全日病ニュース

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2014年度診療報酬改定にどう対応するか - 会員病院と各支部の課題

2014年度診療報酬改定にどう対応するか
- 会員病院と各支部の課題厚労省

副会長(医療保険・診療報酬委員会委員長) 猪口雄二 

 

■医療制度改革と診療報酬改定

 2014年度診療報酬改定が施行された。医療本体は0.1%の引き上げであり、消費税に対応する引き上げ分を除くと、実質-1.26%の改定である。また今回の改定は、2025年に向けた医療提供体制改革を念頭に置いた改定であり、それを実現するため多くの仕掛けが設定されている。
 2014年中には病床機能報告制度が開始となる。並行して作成されるガイドラインに沿って、都道府県は地域医療ビジョンを策定することとなる。病床機能報告制度では、現在の一般病床と療養病床を、「高度急性期機能」「急性期機能」「回復期機能」「慢性期機能」の各病棟(病床)に区分する。
 そして、地域医療ビジョン作成の過程で、2025年の人口、高齢化率等を基礎に2次医療圏における4区分の病棟(病床)のそれぞれの必要量が計算され、病院経営者の自主的な、もしくは「協議の場」における話し合いで、現状の病床数を医療機能別の必要病床数に収斂させようというものである。
 全日病の各支部は、この「協議の場」に参加し、現場の意見を反映させる必要がある。

 

■新たな財政支援制度

 今回、地域の医療・介護の整備推進のために新たな基金が設けられた。その予算は904億円に上り、各都道府県に分配される。
 新基金の使途として、病床機能分化・連携、在宅医療・介護の充実、医療従事者の確保・育成等が描かれている。
 この補助金の交付内容は本年度前半に固められる。
 したがって、全日病の各支部は、早急に、新たな財政支援を活用した事業を提案する必要がある。

 

■診療報酬改定のポイント

 今回の診療報酬改定は、病床機能分化に対応するための改定という意味合いが強い。このような観点で改定項目を見てみる。
「高度急性期病床」の位置づけに向けた診療報酬
 「高度急性期機能」の病床を整えるために、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット、総合入院体制加算、手術・処置の休日・時間外・深夜加算等において、さらに上位の施設基準の点数が用意された。
 これらの要件を満たせる「高度急性期機能」の病院は、特定機能病院や都道府県単位の基幹病院等が対象となろう。
7:1看護からの退出と「急性期機能病床」の診療報酬
 7:1看護基準を減らすことは、今回の診療報酬改定の大きな目標である。このために、「重症度、医療・看護必要度」の見直しはより厳しいものとなった。その他、短期滞在手術の平均在院日数からの除外、退院患者の在宅復帰率75%以上等も7:1からの退出のために設けられた。
 また、救急医療管理料は「上記に準ずる重篤な状態」が半額に引き下げられた。2次救急指定病院等の「急性期機能病床」では、この引下げによる減収が痛手である。
「地域包括ケア病棟」の創設
 「亜急性入院医療管理料」は「地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)」に変化した。リハビリテーションが包括され、看護と看護補助の人員配置加算がついた。また、急性期対応の加算も付いたが、不十分なものと言わざるを得ない。
 そもそも、この病棟の機能は、報告制度における「急性期」なのか「回復期」なのかはっきりしない。
 在宅や介護施設からの急性期医療に対応するためには、相応の診療報酬が必要である。また、今後の超高齢社会においては、この病棟において急性期機能と回復期機能の両者を提供することが必要なのである。
 このような考え方を、「地域包括ケア病棟」の今後の発展型として、全日病の各病院が自ら提唱していく必要があるのではないだろうか。
「医療療養病棟」の診療報酬
 「慢性期機能病床」の代表である医療療養病床には、透析加算、在宅復帰加算が設定された。また、いままで算定できなかった超重症児(者)等の加算対象が拡大され、医療区分2,3を多く扱う療養病棟入院基本料1は、かなりの増収が可能となるであろう。そして、療養病床にも関わらず、1病棟は地域包括ケア病棟に移行可能となった。

 このように、今回の改定では病床機能分化を念頭に置いた改定項目が並ぶ。また、このように目的の定まった改定は2018年度改定まで続くと考えられる。
 この状況において、全日病の各支部に必ず関与していただきたい点は、
◎地域の医療・介護の整備推進のための新たな基金に関する事業の提案
◎地域医療ビジョン策定における「協議の場」への積極的参加
の2点である。
 病院機能の再編は始まった。各支部には地域における民間病院の代表であることを認識していただき、今こそ、地域医療の要として機能しなくてはならない。