全日病ニュース

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病棟機能報告の内容決まる。今後の焦点はGLの内容

病棟機能報告の内容決まる。今後の焦点はGLの内容

【病床機能情報の報告制度】
7月現在の内容を10月に報告。病棟機能は現状と併せて「今後(6年後)の方向」も

 7月24日の「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」は、この10月1日に施行される病棟単位で機能等の情報を報告する制度の内容を決め、閉会した。その結果は「議論の整理」にまとめられ、7月29日に公表された。
 病院と有床診が、都道府県に、①病棟ごとの医療機能、②構造設備・人員配置等、③提供している医療の内容を報告するこの制度は、毎年7月がその対象となる。ただし、初年度の2014年度は、医療内容は病院単位とし、報告は10月1日から10月末日までに行なうことになった。
 医療内容の報告には電子レセデータが活用される。また、医療機能に関しては、「現在」と併せて「今後(6年後)の方向」も報告することになった。
 事務局(厚労省医政局総務課)は、「議論の整理」にもとづいて同制度の運用規定等を具体化し、8月内に政省令を改正する。同時に、その内容を分かりやすく表現したマニュアルを作成、通知によって全国の入院医療機関への周知を図るとしている。
 報告制度の議論を終え、局面は、9月に設置される検討会で始まる地域医療構想のガイドラインをめぐる議論へと移る。  

 4ヵ月ぶりとなった病床機能情報検討会は、前回(3月27日)会合で報告の方法と項目の案を固めたが、(1)医療機能の「今後の方向」を報告する場合に何年先を対象とするか、(2)報告結果の公表方法をどうするか、の2点を積み残した。
 この日の会合に、事務局は、(1)については、①基本的に医療計画の新たな計画期間と同じ(6年)とするが、それ以前に機能変更の予定がある場合は併せて報告できるものとする、②別途、2025年時点の機能の予定は任意の報告とする、③「今後の方向」の対象年数を何年にするかは必要に応じて見直すという案を示し、賛同を得た。
 (2)に関しては、①都道府県は報告内容を分かりやすく加工して公表できる、②公表の具体的方法は地域医療構想のガイドラインを策定する中で検討するという考え方を提示し、了承された。
 事務局は、また、報告項目の最終案を示し、検討会の同意を得た。報告は、構造設備・人員配置、入院基本料、患者については病棟単位だが、看護職員数や医療機器など報告項目によっては病院単位となる。
 最終的な報告項目は、前回案より10件強少ない112項目(医療機能1、設備構造・人員配置等32、医療の内容79)となった。報告項目は必要に応じて追加等が行なわれる。
 提供されている医療の内容はすべて病棟単位だが、初年度の今回は、レセプトと病棟の紐づけができないために病院単位の集計となる。
 次の診療報酬改定の際に電子レセの様式に病棟コードを追加するシステム改修が行なわれる。以降、医療内容のデータは病棟単位で集計されることになるが、その改修時期は、10%への引き上げに対応した消費税改定(引き上げが予定通り実施されれば05年10月)となる可能性もある。
 病棟コードを付した電子レセの情報は、支払機関を経由し、「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」と同じサーバーに送られ、厚労省が集計した後に、報告制度用に設けられる全国共通サーバーを介して各都道府県に提供される。電子レセ以外の情報は、直接、全国共通サーバーに送られる。
 電子レセに関してはNDBのインフラを活用するわけだが、NDBは高齢者医療確保法、病床機能情報は医療法と根拠法が異なるため、病床機能情報の活用は原則的に都道府県による地域医療構想策定に限られる。
 ただし、厚労省は、NDBを病棟単位で再構成した、病棟単位の人的資源や患者の入退院経路を含むデータを、全入院医療機関から得ることになる。

14年度分の報告データを資料にGLを検討

 こうして得られた情報は、地域医療構想に供されるとともに、2次医療圏ごとに設けられる「協議の場」で、機能別病床の分布を評価するなどの検討に用いられる。
 まず、14年度分のデータは地域医療構想のガイドラインの検討に用いられる。ガイドラインの検討会では、2025年の機能別病床等の必要量を導く計算方法や4つの医療機能の定量的基準なども議論される。
 このうち、定量的基準は厚労科研研究班が既存データで原案をつくるが、同時に、まだ病棟単位にはなっていない今回のデータが重要な資料となる。同様に、必要量の計算方法も、今回データの中の「今後の予定」が重要な資料となる。
 この必要量計算について、7月28日のDPC評価分科会で、医政局総務課の担当官は「地域によって高齢化が異なる。必要量は、まずは、人口構成等の変化と受療率の予測から算出されることになろう」と説明した。
 この必要量と現在あるいは将来見込まれる病床数との差、とくに過剰数の調整が、2025年に向けた分化・連携の絶対的なテーマとなる。
 報告は毎年行なわれ、地域医療構想も医療計画の一環として6年ごとに策定されるため、こうした指標や計算式は、ガイドラインともども必要に応じて見直されるが、少なくとも、スタート時のガイドラインに盛り込まれる指標等の根拠データに、病棟単位が定かでない医療内容や夏期患者(疾病)のデータが使われる点は一抹の不安でもある。
 その中で、開始時は7月とされた報告の対象期間については、今後、拡大するか否かを検討するとされた。
 地域の病院の今後を左右する地域医療構想は、14年度中につくられるガイドラインを踏まえ、15年度以降に各都道府県で策定されるが、その審議過程は基本的に都道府県の裁量となる。
 したがって医療計画を策定するときと同様の医療審議会等が審議の場となるとみられるが、では、関係者が一堂に会する「協議の場」は、既存関係者の手でつくられた構想を実践するだけの調整機関にとどまるのか、定量的基準に地域事情はどこまで加味されるのかなど、議論されるべき課題は多い。
 それだけに、ガイドラインの内容は、報告制度の行方に大きな影響を与えるものとなる。

「特定機能病院=高度急性期」という誘導を撤回させる

 この日の検討会に、事務局は、高度急性期機能の病棟例を提示した。
 高度急性期、急性期、回復期、慢性期という4つの医療機能のうち、とくに、高度急性期については、「DPC病院を指すのか」「7対1をいうのか」「専門病院も対象となるのか」など、病院界には様々な疑問がとびかった。こうしたことから、前回、構成員から「どう定義するのか」という質問が出ていた。
 事務局の回答は、①特定機能病院で急性期の患者に診療密度が特に高い医療を提供する病棟、②救命救急病棟、集中治療室、ハイケアユニット、新生児集中治療室、新生児治療回復室、小児集中治療室、総合周産期集中治療室であって、急性期の患者に診療密度が特に高い医療を提供する病棟、というもの。
 事務局は、この例示を、報告制度のマニュアルに明記するとした。
 この説明に、医療系の構成員は「特定機能病院以外は高度急性期の機能に該当しないという誤解を与える」などと反発、①の撤回を求めた。議論の結果、事務局はこれに応じた。
 さらに、②に関しても、「どうしてもこの文言は必要なのか。これがないと高度急性期機能とは言えないのか」など、強い疑問が投げかけられた。
 定性的な基準の下で、すべての医療機関は、自らの判断で機能を選択することができるというのが、検討会で合意かつ確認されてきた1つだ。
 医政局の土生総務課長は「当面は定性的基準であり、医療機能は自院が判断することになる」と述べ、誤解を与えないものへと②の表現の書き直しに応じた。