全日病ニュース

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□地域で急性期医療を担う病院(7対1)として
7対1病棟の維持、削減、10対1への移行 ―3案軸に対応を検討

<会員病院の報告●2014年度診療報酬改定をこう受け止める>
□地域で急性期医療を担う病院(7対1)として
7対1病棟の維持、削減、10対1への移行 ―3案軸に対応を検討

社会医療法人緑壮会金田病院 理事長 金田道弘 

 「社会保障と税の一体改革説明会IN岡山」が、平成26年4月9日に岡山市で開催された。財務省、厚労省、経産省の順に講演があり質疑応答があった。
 国の一般会計に占める社会保障費の割合は、平成2年度に16.6%(11.5兆)であったが、平成26年度には31.8%(30.5兆)と急速に増大した。社会経済に支えられ社会保障制度・医療制度が成り立っていることを私たちは忘れることはできない。
 地域医療の役割を果たそうと昼夜懸命に努力している私たちは、同時に超高齢社会における社会保障制度大改革の真っ只中を生きている。地域医療の現場責任者として、私たちには国・行政に対して発言する責任もある。
 そう考えると、社会保障制度改革国民会議や産業競争力会議・医療介護等分科会に、病院の代表が委員に加わられなかったことは残念だ。
 私どもの病院は、岡山県北部の中山間地にある真庭保健医療圏に属している。当地域は岡山県一人々があたたかく、犯罪も少ないとされ、愛育委員会発祥の地でもある。
 地域の高齢化と人口減は著しく、その意味では日本の最先端地域と言える。人口5万人の医療圏内に中小病院が8つもある病床過剰地域であったが、最近5年間に、当院から約20キロ圏内の2つの民間中小病院が倒産した(1つは隣接医療圏である)。
 創設63年目の社会医療法人である当院は、個人病院→医療法人→特定医療法人→社会医療法人と、経営体制の脱皮を行ってきた。昭和52年に最大病床数278床であったが、将来の人口減と機能充実を図るため、その後35年間に、5回にわたるダウンサイジング(脱皮)を繰り返し、現在は172床である。
 施設を作らずにダウンサイジングを決断した理由は、本来業務である病院機能の充実に資源を集中し、近隣施設と連携していくことを選択したからである。
 私が理事長を務めるようになった28年前から、経営環境の変化、医療制度改革、医師・看護師不足等、激動の連続だった。
 何とか脱皮を繰り返してここまで生きて来られた理由は、①理事・幹部の危機感の共有、②建物への過大な投資をしなかったこと、③近隣の医療機関との積極的連携、④何より素晴らしいスタッフに恵まれたことだと考えている。
 病院の理念は「私たちは医療を通して社会に貢献します」、本年の標語は「とどけよう安心医療 つなげよう地域医療」である。
 当院は医療圏で唯一の社会医療法人であり、唯一のDPC病院である。現在の病床数は172床、全4病棟のうち7対1・DPCが3病棟130床、うち亜急性期病床13床、医療療養病棟が1病棟42床である。介護関係施設は有していないが、訪問看護ステーションと指定居宅介護支援事業所がある。
 病院の常勤医師数は13人、平均在院日数は16日前後、年間救急搬送数は約1,100件で、医療圏内で最も多くを受け入れている。他医療圏からの搬送割合は25%で、隣接する津山・英田医療圏からが過半数である。
 今回の改定は、国の目指すべき方向を明確に示したという点で意義は非常に大きい。しかしながら病院経営の立場から見る現実は極めて厳しい。今までに何度か大胆な改定はあったが、今回ほどではなかった。
 自院の病棟再編の検討にあたって考えているポイントを列挙すると、①在宅復帰率・平均在院日数等それぞれの要件を満たせるか、②医療資源が確保できるか、③新入院数と病床利用率はどうか、④借入金を確実に返済しつつ病院経営が成り立つか、⑤病床機能報告制度・地域医療ビジョンとの関連はどうか、⑥今後の改定も視野に入れた選択か、等である。
 今後の実際の当院の病棟再編案としては、①DPC・7対1を2病棟地域包括ケア病棟1病棟医療療養病棟1病棟、②DPC・7対1を3病棟(地域包括ケア病床含む) 医療療養病棟1病棟、③DPC・10対1を3病棟医療療養病棟1病棟、等の可能性を視野に目下検討中である。
 検討にあたっての基本理念は、第1に「医療圏において今後期待されている各病棟の役割とは何か」、第2に「経営・管理が成り立ち、職員を守り、社会に貢献し続けることができるかどうか」である。
 具体的には、幹部会(理事長、院長、副院長、事務長、看護部長等で構成)がプロジェクトチームとなり、医局・看護部・事務部・経営企画室等の各部門の全面協力体制を構築し、実際に入院患者シミュレーションを行う予定である。
 国は総理大臣を中心に、重大な決意で持続可能な社会保障制度改革・医療提供体制の再構築に取り組んでいる。
 私たちはまず国と危機感を共有することが大切だ。川の反対側からいくら批判し要求しても、それが通るような時代背景・社会経済背景ではもはやない。川を渡って目指すべき方向を国や都道府県と一緒に見つめ考える必要がある。
 地域医療ビジョンは、地域の責任者が協議し協力して創っていくものではないかと思う。ただし、医療圏において期待される自院の役割も内部環境も時代と共に変化する。それらに応え役割を果たし続けるために自ら脱皮することが繰り返し必要になる。
 脱皮は痛みや苦しみを伴う場合もあるが、激動の時代を生きるためには不可欠だ。病院も人生も逞しく生きて、少しでも社会に貢献することに価値がある。脱皮を楽しむことが人生であり、マネジメントではないかと思う。