全日病ニュース

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機能別病床数 実態と「必要量」の調整に医療機関の自主的対応で臨む!

機能別病床数 実態と「必要量」の調整に医療機関の自主的対応で臨む!

機能別病床数
実態と「必要量」の調整に医療機関の自主的対応で臨む!

【医療部会】
厚労省が「第3の案」不足機能が増床許可の対象。知事の介入権限強化など実効性を担保

 

 厚生労働省は、11月22日の社保審医療部会に、医療機能報告制度と地域医療ビジョンにもとづいて医療機能別に病床をコントロールする方法として、前回提案の2 案(詳細は11月15日号)を踏まえ、機能別病床数の実態と「必要量」との調整を医療機関の自主的取組みに委ねるという「新たな案」を、論点というかたちで示した。
 その中で、①新設・増床の許可は病床が不足している機能を対象とする、②病床過剰な機能への転換には中止要請を行なう、③従わない場合は一定のペナルティを科すなど、各機能の病床数を必要量へと収斂させる上で実効性を担保する策を併せて提起した。
 機能別に基準病床数を定めるという強硬な方法は見送るものの、権限を強化して都道府県知事の介入余地を広げることで医療機関の自主的取組みを補完する、というのが「新たな案」の考え方だ。
 この日は十分な議論にいたらず、「新たな案」は引き続き検討に付される。ただし、事務局(厚労省医政局総務課)は「遅くとも年内にまとめたい」としており、残り2回の議論で合意をめざしている。
 事務局(厚労省医政局総務課)が示した「新たな案」(「『新たな案』を検討する上での論点」)の要旨は以下のとおり。
(1)医療機関の自主的な取組みと相互の協議で「必要量」の病床数を達成していく。医療機関に協議の場への参加と合意事項への協力の努力義務等を設ける。
(2)協議の場の合意を無視する医療機関が出現したり、協議の場が機能不全になった場合は、以下のような措置をとる。
①過剰な機能の病床を新設・増床する場合は、不足している機能を担うことを条件に知事が許可し、その遵守を求める②過剰な機能に移行する場合、転換にやむを得ない事情がない場合には、知事が転換中止を要請できるようにする(要請に従わない場合は、現行医療法上の措置に加えて、医療機関名の公表、各種補助金や福祉医療機構融資の対象からの除外、地域医療支援病院・特定機能病院の不承認・承認の取消し等のペナルティを科す)
③前出ケースで転換を強行した場合に、国による、当該病床の保険医療機関指定取り消しが可能であるかどうかの検討を行なう
④協議の場が機能不全となった場合は、都道府県知事による遊休病床の稼働・削減あるいは機能転換等の要請ができるようにし、それに応じない場合はペナルティを科す
 「新たな案」は、病床の新設・増床と転換を裁く基準病床数という大きな枠組みに、「機能別の必要量」という小回りのきく枠組みを組み込むものだ。
 部会後に、土生総務課長は「一言で言えば、(増床等の)許可制度に医療機能という基準を追加するもの」と説明したが、そういう意味からは、強力な裁量権を知事に集めて医療機関に“懲罰”を加える「新たな案」は、「案2」を装った「案1」といえなくもない。
 ただし、これまではもっぱら行政の裁量で進められてきた医療提供体制の整備・再編に医療機関によるオートノミーの介在を認めるという今回の案は、画期的ではある。
 そうした意味で、「新たな案」におけるペナルティは「医療機関の自主的取組みや相互協議」に応じない“拡張主義的”な医療機関に対する強硬手段であり、裁量を委ねられる側に不可避な責任の裏返しという一面もある。
 とはいえ、「新たな案」は実効性を担保しようとするあまり、医療機関を処分する権限を都道府県知事に集中し過ぎるきらいもある。西澤委員(全日病会長)は「知事によるペナルティが前面に出すぎている」ことへの違和感を表明、慎重に検討する姿勢をみせた。