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ホーム全日病ニュース第814回/2014年12月1日号病院のあり方委員会企画「地域一般病棟」から...

第55回全日本病院学会in 埼玉/病院のあり方委員会企画
「地域一般病棟」(11月2日)から:機能区分議論に対応、「地域一般病棟」の発展型を提案

第55回全日本病院学会in 埼玉/病院のあり方委員会企画「地域一般病棟」(11月2日)から
機能区分議論に対応、「地域一般病棟」の発展型を提案

「亜急性期病棟」は急性期か回復期か? 保険局と医政局の機能区分に重大な齟齬

 

■「地域一般病棟の過去と現在」― 猪口雄二副会長の講演要旨

 地域一般病棟とは地域で医療を支える地域密着型の病棟・病院をいう。具体的には、1次医療圏もしくは生活圏で、地域の患者、在宅患者、介護施設入居者等を対象に、医療機関や介護施設等との連携を中心に、地域包括ケアを推進する病棟もしくは病院である。
 2011年版の「病院のあり方報告書」は、病棟単位の機能分化を「高度医療」「急性期」「亜急性期・回復期」「慢性期」の4つに分類した。
 「高度の医療を行なう病棟」とはまれな疾患などに対応したもので、今話題になっている高度急性期というのは、多分、もう少し広い概念ではないかと思う。「急性期医療の病棟」に、我々は「軽度から中等度」というのを入れた。それは、高齢者を中心に、必ずしも高度な医療にふさわしくない疾病があり得るだろうからである。
 「亜急性期・回復期」は、リハビリ、慢性疾患の増悪期、繰り返し入院など、どちらかというとポストアキュートである。亜急性期というのは定義が難しいところがあり、よくポストアキュートとサブアキュートを合わせた概念が使われることがあるが、ポストアキュートは分かるものの、サブアキュートというのは我々ですらうまく概念化できない。そこで、回復期と言った方が分かりやすいかとも考える。とりあえず、亜急性期はポストアキュートに限らせていただく。
 「慢性期」は現在の医療療養病床はもちろん、一般病床にある障害者とか特殊疾患も慢性期ではないかと考える。
 地域一般病棟について、我々は今のところ、一般病床であり、基本的には急性期の入院医療を行なう必要があると考えている。ただし、中小病院が高度な医療を続けるのは難しい。したがって、その範囲は軽度から中等度とうたっている。そのかわり24時間で対応する。また、亜急性期入院機能も提供する。
 次に救急も担う必要がある。特養や老健あるいは在宅で悪くなった高齢者等が搬送されてきた場合には、すぐに3次救急に行かずに、まず我々のほうで一回診ましょうということである。それから在宅療養を支援する。
 基準看護は急性期の部分もあるので10対1。そしてリハビリ施設を有する。
 あとはMSWの配置が必要であろうと考えている。
 一体改革では2025年の改革シナリオが示されたが、そのパターン1で、病床の機能は「高度急性期」「一般急性期」「亜急性期・回復期等」「長期療養(慢性期)」とされている。そこには「地域一般病床」という病床も位置づけられ、あたかも地域一般病棟のようにみえたが、実は、医療過疎地における多機能病院のことであり、前改定で、特定一般病棟入院基本料などのかたちで導入が始まった。
 この改革シナリオは一昨年の6月に出たのだが、この10月に社会保障審議会の医療部会で決まった病床機能情報報告制度で用いられる機能区分とまったく同じで、あたかも、ここが到達点だったかのように見えるほどである。
 さて、全日病では、地域に密着した病院がどんな医療をしているのかを調査し、その結果を今年3月に発表した(編集部注/本紙3月15日号掲載)。対象は200床以下の一般病床をもつ病院で、87病院から回答を得た。回答施設の一般病床は平均86床と、比較的小規模な民間病院である。
 DPCかつ一般病床だけが11病院、それからDPCプラス回復期や療養等が17病院、非DPCで一般病床のみが14、非DPCでケアミックス型が45病院。在宅療養支援病院は29病院であった。
 回答施設の全体像は、平均在院日数が19.6日、このうちDPCかつ一般病床だけは13.7日と総じて短く、看護基準は7対1と10対1が80%を占め、救急車を受け入れるなど緊急入院に対応している。主に外傷、内視鏡の手術、脳血管等の急性疾患を受け入れており、他一般病床からの受け入れが多く、リハビリもしている。在宅復帰率が高く、訪問看護指示や退院調整等の医療連携を行なっている。そして、地域によって提供している医療に大きな差はないというものであった。
 こうした姿こそ、全日病が提唱してきた地域一般病棟をほぼあらわしているのではないかという結果であった。もっとも、今回得られたデータの因子分析では、これら病院が提供している機能の半分しか説明できなかった。今後は全国規模で調査し、詳しいデータを蓄積していきたいと考えている。

