全日病ニュース

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大学病院の委員がⅠ群定義の見直しを提起

大学病院の委員がⅠ群定義の見直しを提起

大学病院の委員がⅠ群定義の見直しを提起

【DPC評価分科会】
医療課長は議論の必要を認める。Ⅲ群の見直しも引き続く検討課題

 診療報酬調査専門組織DPC評価分科会が4月18日に4ヵ月ぶりに開催され、次回改定を含む「今後の検討課題」の整理を開始。事務局は、検討課題の1つに「病床機能分化と医療機関群のあり方の整合性」をあげ、議論の俎上にのぼらせる考えを明らかにした。
 「今後の検討課題」はDPC分科会における数回の議論を経て整理され、診療報酬基本問題小委員会に諮った上で、次期改定に向けた分科会の議論が始まる。

 

 2014年度改定後初の分科会に、事務局(厚労省保険局医療課)は、「今後の検討課題の素案(たたき台)」として、まずは、例年実施されているDPC影響調査に加えて、すでに検討課題として確認済みの、①基礎係数(医療機関群)のあり方、②病院指標の作成・公開、③CCPマトリックス、④DPCデータ・レセプトの一本化、⑤適切な傷病名コーディングの推進、⑥コストアウトライヤーの算定方法、⑦退院時処方のあり方を提示。
 また、分科会に付設されたDPC検討WGが分担する検討課題である、⑧診断群分類点数表の見直し、⑨様式1調査項目の見直し、⑩コーディングテキストの見直しを取り上げた。
 さらに、新たに加えるものとして、⑪高額な薬剤・検査に係る点数設定方式Dの取り扱い、⑫短期滞在手術等基本料3とDPCの整合性、⑬激変緩和措置のあり方、⑭記載DPCデータとカルテ・レセプトの整合性の確保、⑮簡素かつ審査効率化に向けたDPC請求の諸問題など、つごう20にもおよぶ項目を並べた。
 この数は、2012年度改定直後に示した「今後の検討課題」の2倍以上にも達する。
 調整係数の廃止まで残り2改定に迫る中、病院間の機能や診療密度等のばらつきは、医療機関群ごとに収斂していくどころか拡大をたどっている。
 こうした状況に、DPC病院の中には現行の基礎係数を見直すべきではないかという声があるが、基礎係数に対して機能評価係数のウエイトが小さいことや、機能特性や地域医療におけるポジショニングや連携を評価する指標も十分ではないことなど、見直しを求める対象は基礎係数にとどまらない。
 一方、医療課は、コーディングの精度向上やDPCデータとレセプト(およびカルテ)の記載内容一体化など、データの質の確保に加え、医療保険の根幹にかかわる部分での対応策を次々打ち出してきたが、ここにきて新たに、「病床機能分化と医療関群のあり方との整合性」をどう確保していくかという課題が突き付けられるなど、2025年に向けた改革の中で幾多の重要課題に直面している。

 

「医療機関群と機能分化との整合性」も俎上に

 「病床機能分化との整合性」とは、病床機能報告制度を経て地域医療ビジョンで示される2025年段階における必要量への対応である。こうした機能分化の推進には、新基金制度とともに診療報酬が動員される。DPCの病院にも何らかのインセンティブが措置される可能性が高いが、議論そのものは地域医療ビジョンが策定される2015年度以降の運びになると思われる。
 この日の分科会でもこの問題への言及はなかったが、機能分化のインセンティブは機能評価係数Ⅱとともに医療機関群の分野で措置される可能性がある。この点で、この日は、基礎係数(医療機関群)をめぐって2つの意見が示され、興味深いやりとりが展開された。
 1つは、機能の異なる病院が混在しているⅢ群の細分化を求める美原委員(美原記念病院長・全日病常任理事)の意見。もう1つは、Ⅰ群でも実績のばらつきが大きいことから、大学病院本院に限定したⅠ群要件の見直しの必要を論じた、複数委員の声である。
 後者は分科会長の小山委員(東邦大学医学部特任教授)自らが「Ⅰ群は大学病院の本院という括りになっているが、都会の病院と地方の病院では役割が違う。この辺りの検証が必要ではないか」と切り出し、相川委員(慶應大学名誉教授)が「大学病院によっては本院の一部機能を分院に移しているものもあり、これがⅠ群のばらつきにつながっている可能性がある。そうだとすると本院が自動的にⅠ群というのはおかしいのではないか。一度実状を調べてはどうか」と応じた。
 こうした論調に、宇都宮医療課長は、「(医療機関群をめぐる指摘は)グルーピングの問題なのか、あるいは基礎係数の中に機能として分けて評価したほうがいいものがあるのかという点を洗い出し、本当のベースの部分は何なのか、その上で機能として評価すべき所はどうなのかという辺りを検討したほうがいいのではないか」と述べ、そうした視点を検討課題に追加する必要を認めた。
 Ⅰ群・Ⅱ群の見直しにつながる議論の展開によってⅢ群の見直し議論も弾みがつく可能性があり、今後どういう議論が展開されるかが注目される。

 

Ⅱ群要件に内科系実績を追加する案も議論に

 この日の議論では、工藤委員(結核予防会複十字病院長)が、「Ⅱ群の実績要件3(高度な医療技術の実施)は外科系が対象であり、内保連が提案している特定内科26疾患を基にしたDPC25疾患の実績を加味した評価を加えるべき」と提案した。
 この件は、事務局提案にも「外科系以外の技術評価による評価方法をどう考えるか」と盛り込まれており、今後、重要な論点となりそうだ。
 また、検討課題にある「短期滞在手術等基本料3とDPCの整合性」に関連して、「短期滞在手術基本料3のやり方は今後も対象を広げていくのか」という質問が出た。
 佐々木企画官は、「定型化された治療ということで一種DRG的な形をとったが、今後も標準化されたものについては同様の対応があり得る。ただし、多様性のあるものを無理やりもっていくことまで考えているわけではない。そこは診療現場の実態に合わせて検討していく」と答え、1つの選択肢としつつも、拡大の可能性があることを認めた。
 一方、金田委員(社会医療法人緑荘会理事長)は、「救急は医療提供体制の質が問われる問題だが、救急医療指数は医療機関単位で評価されている。そこで、例えば、重症患者のたらい回し率が高い医療圏にある医療機関の係数を下げるといった、医療圏単位の評価も導入してはどうか」と提案した。