全日病ニュース

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財政制度分科会と経済財政諮問会議で考え方を共有

財政制度分科会と経済財政諮問会議で考え方を共有

【医療費の支出目標制度】
提供体制の必要量と医療費の地域ごと目標化へ、データ活用推進体制を構想

 

 財務省は、4月28日の財政制度等審議会財政制度分科会に、4月22日の経済財政諮問会議で麻生財務大臣が提案した「レセプトデータの活用による医療の効率化」の考え方を説明した。
 麻生大臣によるプレゼンの内容は、3月28日の同分科会で松田晋哉産業医科大学医学部教授が示したレセプトデータを有効活用した「緩やかな総額管理」の考え方を踏まえている。
 松田教授は、欧州の医療改革が示唆するものとして、総合診療専門医(かかりつけ医)、地域包括ケア、代替政策(「治す医療」から「治し支える医療」へ、入院から在宅へ)など、わが国で進められている取り組みに「緩やかな総額管理なども視野に入れる必要」を提起し、「そのためにも医療・介護情報の活用が必要」と論じた。
 そして、「医療・介護情報の活用」の例証として、福岡県における医科・調剤・介護の各レセプトと特定健診のデータを保険者レベルで統合したデータベースの試みを紹介し、その分析から医療圏ごとの医療指標が導けると指摘。
 さらには、DPCデータを活用することによって、急性期医療については質の評価も可能となるとし、NDB(ナショナルデータベース)等既存データの有効利用を訴えた。
 松田教授の考え方に、財政制度分科会は、「『緩やかな総額管理』」を財政的なメカニズムとして解釈すれば、各保険者ごとに医療費支出について予算を作るということ。ぜひ、そのような取組みに向けてデータを活用していくべき」「松田教授の指摘のうち、『新たにデータを集めるのではなく、既存のデータを十分に分析・活用すべき』との点が非常に重要」など、支持する意見が相次いだ。
 経済財政諮問会議における麻生大臣のプレゼンの骨子は、(1)福岡方式の横展開と深化を図る(2)保険者には支出目標の達成度合いに応じた後期高齢者支援金の加減算を行なうことで医療費適正化インセンティブを付与する(3)支出目標を国レベル・保険者レベルで設定。これにより、国は、フランスの医療費支出国家目標制度(ONDAM)と同様の支出目標制度を実施する(4)必要なデータ分析、国による標準的算定式の策定、制度設計等について、関係大臣横断の枠組みである社会保障制度改革推進本部に有識者のチームを立ち上げて取り組むというもの。
 毎年6月頃に、財政制度分科会は「予算編成の考え方」を、経済財政諮問会議は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)をそれぞれまとめているが、そこには、毎回、社会保障費の具体的な抑制方針が盛り込まれてきた。
 両会議の共通認識とされたことから、今年は、医療費の支出目標制度が盛り込まれる可能性があるが、同制度が実効性を獲得するためには、医療情報とICTの全国的標準化などクリアすべきハードルも多く、今後の取り組みが注目されるところだ。

□「レセプトデータの活用による医療の効率化」の考え方(支出目標制度部分)

○福岡県の先進事例を踏まえつつ、以下のとおり医療費の効率化を図るべき。
①都道府県は「地域医療構想(ビジョン)」を策定する際、将来の医療機能別の必要量を定める予定(今国会で審議中の医療介護総合確保推進法案において規定)。
②ただし、都道府県は医療適正化計画の策定主体でもあり、今後、国民健康保険の財政運営の責任も都道府県に移行する予定。提供体制のみならず医療費の適正化に大きな責任。
③①のような数量面の取組みにとどまらず、費用面を含め、人口・年齢構成や疾病構造等に対応する合理的かつ妥当な水準の医療需要を地域ごとに算定する必要。
(注)例えば、医療費が少ない都道府県などを標準集団として、そこから年齢・人口構成等を補正して合理的な医療需要を算定。実際の医療費との乖離の原因(ジェネリック使用率など)をレセプトデータを用いて可視化させながら妥当な支出目標を設定。支出目標の達成のためにもレセプトデータを統合的に利活用。
④都道府県は、これを支出目標として医療費を適正化。