅医療・介護の連携推進事業は、他の事業とは別に、実施可能な事業体(在宅医療連携拠点)に委託する仕組みを導入する。
 (5)複数の市町村による共同事業を認める等の措置を図る。
 (6)これまで在宅医療の提供体制等への関与が少なかった市町村の取組を推進するために、都道府県が積極的に支援するようにする。
 以上の取り組みを要約すると、在宅医療・介護の連携は(医療保険ではなく)介護保険の絶対的命題とし、市町村を当時者とし、連携事業の委託先を(地域包括支援センターから)医師会等の実績ある団体に移す枠組みをつくり、都道府県に後方支援を義務づけ、取り組み内容と目標をそれぞれ介護保険事業(支援)計画に記載させる、ということになる。
 こうした枠組みがうまく機能するかは、委託先となる在宅医療連携拠点と地域ケア会議の連携であるが、この枠組によって、市長村の医師会等は介護事業とそのスタッフとの連携により取り組まざるを得ず、地域包括ケアの構築に正面から向き合わざるを得なくなるという期待が厚労省にはある。
 こうした考え方は一理あるものの、これら施策の議論と決定プロセスが介護保険の側のみで行なわれているのは疑問の残るところだ。
 医療部会で、事務局は、医療サイドの立場から在宅医療・介護連携の推進にかかわる論点を提示した(別掲)。事務局の報告や論点提起に対して、西澤委員(全日病会長)は「在宅医療・介護連携と在宅医療の連携とよく似た言葉が使われている、両者の違いを明確にしてほしい」と注文。
 その上で、「在宅医療連携拠点を介護保険で位置づけるというが、その是非を一度医療部会で議論すべきではないか」と提起した。
 邊見委員(全国自治体病院協議会会長)は「地域包括医療という概念を打ち出す必要があるのではないか」と問題提起したように、厚労省の在宅医療・介護連携推進施策に対する戸惑いと疑問は医療系委員に少なくない。
 事務局は在宅医療・介護連携推進にかかわる医療法関連事項について引き続き議論する方針だが、11月末にはまとめたいとしている。

在宅医療・介護連携の推進にかかわる論点、
地域医療ビジョン策定スケジュール(案)、
地域医療ビジョンについて(事務局資料から)
は、PDF版3面を参照