全日病ニュース

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21条含む医療事故調査のあり方を2年以内に検討、必要な措置

21条含む医療事故調査のあり方を2年以内に検討、必要な措置

改正医療法14年10月、地域医療構想は15年4月、医療事故調査は15年10月に施行

 

 医療法と介護保険法等を一括改正する法案が通常国会に提出された(2月15日号既報)。一括改正法案は「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律案」(医療介護総合確保法案)と題し、16にもおよぶ法律の改正を図ろうとしている。
 そこには、医療事故調査制度、特定行為実施看護師の研修制度、移行課税を猶予する認定医療法人、地域医療支援病院と公的病院の医師確保への協力義務、病院・診療所の勤務環境改善措置努力義務など、多岐にわたる制度の創設等が盛り込まれている。
 だが、医療介護総合確保法の最重要課題は、その名称から分かるとおり、医療計画と介護保険事業(支援計画)を連動させるとともに、都道府県による医療・介護を包括した提供体制の総合整備計画を可能とする法的整備であり、その軸となるのは、都道府県医療計画制度下で病床の機能分化を強く推し進める地域医療構想(地域医療ビジョン)の策定で、医療法第5章に「第3節 地域における病床の機能の分化及び連携の推進」を追加した。
 また、今回の医療法改正の大きなできごとは医療事故調査制度の創出で、第6条の10として2項が追加され、診療に起因した予期しない死亡が生じた病院等の管理者に「医療事故調査・支援センター」への報告と院内調査を課した。
 医師確保に関しては、地域医療支援病院と公的病院に医師確保への協力義務を課す一方で、都道府県に、医療従事者の勤務環境改善に関する支援活動の努力義務を課すだけでなく、無料職業紹介事業や労働者派遣事業の実施を認めた。
 保健師助産師看護師法に書き込まれる特定行為を実施する看護師の研修制度において、一定の枠組みの中で選択的にカリキュラムを運営する指定研修機関に対する厚労大臣の立入と検査権限が組み込まれた。
 医療介護総合確保法案は、附則に、(1)医師法21条を含む事故報告・届出のあり方を見直し、この法律の公布2年以内に法制上他の必要な措置を講じる、(2)特定行為の研修制度が一般看護師による特定行為の実施を妨げるものではないことを関係者に周知する、ことなどを書き込んだ。

■「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案要綱」の概要

第一改正の趣旨
 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療法、介護保険法等の関係法律について所要の措置を講ずる。
第二「地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律」の一部改正
◎題名に関する事項題名を「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」に改める。
◎目的に関する事項(略)
◎総合確保方針、都道府県計画及び市町村計画に関する事項
 1. 厚生労働大臣は、地域における医療及び介護を総合的に確保する基本方針(総合確保方針)を定めなければならない。総合確保方針には、医療法第30条3第1項の基本方針及び介護保険法第116条第1項の基本指針の基本事項、公正性及び透明性の確保、その他基金を充てて実施する都道府県事業に関する基本的な事項等を定める。
 2. 都道府県と市町村は、総合確保方針に即して、かつ、地域の実情に応じて、医療及び介護の総合的な確保のための事業(地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設及び設備の整備に関する事業、居宅等における医療の提供に関する事業、公的介護施設等の整備に関する事業、医療従事者及び介護従事者の確保に関する事業等)の実施に関する計画(都道府県が作成するものを「都道府県計画」と、市町村が作成するものを「市町村計画」という)を作成する。
 計画を作成するに当たっては医療計画及び介護保険事業(支援)計画との整合性を図る。
◎基金に関する事項
 都道府県が、都道府県事業(都道府県計画に掲載された事業)に関する経費を支弁するために基金を設ける場合に、国は必要な資金の3分の2を負担する。国が負担する費用は、増加する消費税の収入をもって充てる。
第三医療法の一部改正
一 地域における病床の機能の分化及び連携の推進に関する事項

