全日病ニュース

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医療ニーズに24時間対応、地域の医療・介護のケアマネジメントを支援

医療ニーズに24時間対応、
地域の医療・介護のケアマネジメントを支援

【地域医療・介護支援病院】
要件案とともに医療法上の扱いと診療報酬上の論点も提起

■「医療提供体制のあり方~地域包括ケアシステム構築に向けて~」
四病院団体協議会追加提言(概要)
11月18日

 *1面記事を参照

はじめに― 国民が安心できる地域包括ケアの構築―

 急性増悪も含めた高齢者の急性期医療は従来型の急性期医療と異なり、全体の病態や患者の生活などを総合的に考慮した治療目標を設定して対処することが必要となる。
 これを実現するためには、かかりつけ医機能の充実とともに、在宅療養高齢者の受け皿としての入院機能を有する病院・病棟の創設と入院医療・在宅医療・介護の多職種チームが連携して機能を有する円滑な入退院システムの構築を早急に実現する必要がある。

1. 基本方針

 日本医師会と四病院団体協議会は、先般、医療提供体制のあり方に関する合同提言を公表し、その中で「地域の医療・介護・福祉との連携の下、地域包括ケアシステムの実現に向けて、在宅医療を含めた地域特性にあわせた柔軟な医療提供体制を構築する」と述べた。
 このため、以下の追加提言を行う。

2. 地域包括ケアシステムの基本的な考え方

 多疾患と愁訴(老年症候群)を抱えた要支援・要介護の高齢者を対象とする医療需要が急激に増加しており、従来型の急性期医療体制では解決を図れなくなってきている。このため、前述の合同提言では「かかりつけ医」の養成と充実に努めることを表明したが、かかりつけ医と病院病床の機能分化だけでは十分ではない。「かかりつけ医」と連携して患者を円滑に受け入れる入院医療が機能することが在宅医療に極めて重要である。
 また、急性期治療後でも合併症や障害などにより直ちに退院することが困難な患者も増えているが、在宅医療までの入院病床が明確でなく、やむなく急性期病床に入院している実態もある。転退院支援機能や介護との連携機能が強化された病院が身近な地域に存在することがかつてなく重要になっている。
 以上を踏まえ、前述合同提言の骨子を基に、以下の基本的考え方を提唱する。

■地域包括ケアシステム実現のための医療提供体制構築の基本的考え方

1. 医療・介護が必要な人に、その人がどのような場にいても、その人にふさわしい適切な支援を行うことができるよう、地域医師会等と連携し国民とともに取り組む。
2. ケアマネジャーや地域包括支援センターなど、介護では医療・介護が必要な人を支援する仕組みが制度化されているが、医療ではこうした機能は必須となっていない。今後、医療提供体制全体として、患者を支える機能と役割を担う。
3. このため、地域包括ケアシステムに必要な在宅医療支援や医療・介護連携などの新たな病院機能を明らかにし、地域の実情に応じ、地域医療機関が積極的に担う。この医療機関が「かかりつけ医」と連携し、医療ニーズに24時間対応するとともに、介護、福祉等と連携して、地域の医療・介護のケアマネジメントを支援する。

 このようなビジョンと改革の実行には、医療提供者の自主的取り組みに加え、制度的、財源的支援が不可欠であり、中長期的なビジョンと医療法等制度的枠組みの整備、それに沿った医療機関の自主的な改革努力と公的支援、必要な体制構築に取り組む医療機関の経営努力を公平に支える適切な診療報酬体系の実現とそのための財源措置が必要である。
 特に診療報酬議論においては、「あるべき姿」をまず議論し、それにふさわしい報酬体系を議論する、という進め方を強く求めたい。

3. 病床機能と病院機能の整理

 現在、病床機能の報告を求める仕組みの議論が進められている。これは、病院病床が果たしている医療機能について、病期に沿って大きな分類を示し、医療機関に報告を義務づけるものである。一方で、2025年頃までに最も体制構築が迫られているのが地域包括ケアシステムであり、医療においては在宅医療の推進・医療介護連携の推進である。
 これら課題に対応するには、「かかりつけ医」の普及と新たな病院機能が必要不可欠であるが、これは急性期型の医療機能を分化するだけでは対応できない。治療目的以外の職種、体制、機能を病院に付加していくことが求められるためである。
 病床機能の報告の分類と求められる病院機能の関係を以下に示す。

表/病床機能と病院が果たす機能の整理

 

