全日病ニュース

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全日病の2013年度調査研究 ― 3件の報告まとまる

全日病の2013年度調査研究―3件の報告まとまる

【老人保健健康増進等事業】
「高齢者の医療ニーズ」「BPSD患者の在宅支援」「在宅認知症施策国際比較」

 

 全日病が調査研究事業として厚労省から受託した2013年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)の調査研究事業の結果がまとまり、4月19日の常任理事会に報告された。
 2013年度に採択された全日病の調査研究テーマは、(1)医療ニーズを有する高齢者の実態に関する横断的な調査研究、(2)BPSDの増悪により精神科病院への入院を要する認知症患者の状態像の分類モデル及び退院後の在宅療養支援に関する調査研究、(3)諸外国における認知症治療の場としての病院と在宅認知症施策に関する国際比較研究の3件。
 いずれもテーマごとに設置された事業検討委員会(木下毅委員長)が担当した。
 各テーマの報告要旨は以下のとおり。
●医療ニーズを有する高齢者の実態に関する横断的な調査研究事業
・医療区分を尺度としてみると医療療養>介護療養型医療施設・介護療養型老人保健施設>介護老人保健施設・介護老人福祉施設の順に医療度の高い入院患者/入所割合が高く、前回調査に比較して、各施設の特徴を生かした機能分化が進んできていることが示唆される。
・介護療養型医療施設の今後については「転換先未定」が圧倒的に多く、転換先が定まっている機関では、医療療養病床や介護療養型老人保健施設への転換意向が多かった。
●BPSDの増悪により精神科病院への入院を要する認知症患者の状態像の分類モデル及び退院後の在宅療養支援に関する調査研究事業
・調査結果から、循環器系や呼吸器系の疾患が増悪した認知症の患者は、精神科よりも一般病院で受け入れるケースが多いことが伺えた。その場合、「幻視・幻聴」「妄想」「易怒性」等が重度である患者はBPSDへの対応力が高い精神科病院との連携を強化する必要があるが、BPSD対応マニュアルを導入している施設では、その重症度に比してケア負担度が低くなる傾向がみられた。
・自院で対応困難な認知症・BPSDに対応できる医療機関と連携している病院が5割を超える一方、そうした医療機関を把握しているにも係らず連携できていない病院が4割程度ある。
・認知症疾患医療センターの整備は重要であるが、早期発見と早期対応において既存の医療機関を有効に使う地域での仕組み作りが急務である。
●諸外国における認知症治療の場としての病院と在宅認知症施策に関する国際比較研究事業
・オランダ、イタリア、英国では、認知症に関する最初の判断・治療をバックアップするGPと専門機関の連携が基本的に整えられている。
・認知症薬に関して、オランダでは初回は専門医による処方を必要とするなど一定の制限がある。イタリアでは認知症薬を処方できるのは専門機関のみとなっており、英国でも抗精神病薬の処方(初回)を専門医に制限する取組が始まるなど、GPと専門医の役割分担が明確になされている。
・オランダで、ケースマネジャーがGPと協力し、認知症患者が診断を受けてから終末期にいたるまで患者と介護関係者全体をサポートしている。一方、イタリアにおいては、移民労働者が住み込みで在宅ケアの担い手となる事例も紹介された。