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ホーム全日病ニュース(2014年)第822回/2014年4月15日号医療法人の事業展開等に関する検討会

大規模医療法人対象:外部監査とMS法人との取引内容公表の義務化を検討

大規模医療法人対象
外部監査とMS法人との取引内容公表の義務化を検討

【医療法人の事業展開等に関する検討会】
理事の経営責任、責任制限、代表訴訟制限等の規定も検討へ。来年に再度医療法改正か

 厚生労働省は、4月2日の「医療法人の事業展開等に関する検討会」に、(1)一定規模の医療法人に外部監査を義務づける、(2)一定規模の医療法人に、財務諸表注記への関連当事者(MS法人)の記載を義務づける、(3)理事の法人に対する責任規定と責任制限規定、さらに代表訴訟制限規定を整備することを提起、検討会の追加論点にあげた。
 (1)と(2)は「医療法人の透明性の確保」が目的。いずれも医療機関債を発行する社会医療法人には必須とされており、外部が評価する際の情報を潤沢にする狙いがある。
 (3)は「医療法人におけるガバナンス強化」が目的。理事の経営責任を法的に定める一方、代表訴訟から守るために責任制限と濫訴防止の規定を明記すべきという考え方だ。
 これらは、医療法人が今後置かれるだろう経営環境の変化を踏まえ、株式会社や社会福祉法人など他法人と同レベルのガバナンスや透明性を実現するという視点から打ち出されたもの。中でも、責任制限と濫訴防止の各規定は、合併や経営統合といった経営再編の諸問題に立向かう役員(理事)を擁護していく必須の要件となる。

 

 医療法人の透明性確保という課題はかねてから指摘されており、過去の医業経営関連検討会でも継続した見直しが必要との見解が示されてきた。このうち、外部監査に関して、医療法は「望ましい」としているが、義務化はしていない。
 外部監査は医療機関債を発行する社会医療法人には義務づけられており、社会福祉法人も義務化の方向で検討が進んでいる。
 今回、事務局(厚労省医政局指導課)は、検討対象に「収益が数百億円を超す大規模な医療法人」をあげ、例えばとして、「収益200億円以上」を外部監査義務化の対象にあげた。
 財務諸表の注記に関連当事者の記載を義務づけるという提案は、いわゆるMS法人が対象。一般に財務諸表には取引相手や取引内容等の補足情報を記した注記表が添付されているが、そのうちの関連当事者との取引に関する注記は、学校法人会計、公益法人会計、社会福祉法人会計にも導入されている。
 四病協がこのほど策定した医療法人会計基準も、社会医療法人については関連当事者との取引内容を注記表に記す(一般の医療法人は省略できる)という考え方を採用している。
 これに対して、事務局は、外部監査の義務化と同様、「社会医療法人にとどまらず、一定規模以上の医療法人も『関連当事者に関する注記』を記載すべき」ではないかと提起した。事務局は、「一定規模」について、現時点で明示していない。
 医療法人のガバナンスに関して、事務局は「『一般社団法人・一般財団法人に関する法律』と医療法を比べると、医療法人のガバナンスはしっかり整備されているとは言い難い状況にある」と指摘した。
 2008年度の改革で一定整備したものの、公益法人のガバナンスになお遅れをとっているという認識である。
 事務局は、「公益法人制度改革に関する有識者会議報告書」に記されたガバナンスに関する指摘事項を紹介。医療法には、社団形態の非営利法人における理事の責任や代表訴訟制度の規定などがないことを明らかにした。
 その一方で、理事の法人に対する責任制限や代表訴訟の制限に関する規定も整備されていないことをも指摘。
 「(責任規定等を強化することによって)理事による法人運営が萎縮したり、理事の人材の確保が困難になることを防止する観点から、理事の法人に対する責任制限に関する規定を設ける方向で検討する必要がある」こと、さらに、「濫訴防止の観点から、代表訴訟の制限に関する規定についても、株式会社制度と同様の検討を行う必要がある」など、「公益法人制度改革に関する有識者会議報告書」の記述を紹介し、それらを医療法に整備する必要を提起した。
 この日の検討会は、これらを論点に追加することに同意した。論点の方向で当該各規定を設けることになれば、医療法は2015年の通常国会で再度改正されることになる。
 事務局は、次回以降に具体的な論点を示す考えを明らかにした。