4. 地域医療・介護支援病院(仮称)

 「地域医療・介護支援病院」(仮称)は、「かかりつけ医」とともに患者に身近で地域に密着した医療機関としてその機能を果たしていく、以下の機能・要件を備えた病院である。
 □「地域医療・介護支援病院」とは(機能)急性期病床からの転院を受け入れて在宅復帰を支援するとともに、在宅患者・施設入所者等の急変を24時間体制で受け入れ、在宅療養を支援する。また、地域の医療・介護連携においてネットワーク構築、情報共有、多職種連携支援など、責任ある役割を果たす。
 □「地域医療・介護支援病院」の要件1 地域包括ケアを担う地域に密着した病院(概ね200床未満、ただし地域特性を考慮する)。
 1 24時間体制で高齢者等の入院に対応する。
 1 地域医療連携室、医療介護連携室、等、他機関との連携を図るための専門の部署を持ち、それを機能させることができる一定数の連携担当専門職を配置する。
 1 認知症に対応できる。
 1 一定の急性期医療に対応できる職員配置を行う。
 1 患者や家族に医療・介護に関する適切かつわかりやすい情報を提供し、在宅医療等の相談に対応する。必要に応じて地域のかかりつけ医を紹介する。

5.「地域医療・介護支援病院」の医療法・診療報酬上の扱い

 「報告制度」の議論では4つの病床機能が取り上げられているが、この4分類は患者の病期による分類である。国民に分かりやすく、病院にも追求しやすい「病院類型」を併せて議論し、その支援策を講じていくことが、地域包括ケアシステムとそのための医療提供体制の構築には必要不可欠である。
 病院類型と地域医療・介護支援病院の位置づけとしては以下のような整理が考えられる。ここでは主な例を示すが、これに限定されるわけではない。

図/機能分化と病院類型例

 

(補論)
●病院と病床の関係
 上記のように、地域医療・介護支援病院は、病床機能としては急性期病床(病棟)と回復期病床(病棟)をそれぞれ持ち、病院全体として在宅療養支援・医療介護連携支援の機能を持つものである。
 一方で、これらの機能は高齢者の身近な地域に拠点として置かれ、患者や他の連携機関と顔の見える関係を持っていなければならない。このため、地域医療・介護支援病院は多機能であることが求められ、現実的には1病棟で複合的機能を持つ「地域支援病棟」(仮称)を認めることが必要不可欠となる。
 病床報告制度で病棟単位で急性期か回復期の報告が求められる場合、急性期病棟、回復期病棟いずれであっても、必要な機能を持つことにより、「地域支援病棟」(仮称)と位置付けることができるとすべきである。
 一方、患者は通常病院の機能で受診選択することから、「地域支援病棟」(仮称)を持つ病院を「地域医療・介護支援病院」として表示できることとすべきである。
 診療報酬上は、以上のような特色を踏まえた評価が必要不可欠であり、その望ましい評価について、早急に掘り下げた議論が行われることが必要であることを強調しておきたい。
●早急に議論すべき診療報酬上の論点
 在宅療養患者などの急性増悪は先の合同提言でも急性期の病床機能で対応すべきものと位置づけており、急性期患者の診療にふさわしい報酬体系でなければならない。
・病院全体の機能の適切な評価のあり方(必要な人員配置とそのコストを反映した機能評価の点数設定)
・地域密着型の病院で1病棟に急性期と回復期の患者が混在する場合の評価の方法
※病棟単位の報酬評価と患者単位での報酬評価の組み合わせ。(例/DPC対象期間はDPC算定(+加算)、DPC対象期間外については重症度評価を加えた新たな包括算定等、コストと患者特性等を適正に評価した体系について早急に検討)

6. おわりに

 我が国医療の発展を支え、歴史的経緯を経て形成された地域の民間中小病院という貴重な既存資源を、未曾有の超高齢社会を乗り切るために活用すべきである。
 この既存資源を活用・強化すれば、高齢の救急患者が一律に3次救急や高度急性期病院に搬送されることなく、地域で情報共有や医療連携が確保され、最も地域の高齢者等に適した体制を持つ医療機関で受け入れることが可能となる。
 今回の我々の提案は、このような地域の受け入れ体制を強化することにより、患者や国民から見ても分かりやすく、病院従事者の過重な負担も避けることができる提案である。
 我々自身も、自らの提案を実現すべく、自ら積極的に改革に取り組んでいく覚悟である。