全日病ニュース

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医療・介護の一体化した提供体制構築を指向

医療・介護の一体化した提供体制構築を指向

「医療介護総合確保推進法」が成立。病床機能分化に自律メカニズムを導入

 一体改革にそって医療・介護の提供体制等を整備する「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」が6月18日の参議院で可決・成立、6月25日に公布された。
 法案を審議してきた参議院厚生労働委員会は、6月17日に、22項目からなる附帯決議を可決した。(下に関連資料)

 19の法律を一括改正する「医療介護総合確保推進法」は、医療提供体制に関しては、医療機関による病床機能報告制度を創設、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4カテゴリーから現在と将来の機能を病棟ごとに選択して報告。それを踏まえて各都道府県は医療計画の一部として地域医療構想(ビジョン)を策定し、2025年に向けて医療機能の“適正な”分布を図る仕組みを導入することになる。
 この制度は、一般病床と療養病床の合計数で規制する基準病床制度と異なり、一般病床に病床機能ごとの規制を導入する仕組みとなる。ただし、既存病床の削減が求められることはない。
 規制をかける方法として2025年の病床必要量が機能ごとに導かれ、それを上回る量の機能について、まずは医療機関等による「協議の場」で調整が試みられ、それが不首尾な場合は都道府県知事による機能転換や増床の中止要請等が行なわれる。
 こうした機能分化・連携を含む提供体制の充実化を支援する手段として、消費税増収分を活用して新たな基金を各都道府県に設置することが法定化された。
 一方、医療計画に関しては、地域医療構想との一体策定に加え、その内容も介護保険事業支援計画との一体化と整合性の確保が原則となり、ダブル改定の2018年度以降、計画期間も6年に延長して介護と足並みを揃え、在宅医療など介護と深くかかわる部分は中間年(3年)見直されるというように、医療と介護に、計画部分の相互依存関係がつくられる。
 こうした基礎的部分の連携を踏まえ、各市町村は地域ケア会議の設置と活動強化を果たし、地域包括ケアを支える医療・介護提供者の連携を実現していく。
 そのために、「医療介護総合確保推進法」は「在宅医療・介護の連携推進」を恒久的制度として介護保険法に位置づけるとともに地域支援事業の包括的支援事業に組み込み、その推進を市町村の責務とした。
 消費税増収分を活用する新たな基金は、こうした、地域包括ケア構築に向けた事業にも投入される。
 このように、「医療介護総合確保推進法」は、第6次の医療法改正を医療提供体制の改革で終わらせず、介護提供体制と内的に連動するメカニズムを内包した総合提供体制に向かわせるものとなった。
 その一方で、原因究明と再発防止に特化した医療事故調査制度の創設や医療機関への勤務環境改善システムの導入、あるいは、診療補助における特定行為の明確化とそれを実施するための研修制度や看護師等免許保持者に対する届出制度の新設など、医療の質を制度的に支える仕組みを法制化した。
 他方で、「要支援」向けサービスの市町村事業への移行、一定以上所得者の2割負担、「補足給付」要件への資産追加、特養新規入居者の原則要介護3以上への限定など、「自助の精神がなければ社会保障は維持できない」(6月17日の参院厚生労働委員会における安倍首相の答弁)との観点から、とくに、介護保険サービスの利用者には厳しい改正となった。
 

附帯決議「基金配分は官民の公平性に留意すること」

 22項目からなる「医療介護確保推進法」の附帯決議には、基金の配分に当たって「官民の公平性に留意する」こと、病床機能の再編に当たって「医療機関相互の協議が尊重されるとともに、保険者及び地域住民の意見が反映されるよう配慮すること」などとともに、医療事業の経営の透明性を高めるために「一定の医療法人の計算書類の公告を義務化することについて検討すること」が盛り込まれた。
 また、「診療の補助として医行為を行える新たな職種の創設等について、関係職種の理解を得つつ検討を行うよう努めること」も書き込まれた。

「医療介護総合確保法案に対する附帯決議」から(抜粋要旨)

6月17日参議院厚生労働委員会

一、地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律の一部改正について
2. 都道府県に設けられる基金の配分に当たっては、実効性、公正性及び透明性が十分に確保されるよう、総合確保方針を策定し、官民の公平性に留意するとともに、成果を適正に判定するための事業実施後の評価の仕組みの構築を急ぐこと。
二、医療法の一部改正について
1. 医療提供体制等について
ア病床機能の報告に当たっては、医療機関に過度の負担とならないよう留意するとともに、地域医療構想の策定において将来における医療機能の必要量が適切に推計されるよう、都道府県に、適切な指針の提示や研修及び人材育成等の必要な支援を行うこと。
イ病床機能の再編に当たっては、地域において医療機関相互の協議が尊重されるとともに、保険者及び地域住民の意見が反映されるよう配慮すること。
エ医療従事者の勤務環境改善については、関係団体の意見を十分に尊重するとともに、取り組みが遅れている医療機関にも必要な支援がなされるよう、都道府県に十分な協力を行うこと。
オ国民皆保険の下で行う医療事業の経営の透明性を高めるため、一定の医療法人の計算書類の公告を義務化することについて検討すること。
2. 医療事故調査制度について
ウ医療事故調査制度の運営に要する費用については公的費用補助等も含めその確保を図るとともに、遺族からの依頼による医療事故調査・支援センターの調査費用の負担については、遺族による申請を妨げることにならないよう最大限の配慮を行うこと。
四、保健師助産師看護師法の一部改正について
1.指定研修機関の基準や研修内容の策定に当たっては医師、歯科医師、看護師等関係者の意見を十分に尊重し、適切な検討を行うとともに、制度実施後は、特定行為の内容も含め、随時必要な見直しを実施すること。
2.特定行為の実施に係る研修制度については、その十分な周知に努めること。また、医師又は歯科医師の指示の下に診療の補助として医行為を行える新たな職種の創設等については、関係職種の理解を得つつ検討を行うよう努めること。

□医療介護総合確保推進法の主な改正項目の施行期日