 1. 病床機能報告制度一般病床又は療養病床を有する病院又は診療所の管理者は、病床の機能区分に従い、基準日における病床の機能(基準日病床機能)及び基準日から一定期間が経過した日における病床機能の予定(基準日後病床機能)並びに入院医療内容等の情報を都道府県知事に報告しなければならない。
 2. 地域医療構想の策定都道府県は、医療計画に、地域医療構想(構想区域ごとの、機能区分ごとの将来病床数の必要量等に基づく将来の医療提供体制に関する構想)、その達成に向けた病床機能の分化と連携の推進に関する事項等を定める。
 3. 地域医療構想を実現するために必要な措置
 (一)都道府県は、構想区域等ごとに、診療に関する学識経験者の団体他の医療関係者、医療保険者等の関係者との協議の場を設け、地域医療構想の達成の推進に必要な事項について協議する。
 (二)都道府県知事は、病院開設等の許可に、当該構想区域における既存病床数が将来の病床数の必要量に達していない医療を提供すること等、地域医療構想の達成に必要な条件を付することができる。
 (三)都道府県知事は、1の報告について、基準日病床機能と基準日後病床機能とが異なる場合等に、当該構想区域における当該基準日後病床機能の病床数が将来病床数の必要量に既に達しているときは、当該病院等の開設者・管理者に、都道府県医療審議会でその異なる理由等の説明等を求めることができる。それを踏まえ、当該理由がやむを得ないものと認められないときは、都道府県医療審議会の意見を聴いて、基準日病床機能を基準日後病床機能に変更しないこと等を要請(公的医療機関等には命令)することができる。
 (四)都道府県知事は、協議が調わない場合等には、病院等の開設者・管理者に、都道府県医療審議会の意見を聴いて、当該構想区域における既存病床数が将来病床数の必要量に達していない機能区分の医療を提供すること等の必要措置をとるよう要請(公的医療機関等には指示)することができる。
 (五)都道府県知事は、構想区域における療養病床と一般病床の数が基準病床数を超えている場合に、公的医療機関等以外の医療機関が正当な理由なく、許可を受けた病床に係る業務を行っていないときは、当該医療機関の開設者・管理者に、病床数削減の措置をとるよう要請することができる。
 (六)病院等の開設者・管理者が(三)(四)(五)の要請に従わない場合は、都道府県知事は都道府県医療審議会の意見を聴いて、当該病院等の開設者・管理者に勧告を行うことができる。当該勧告もしくは(三)の命令又は(四)の指示に従わない場合には、都道府県知事はその旨を公表することができるとともに、地域医療支援病院又は特定機能病院の承認を取り消すこと等ができる。
 (七)医療計画を策定・変更するときに、あらかじめ意見を聴く対象として、保険者等が都道府県ごとに組織する保険者協議会を追加する。
 4. 居宅等における医療の充実と医療・介護の連携推進のための医療計画の見直し
 (二)医療計画に、居宅等における医療の確保の目標に関する事項及び居宅等における医療の確保に係る医療連携体制に関する事項を追加する。
 (三)都道府県が医療計画を変更する頻度は6年(居宅等における医療の確保の達成状況等は3年)ごととする。
 5. 病院及び病床を有する診療所の開設者・管理者と国民の役割地域における病床の機能の分化及び連携の推進に係る病院、病床を有する診療所及び国民の役割を位置づける。
二 医療従事者の確保等に関する事項
 1. 都道府県知事は、特定機能病院、地域医療支援病院及び公的医療機関等の開設者・管理者他の関係者に、医師の派遣、研修体制の整備その他医師不足地域の病院・診療所の医師確保に関し協力を要請することができる。
三 医療従事者の勤務環境の改善等に関する事項
 1. 病院・診療所の管理者は、医療従事者の勤務環境の改善等の措置を講ずるよう努めなければならない。
 厚生労働大臣はそのための指針を定める。
 2. 都道府県は、医療従事者の勤務環境改善に関する相談、情報の提供及び助言等の援助その他の勤務環境改善に必要な支援に関する事務を実施するよう努める。
四 医療法人の合併に関する事項 (略)
五 臨床研究中核病院に関する事項 (略)
六 医療の安全の確保のための措置に関する事項
 1. 病院、診療所又は助産所の管理者は、医療事故(医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産で、当該管理者がその死亡又は死産を予期しなかったもの)が発生した場合には、医療事故調査・支援センターに報告した上で、必要な調査等を行い、その結果を医療事故調査・支援センターに報告するとともに、遺族に対して説明しなければならない。
 2. 医療事故調査・支援センターは、医療事故が発生した病院等の管理者又は当該医療事故の遺族から依頼があったときは、必要な調査等を行い、その結果を当該管理者及び当該遺族に対して報告しなければならない。
第四 介護保険法の一部改正 (略)
第五 保健師助産師看護師法等の一部改正
一 保健師助産師看護師法の一部改正
 特定行為(診療の補助であって、看護師が手順書により行う場合には、高度かつ専門的な知識及び技能等が特に必要な行為として厚生労働省令で定めるものをいう。)を手順書により行う看護師は、厚生労働大臣が指定する研修機関において、一定の基準に適合する研修を受けなければならない。
第六 外国医師等が行う臨床修練に係る医師法第十七条等の特例等に関する法律の一部改正 (略)
第七 看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部改正
 看護師等は、病院等を離職した場合等に、住所、氏名等を都道府県ナースセンターに届け出るよう努めなければならない等看護師等の就業の促進に関する所要の措置を講ずる。
第八 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部改正
 持分あり医療法人は、持分なし医療法人への移行に関する計画を作成し、これが適当である旨の厚生労働大臣の認定を受けることができるものとする等所要の措置を講ずる。
第十一 施行期日等(附則)
一 施行期日
 この法律は公布の日又は2014年4月1日のいずれか遅い日から施行する。ただし、次に掲げる事項は、それぞれ次に定める日から施行する。(附則第一条関係)
 (一)医療法の改正は2014年10月1日(地域医療構想の策定と「必要な措置」は2015年4月1日、医療事故調査の仕組みは2015年10月1日)
 (二)介護保険法の改正は2015年4月1日(ただし、利用者負担割合の見直しは2015年8月1日など改正事項によって異なる)
 (三)保健師助産師看護師法等の改正は2015年4月1日(看護師の特定行為の研修制度は2015年10月1日)
 (四)外国医師臨床修練制度の改正と持分なし医療法人への移行に係る改正は2014年10月1日
 (五)看護師免許保持者等の届出制度は2015年10月1日 など
二 検討規定等
 (一)政府は、第三の六の調査(医療事故調査)の実施状況等を勘案し、医師法第21条の規定に基づく届出及び医療事故調査・支援センターへの医療事故の報告、医療事故調査及び医療事故調査・支援センターの在り方を見直すこと等について検討を加え、その結果に基づき、この法律の公布後2年以内に法制上の措置その他の必要な措置を講ずる。
 (二)政府は、医師又は歯科医師の指示の下に、手順書によらないで行われる特定行為が看護師により適切に行われるよう、医師、歯科医師、看護師その他の関係者に対して特定行為の研修制度の趣旨が当該行為を妨げるものではないことの内容の周知その他の必要な措置を講ずる。
 (三)政府は、この法律の公布後1年を目途として、介護関係業務に係る労働力の確保のための方策について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
 (四)その他、この法律の施行に関し、必要な経過措置等を定めるとともに、関係法律について所要の改正を行うこと。