全日病ニュース

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「各病棟は患者の流れの入口と出口の両方を調えるべき」

▲第1回経営セミナーで猪口副会長は14年度改定に対応する考え方を明らかにした

「各病棟は患者の流れの入口と出口の両方を調えるべき」

【「2025年に生き残るための経営セミナー」】
2025年へ誘導する改定。7対1の削減はまだ続く。将来を見据えた判断を!

 全日本病院協会は5月11日に第1回「2025年に生き残るための経営セミナー」を本部の大会議室で開催。
 「平成26年度診療報酬改定の全体像を考える」と題して、主に入院医療を取り上げ、14年改定が意味するものと新たな届出に際して考慮すべき点などを猪口副会長と医療保険・診療報酬委員会の委員が解説した。
 疑義解釈が次々出る状況に「まだ不明な点が多いため、本日は現時点での考え方である」とことわった上で、医療保険・診療報酬委員会は参加者からの質問に答えた。
 医療保険・診療報酬委員会は、今改定に関する参加者からの質問に対する回答を全日病のホームページに掲載する方針だ。

 

 最初に講演した猪口雄二副会長は、「今回の改定は、(2025年に向け)病床機能の分化・再編にいかに向かわせるかという視点で行なわれた」と指摘。その方向性は昨年8月の社会保障制度改革国民会議報告書で示され、それに沿った医療提供体制の改革と表裏一体に、病院を誘導する大胆な措置が図られたと説明した。
 それだけでなく、病床機能報告制度で用いられる高度急性期、一般急性期、回復期、慢性期という病床区分はすでに11年6月に示された2025年の改革シナリオで示されていることを示し、高度急性期の切り分けが試みられ、回復期の充実が志向された14年改定は改革シナリオの着実な実践であることを明らかにした。
 地域包括ケア病棟については、「急性期の機能が重視されるべきだが、包括点数の枠内でどこまでできるか」と疑問を呈す一方、「データ提出が要件となったため、この病棟の中身がすべて捕捉される」と述べ、それが次回以降の改定に及ぼす影響に懸念を示した。
 一方、7対1に関しては、「仮に今改定で7対1に踏みとどまったとしても、見込み通りの変化が生じなければ、次改定、次々改定とさらなる手が打たれる可能性がある」と述べ、今改定への対応策のみから今後の病棟戦略を決めることの危うさを指摘。改革シナリオが示す機能分化の方向を視野に収めて対策を講じる必要があるとの認識を示した。
 続いて講演した医療保険・診療報酬委員会の西本育夫委員(大倉山記念病院事務長)は、7対1入院基本料だけでなく、地域包括ケア病棟入院料(管理料)、回復期リハ病棟入院料1・2、療養病棟入院基本料1(在宅復帰強化加算)、さらには在宅強化型・支援型の老健施設と、在宅復帰率を要件とする入院料が急性期、回復期、慢性期に出揃ったことに着目。
 「すべての道は在宅に通じる」というのが今改定が企図した入院医療の構図であると喝破。とくに一般病棟は、生き延びていく上で「自院が入院の入り口になるための取り組みが不可欠になる」と強調した。
 その一方、「7対1で臨む場合も出口を確保していく努力が欠かせない」とも指摘。その上で、「この問題は、やがて、10対1の病院も直面することになるのではないか」との認識を明らかにした。
 そして最後に、私見ととしつつ、生き残るための条件として次の2点をあげた。
 (1)地域医療ビジョン策定に伴って行なわれる地域調整の前に、地域の機能分化を視野に入れた自主的な調整を行なうこと。
 (2)連携地域における他院の状況変化を予見もしくはリアルタイムで把握し、よりよい連携に向けて、自院機能の変更を速やかに行えること。
 第1回経営セミナーで、参加者からは、地域包括ケア病棟・入院医療管理料の施設基準、届け出等、多くの質問が寄せられた。
 これに対して、医療保険・診療報酬委員会の委員は、現時点で考えられる回答を行なったが、中には、自院の具体的な実例を明らかにして、適切な選択のアドバイスを求める参加者も出るなど、熱のこもった質疑が行なわれた。
 次回の経営セミナーは「医療法等改正案の全体像~新たな財政支援制度への対応、病床機能報告制度とは」と題して、5月18日に開催される。