全日病ニュース

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「非営利ホールディングカンパニー型法人の具体案を年内にまとめる」

「非営利ホールディングカンパニー型法人の具体案を年内にまとめる」

産業競争力会議の方針を受け厚労省が宣言。来年に法令改正か

 

 4月2日の「医療法人の事業展開等に関する検討会」に、事務局(厚労省医政局指導課)は、安倍内閣の諮問会議における「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」の検討状況を報告した。
 産業競争力会議は、1月20日に決定した「成長戦略進化のための今後の検討方針」に「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設」を盛り込み、その実現に向けて「医療法人等の現行規制を緩和するべく検討。具体的内容について2014年中に結論を得て速やかに制度的措置を講じる」とした。
 この検討方針について、検討会で、梶尾指導課長は「総理から厚労大臣を含む関係大臣に具体的に検討せよとの指示が出ている。厚労省としてしっかり論点を示し、検討を進めていきたい」と発言。
 事務局担当官も、「本年中に結論を得るように、この検討会で議論を進めていく。結論が得られれば、15年に政省令、場合によっては法改正を行なう」と説明した。
 前出の「検討方針」(別掲)は閣議決定ではないが、安倍首相が議長を務める総理の諮問会議における方針であるため、厚労省は事実上の政府方針と受け止めている。
 そのため、非営利ホールディングカンパニー型法人のニーズやそれにともなう問題点の摘出などを行なうための調査を実施。次回会合に調査結果の分析を踏まえた論点を示し、具体的な議論に入るとの意向を表明した。
 その一方で、事務局は、非営利ホールディングカンパニー型法人と傘下各法人が所期の目的を達成するためのポイントとして以下の3点を示し、「検討の方向性」とした。
(1)社会にどのような貢献をしていくのかを明確にした「理念」の策定と共有
(2)理念実現のために行なわれる意思決定の共有(必要なガバナンスの仕組み)
(3)理念等の実現に向けたヒト・カネ・モノの有効な活用(剰余金の制限規定がある中でのカネの活用)その上で同制度をイメージ化し、前出のポイントを次のように課題として整理した。
①非営利ホールディングカンパニー型法人は理念を同じくする非営利法人が社員として参加する社団法人で構成。【理念の共有】
②非営利ホールディングカンパニー型法人が行なう個々の意思決定に従って、参加する医療法人等が法人運営を行なう。【意思決定の共有】
③グループ内法人間での医療職や事務職の異動や共同研修などが可能。【ヒトの活用】
④新たに、グループ内の非営利法人間に限って資金の融通が可能(寄付、貸付、債務保証、債務の引受などを想定)。【カネの活用】
⑤新たに株式会社への出資が可能(介護事業を行なう会社のほか、医薬品等の共同購入やシーツのクリーニングを一括で行なう会社などを想定)。【モノの活用】
 事務局は、こうした論点のイメージは議論をしばるものではないとしているが、おおまかこうした内容で、非営利ホールディングカンパニー型法人が実現可能な環境整備を図る議論へ収束させていきたいと考えている。
 ただし、検討会の構成員は多くが非営利ホールディングカンパニー型法人の創設に否定的であり、この日発言した8人のうち6人が強い疑問を示し、残りの2人も慎重な議論を重ねる必要を強調した。

□「成長戦略進化のための今後の検討方針」より抜粋(産業競争力会議 1月20日)

Ⅱ.これまで成長産業と見倣されてこなかった分野の成長エンジンとしての育成
1. 社会保障の持続可能性確保と質の高いヘルスケアサービスの成長産業化
①医療・介護等の一体的サービス提供促進のための法人制度改革等病院や社会福祉施設等の経営を効率化・高度化するとともに、受け皿不足となっている回復期病床等を増やし、在宅医療・介護分野を充実する機能分化を進める。このため、複数の医療法人や社会福祉法人等を社員総会等を通じて統括し、一体的な経営を可能とする「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)』を創設する。
 平成26年中に具体的内容の結論を得て速やかに制度的措置を講じる。

□産業競争力会議/医療・介護等分科会「中間整理」から(2013年12月25日)

(1)医療・介護等を一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設と関連制度の見直し
 複数の医療法人及び社会福祉法人等を束ねて一体的に経営することを法制上可能とする非営利ホールディングカンパニー型法人(仮称)を創設する。
 新法人が、医療法人や社会福祉法人等の傘下法人を社員総会等を通じて統括できるようにする。このため、医療法人や社会福祉法人の構成員となれる者の範囲について、法人も社員等に認める等、現行の規制の緩和について検討する。
 新法人の下でグループが迅速かつ柔軟な経営判断を行えるよう、法人の意思決定方式の自由度を高める。このため、議決権その他の新法人の意思決定・ガバナンスに関する事項について、定款で自由に定めることを可能とする等の措置について検討する。
 グループとしての経営の一体性・効率性の確保、緊密な業務連携を可能とするため、資金調達の円滑化や余裕資金の効率的活用を可能とする。このため、グループ内法人間での金銭の貸付や債務保証や、グループ内法人間での剰余金の効率的活用を可能にする等の措置について検討する。
 新法人及び傘下法人からなるグループが、地域包括ケアを担う医療介護事業等を行う営利法人と緊密な連携を行うことを可能とする。このため、新法人から当該事業を行う営利法人への出資を認める等の措置について検討する。