回復期・亜急性期めぐり、中医協と医療部会で重大な議論

 さて、この8月に「入院医療等の調査・評価分科会」は、中医協総会に亜急性入院医療管理料の見直しを提案した。そこでは、亜急性期病床の役割は、①急性期病床からの患者の受け入れ、②在宅等にいる患者の緊急時の受け入れ、③在宅への復帰支援の3つとされている。
 この最初と最後はいいのだが、問題は2つ目で、これは亜急性の仕事なのかということで色々議論になっている。
 その報告では、亜急性期病床の要件として、1つに重症度・看護必要度を導入するという案が示されている。しかし、重症度・看護必要度というのはICUでつくられた、本当に重症な人のスコアであって、一般病床としてこれはどうなのかなという気がしている。
 他の要件として、2次救急病院の指定、在宅療養支援病院の届け出、在宅復帰率などが提案されている。在支病というのは分かるが、都道府県によって指定の仕方が全然違っている2次救急病院というのは果たしてどうか。
 さらに、今は病室単位でやっている亜急性期入院医療管理料を病棟に広げたいとしている。病棟に広げるから在宅等の患者の緊急時の受け入れも一緒にやるのだという話である。これが、今まさに、保険局が所管する中医協で議論されようとしている。
 その一方、医政局は医療部会に医療法等の改正案を提示。その中で、医療機関が医療機能を報告するという制度などが議論されている。
 この制度に関しては、今年5月に、亜急性期入院医療管理料と同内容の「亜急性期(仮称)」が区分案の1つとして示された。そこには、2025年改革シナリオで示された「地域一般病床」と同種と思われる「地域多機能」というのもあった。ところが、次の7月の会合で「地域多機能」が消え、「亜急性期(仮称)」は「(名称を)検討中」とされてしまった。
 これに対して、日本医師会は、病床機能報告制度で用いる病期にもとづく区分ということで、高度急性期、急性期、回復期、慢性期という案を提案した。この考え方は、その後、日医と四病院団体協議会との協議で深化され、8月に共同提言として発表されている。
 そこでは、急性期病床は、①急性期の医療を提供する、②病態として重度・中等度・軽症がある、③各病院の機能に応じた急性期医療を提供する、④多くの診療科を総合的に持つ病院病床、特定の専門分野の病院病床、地域に密着した病院病床と、地域のニーズに応じてそれぞれが必要、⑤在宅や介護施設等の患者の急性増悪に対応する、⑥2次救急を担う、⑦地域包括ケアを推進するために、かかりつけ医との連携、介護との連携、患者支援等の機能も有する、とされている。
 ところが、医政局は、9月13日の医療部会に、日医・四病協が示した区分案そのものを出してきた。その結果、これでいくということになったのである。そうすると、保険局が提案している亜急性の病棟は、医療部会で合意した急性期に当るのか、それとも回復期に当るのかという点がはっきりしていないという問題がある。この点は、中医協できちんと詰めていく必要があるだろうと思っている。

地域一般病棟の機能深化と名称変更を検討している

 それで、実は、地域一般病棟の名称を変えた方がいいかと思っている。というのは、既に医療部会(10月11日)には、現行の一般病床と療養病床の区分と基準病床は手をつけないというものの、高度急性期、急性期、回復期、慢性期のそれぞれに基準病床数を設けるという話まで出ており、このままいくと、一般病床が事実上区分けされることになりかねないからである。
 もっとも、そうなると、急性増悪の在宅患者ははたして急性期病床に入るのか回復期病床に入るのかという問題がますます重大な意味をもってくるわけであるが…。
 この名称の問題は、地域一般病棟が地域医療と地域包括ケアの中ではたす役割と機能を再度明確にするという作業を併せ持つわけであるが、四病協とともに日医の先生方とも協議を重ねており、近々、まとまった内容を公表する予定である(編集部注/11月18日に公表。1面・6面を参照)。
 地域包括ケアを担う地域に密着した病棟、それから24時間の高齢者対応、他医療機関との連携、この点は地域一般病棟と同じである。新しく加える必要があるのは認知症への対応である。これができないと、地域包括ケアの中で高齢者を受け入れることができないからだ。
 それから、連携を図る部署を必須とすることを考えており、この点も地域一般病棟と違ってくる。地域一般病棟ではMSWの配置を必要としていたが、やはり、患者や利用者に連携する部署の存在を分かるようにしなければいけないということだ。当然に、患者と家族の医療・介護に関する相談に対応するということであり、地域一般病棟の考え方よりも一歩進んだものを出したいと思っている。
 医療法も診療報酬も議論は大詰めにきており、我々も言うべきことを言っておかないとならない。地域医療を支えている中小民間病院の将来をとざす事態だけは避けなければならないと思っている。以上、地域一般病棟の過去と現在をお話しさせていただいた。