全日病ニュース

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プログラム法項目の議論に着手。年内に結論、来春に法改正

プログラム法項目の議論に着手。年内に結論、来春に法改正

プログラム法項目の議論に着手。
年内に結論、来春に法改正

【医療保険部会】
大病院外来の定額自己負担制度と入院時生活療養費の見直しが俎上に

 

 4月21日に開催された社会保障制度審議会の医療保険部会は、社会保障・税一体改革のプログラム法に盛り込まれた医療保険制度改革の実施項目を確認、議論の日程を了承した。
 改革項目は国保と被用者保険に関するものがほとんどだが、給付に関しては、大病院外来への定額自己負担制度の導入と入院時の食事療養費と生活療養費の見直しが検討される。
 大病院外来における定額自己負担制度とは、現在、200床以上の病院における紹介連携がとれない患者の初再診は選定療養とし、保険適用以外は各医療機関の自由な徴収に委ねている制度があるが、これを援用し、「大病院」は一律の定額制にするというもの。
 一方、入院時生活療養費に関しては、現在、療養病床に入院する65歳以上が負担している入院の生活コストの内容を見直すというもので、対象に一般病床が追加されることも予想される。
 プログラム法で定められていない案件も含めて7月までにすべての項目の議論を一巡、一定の方向性を打ち出した上で、9月から年末にかけての検討で法改正の具体的内容を煮詰めるというのが議論のスケジュール。事務局(厚労省保険局総務課)は来年の通常国会への法案提出を目指すとしている。
 議論の中で、白川委員(健保連副会長)は「高齢者医療費の負担の問題を含め、全体として高齢者医療制度のあり方を議論願いたい」と求めた。さらに、「“療養の範囲の適正化”とあるが、プログラム法にない事項も含めて検討すべきである」と主張した。
 これに小林委員(全国健康保険協会理事長)も同調、「プログラム法にとらわれず医療保険制度全体を見直すべきだ。とくに、傷病手当金などの現金給付の見直しを急いでほしい」と注文した。
 一方、国保運営の都道府県移行に関して、岡崎委員(高知市長)は「国保の市町村から都道府県への移管をめぐる国と地方の協議が進まない。これを早くしないと医療保険部会の議論との連携がとれない」と、両方の庶務を兼ねる厚労省保険局に苦言を呈した。

□プログラム法に盛り込まれた改革事項(2015年に国会提出する法案事項。2014年度税制改正・予算措置済および政令改正事項は除く)
●国民健康保険に対する財政支援の拡充
●国保の都道府県運営を基本とした上で、保険料の賦課・徴収と保健事業の実施等、都道府県と市町村の役割分担に必要な方策
●健康保険法等の一部改正法(2013年) 附則第2条に規定する所要の措置
●後期高齢者支援金の全てを標準報酬総額に応じた負担とすること
●被保険者の所得水準の高い国保組合に対する国庫補助の見直し
●国保保険料の賦課限度額及び被用者保険の標準報酬月額等上限額の引上げ
●外来給付の見直し(大病院外来定額自己負担)及び入院給付(入院時食事療養費・生活療養費)の見直し

機能分化における知事の権限強化に懸念の声も

 4月21日の医療保険部会で、医政局の梶尾指導課長は「地域医療ビジョン(地域医療構想)」と「新たな財政支援制度(新基金制度)」について説明。「地域医療再生基金とは異なって法律にもとづく基金であり、恒久的制度である」と明言した。
 地域医療ビジョンに関連して、委員からは「都道府県知事の権限がいたずらに強化されても困る。(関係者による)協議の場を抑止力にしていかないとまずいのではないか」という意見が出た。
 この懸念に、梶尾課長は、「(過剰な機能への病床転換の中止を)知事が勝手に指示できるわけではない。基本的には(県の)医療審議会に諮って行使されるのであり、そこで抑止力が働く」という認識を示した。

 

産科補償制度 2015年以降の掛金は1.6万円。一時金の額で議論を続行

4月21日の医療保険部会は、産科補償制度の見直しに伴う新たな掛金を1万6,000円とすることで合意した。
 同制度を運営する日本医療機能評価機構と厚労省医政局(総務課医療安全推進室)が協議した結果の案を了承したもので、2015年1月以降の分娩から適用される。
 産科補償制度については、1月20日の同部会で、補償対象基準を在胎週数32週以上、出生体重1,400g以上とするなどの見直し案で合意している。
 これにもとづいて、補償対象者数を年間571人(推定区間423人~719人)と推計、上限の719人をもとに保険料(評価機構が損保会社に収める額)を算出したところ、1分娩につき2万4,000円となった。
 この額に、1月20日に合意された「剰余金は15年以降の保険料に充当する」方針にしたがって1分娩当たり8,000円を充当すると、新たな掛金は1万6,000円となる。現在の3万円からは大きな減額となった。
 この日の部会は、15年以降の出産育児一時金の額をめぐって、新たな掛金にスライドした減額を求める保険者側委員と現行「原則42万円」堅持を求める委員とで、意見が分かれた。
 医療保険部会の合意を得た評価機構は新たな保険料で金融庁への申請を進めるが、出産育児一時金の額の変更は政令(健保法施行令)の改正を必要とするため、年内いっぱいに結論を得るべく、医療保険部会は引き続く議論を行なう方針だ。