全日病ニュース

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消費税分を乗せたみせかけのプラス改定

消費税分を乗せたみせかけのプラス改定

▲田村厚労大臣は診療報酬とは別に900億円の基金が設置されると発表した

 

消費税分を乗せたみせかけのプラス改定

【2014年度の診療報酬】
実質は小泉内閣以来の大幅なマイナス。医科はプラスを堅持

 

 2014年度の診療報酬は、消費税対応分を除いた実質がネットで-1.26%と、06年 小泉改定以来の大幅マイナス改定となった。(1面記事を参照)

 

 14年度の改定率は、12月初めまで、消費税補填分を加えても、小泉内閣時代(06年度改定)の過去最悪(-3.16%)に次ぐマイナス改定になるという噂が出回るほど、厳しい情勢にあった。
 それを、消費税補填分を加味すると+0.1%にまで押し戻したのは「国民医療を守る議員の会」の力が大きい。これを受けて、自民党の政調部会が強力に働きかけた結果、官邸は一定の譲歩を余儀なくされた。
 それでも、政治判断の結果は、実質でマイナスという厳しいものであった。
 しかも、薬価等引き下げによって捻出される約5,400億円は本体報酬の財源にしないという方針が貫かれた。これが、今後、既成事実化される恐れがある。
 これは、今回の改定が官邸のペースで行なわれたためだ。政府筋が「今回の予算編成に内示はない。したがって閣僚協議は復活折衝ではない」と指摘したように、改定率をめぐる田村大臣と麻生財務大臣の協議(12月20日)は正味数分と、いわば表敬訪問であった。
 12月20日の会見で田村厚労大臣は「消費税の補填分は確保できた」と胸を張る一方、「消費増税で国民の負担感がある中、医療が国民負担にはね返らないようにするという立場から、別途、200億円と900億円を公費で確保することで財務大臣と合意した」と力説した。
 しかし、900億円は医療提供体制に投じられる、診療報酬と関係ない財源である。一方、200億円は7対1からの離脱を決意させる一種の“支度金”だ。
 これらには消費税増収分の一部が投入される。この増収分があるが故に、その一部を外づけで運用することで、診療報酬はスリムとなってマイナス改定が実現。一方、消費税分が上乗せされたためにマイナス改定が一見プラスにみえるカモフラージュが作られ、薬価等引き下げ分の約5,400億円が一般財源に残るという“手品”が実現した。
 この“手品”の仕上げに使われたのが財政支援制度(基金)で、あたかも改定率の不足を補うかのように改定率と同時に発表された。

 

機能分化等の基金は14年度904億円。以後も増税分が投入

 12月25日の中医協で、宇都宮医療課長は、各都道府県に設置される基金(新たな財政支援制度)の規模は、14年度で904億円(消費税増収分の充当544億円、一般財源からの手当て360億円)。その使途は、①医療従事者の確保・養成、②在宅医療の推進、③医療提供体制改革に向けた基盤整備である旨を明らかにした。
 資料には、「病床の機能分化・連携を推進するための基盤整備は、14年度は回復期病床等への転換など必要なもののみを対象とし、15年度に地域医療ビジョンが策定された後、さらなる拡充を検討する」と記された。
 関係筋によると、基金の法制化によって、消費税増収分は毎年度計上されることになる。
 地域医療再生基金が公的中心の配分となった失敗を避けるため、国が策定する基本方針や交付要綱に、官民に公平に配分することを求める旨を記載するなどの対応がとられる予定だ。

■2014年度診療報酬の改定率(厚労省資料から)