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ホーム全日病ニュース(2014年)第821回/2014年4月1日号新たな財政支援制度都道府県担当者会...

新基金事業計画 関係団体からの意見聴取を重視。病院団体・病院も対象

厚労省 12年度調査にもとづく入院改定項目の中間まとめ案を提示

新基金事業計画
関係団体からの意見聴取を重視。病院団体・病院も対象

【新たな財政支援制度都道府県担当者会議】
各県は9月に計画、10月内示。4~5月の国との協議前に意見聴取を先行

 

 厚生労働省は3月20日の「新たな財政支援制度にかかる都道府県担当者会議」に、新基金の交付要綱案、対象事業例、日程の展望等を示し、都道府県との質疑応答に応じた。
 都道府県は9月に計画を策定、10月に内示を得、11月に交付が決まる。
 交付事務に当たる医政局指導課は、新基金の事業計画を策定する上で、(1)官民への公平な配分(都道府県計画で公的・民間の割合・額を明示)、(2)官民問わず幅広い地域の関係者・関係団体からの意見の聴取を条件とする考えを都道府県に示し、「関係団体」として、医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、病院団体等を例示した。関係者には個別医療機関も入る。
 その上で、事前のヒアリング(4~5月)で意見聴取を含む検討状況の報告を求めると説明。各都道府県にヒアリング前に関係団体の意見聴取を済ませておくよう要請した。
 指導課は、さらに、関係者意見聴取の窓口として都道府県医師会を推奨、新基金の都道府県計画を都道府県医師会との連携を踏まえて策定することが適切との認識を表明した。
 これまで補助金について都道府県から意見聴取を受けることがなかった病院団体であるが、この機会にどう積極的に関与していくか、存在意義が問われている。(3面に資料

 

 新たな財政支援制度は、医療を対象に2014年度から実施され、介護は15年度からの着手となる。基金の総額は14年度は公費による上積みもあって904億円だが、15年度以降は増税分のみが財源となる。
 この規模について、指導課の幹部は、「消費税増税分を財源とする新基金は法に書き込まれた恒久的制度だ。14年度に確保した増税分の544億円は1年間の増収額ではなく、低く見積もられている。次年度も6~700億円程の確保は可能ではないか。10%になればさらに積み増しされる」と展望している。
 医療に限った14年度の事業は、①病床の機能分化・連携、②在宅医療、③医療従事者等の確保・養成の3領域が対象。このうち①について、厚労省は、「14年度は回復期病床への転換等現状でも必要なもののみを対象とし、15年度からの地域医療構想(地域医療ビジョン)の策定後に更なる拡充を検討する」としている。
 すなわち、「病床の機能分化・連携」は、今後は地域医療ビジョン実現の財政ツールとなるわけだ。その一方、「時間の経過とともに、提供体制の課題は診療報酬に重点が置かれていく」と、前出高官は予測する。増税分投入の枠組は続くが、投入額は永久保証できないというわけだ。
 新基金の交付にいたる日程は、①4月から6月にかけて都道府県別のヒアリングを2回実施し、事業構想と規模、関係者との意見交換を含む検討状況をチェックする、②7月に国は総合確保方針を提示し、交付要綱等を発出する、③9月に各都道府県は計画を策定、④10月に内示して11月に交付を決定する、となる。
 この日程に、一部の都道府県は「9月議会に補正予算案を出さないと14年度の予算執行に間に合わない」などと、日程の前倒しを求めた。
 厚労省は、「交付決定前から実施する必要がある事業は、(補正予算で)各都道府県が事業費を立て替え、交付決定後に基金から支出する等により、法施行前から執行することが可能」としつつ、「単年度事業ではないので15年度への繰り越しができる」とも説明した。
 新基金の交付を所掌する厚労省の問題意識は、(1)地域包括ケアを推進するために医療・介護提供体制の底上げを図る、(2)国民・住民が納得する使い方とすること、である。
 (1)は、2025年の地域包括ケア体制に向け、今まで軽視されてきた、地域の医療・介護提供体制の再構築を期すというコンセプトを意味している。したがって、公的中心の拠点病院ではなく、中小病院への投入が重要という認識が導かれる。
 (2)は、消費税増税分を財源にする限り、広く関係者・関係団体の声が反映した事業を組まなければならない、ということを意味する。
 いずれにしても、今回の補助金は、役所の目が届く公的医療機関が優先されてきた従来方式の安直な使い方は許されないというわけだ。
 この会議で、指導課の担当官は、7割が公的に投入された再生基金の使い方を「バランスが悪い」と指摘しつつ、そうした考え方を都道府県担当者に繰り返し語った。
 しかし、少なからぬ都道府県から、「公的に7割というが何か問題はあるのか」「県内は公的病院が多く、かつ、不採算医療を担っている。国民からみれば官民という議論は不毛ではないか」など、公的病院を擁護する意見が出た。
 こうした疑問に、医師確保等地域医療対策室の佐々木室長は、「地域医療ビジョンが稼働する前に地域包括ケアの底上げを図りたい。それは2次圏よりはもっと細かな生活圏であり、拠点だけですむものではなく、民間医療機関が大切になる」と答え、理解を求めた。
 県医師会が仲介役となって関係団体の意見聴取を進めることについても、「事前に意見を聞けば採用されるとの期待が生じる。それが不採択になると後がややこしい」「医師会からのプレッシャーが強まる」といった声が上がった。
 しかし、指導課は「4、5月のヒアリングの際には、関係団体等の意見聴取の進捗具合をうかがう」と譲らず、従来方式に慣れた都道府県には戸惑いを露わにする向きもみられた。
 指導課は、さらに、前出3分野の54におよぶ事業例を示し、そのうち29の事業を「地域包括ケアの推進等のため特に必要と考えられる新たな事業」として推奨した。
 54のうち25例(274億円)は既存の補助事業を基金用に振り替えたものであり、新たな事業の枠は630億円に縮まるが、いずれも連携の仕組みづくり、モデル事業の立ち上げ、研修の実施、各種団体事業への支援など、いわゆるソフトが中心で、再生基金のようなハコモノは少ない。
 事業例をみると、「在宅患者の退院調整や急変時の入院受入れ整備等に資する病院との医療連携体制の運営にかかわる人件費や会議費などに対する支援」などの“活動費”があるほか、「病床の機能分化、連携を推進するための施設・設備の整備を行う」というように、例えば4.3m2を6.4m2に改築することも対象となり得る。
 意見聴取は県内の病院団体にも行なわれる。各団体が協同する方式も含め、新基金の補助を受ける事業を提案、かつ、当事者としての力量を示すことができなければ、補助金は、県内の医師会、看護協会、薬剤師会等の事業に投入されるか、従来どおり行政が机上で立案する事業に費消される。