全日病ニュース

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有識者のみ、医療者不在の委員。専門委員に任命か

有識者のみ、医療者不在の委員。専門委員に任命か

【社会保障制度改革推進会議】
議論を開始。5年かけて2025年に向けた制度改革を検討

 内閣の下に設置された社会保障制度改革推進会議が7月17日に初会合を開き、議長に清家篤慶應義塾長を選出するとともに、今後の進め方について意見交換した。
 安倍首相は「受益と負担の均衡のとれた(社会保障)制度としていくためには不断の改革が必要であるが、その際には2025年を展望しつつ、すべての世代が相互に支え合う仕組みとしていくことが重要。こうした観点から、今後の社会保障のあるべき姿を描きつつ、例えば、地方の創生や女性の活躍推進など、制度横断的な視点も大切にしながら、忌たんのない議論をお願いしたい」と挨拶。
 前段で「活力ある社会を実現」する必要に触れており、持続可能な社会保障制度に向けた制度改革を進めるだけでなく、「地方の創生」や就業構造の変革などアベノミクスの視点から社会保障の施策を講じるよう求めた。

 推進会議の設置はいわゆるプログラム法にもとづくもの。設置期限は社会保障制度改革推進本部と同じく「設置の日から起算して5年を超えない範囲内(2019年1月11日以前)で政令で定める日」とされているため、1年以内の方針が求められた社会保障制度改革国民会議よりはゆったりした日程で議論される。
 委員は20人以内と定められているが、現時点で11人しか任命されていない。そのうちの8人が国民会議の委員を務めたが、報道関係の1人をのぞく委員はすべて社会科学系の有識者で占められた。国民会議に医師は2人いたが、今回は1人も選ばれなかった。
 推進会議は委員以外に専門委員を置くことができる。初会合後の記者会見で清家議長は、専門委員には医療・介護の分野から専門家を起用する意向を表明した。
 清家議長は、また、推進会議の議論は、社会保障制度改革の対象である医療、介護、年金、少子化対策の4分野にとどまらず、「経済成長や雇用問題も含めた横断的な議論となる」という認識を示した。
 初会合のこの日は、各委員が問題意識を披露するとともに、議論の進め方を確認するフリートークに終始した。社会保障制度改革の前提である消費税率10%への引き上げが確定していないため、しばらく、議論は暗中模索の域を出ない。
 清家議長も「まずは10%を前提に、(プログラム法が定めた)制度改革の成り行きを注視したい」と述べ、当面、人口減少の影響といったマクロ的な問題を論じるとともに、国保の財政基盤強化と都道府県移管や病床既報情報報告制度など、目先の制度改革がもたらす影響を考察していくという意向を表わした。

諮問会議、政治主導で厚労省に“君臨”

 社会保障制度改革国民会議の答申は改革課題と日程を法定化したプログラム法に引き継がれ、医療介護総合確保推進法というかつてない規模の一括法を成立させるとともに、自己負担率を引き上げ、都道府県を保険財政の当事者に引き出す医療保険制度改正に道筋をつけた。
 しかし、国民会議は、給付と負担の均衡や医療費削減を自律的に図るダイナミックな仕組みを提唱するにはいたらなかった。
 その点、5年という時間が与えられた推進会議は、医療費目標の設定、スライド制の保険料率・自己負担率、保険外サービスの公的保険周辺事業化、事業主体の規模拡大と規制の自由化など、医療介護の産業化と給付と負担の構造により踏み込んだ大胆な改革案を打ち出すものとみられる。
 関係閣僚からなる社会保障制度改革推進本部の頭脳を受け持つ推進会議は、諮問機関ながら、プログラム法の規定の進捗状況をチェック・検証するとともに、本格的・具体的な改革メニューを考案、かつ、その法制化と措置化を見届ける機関となる。
 しかも、事実上、厚生労働省に君臨する“司令塔”となり、二層構造で改革を引っ張ることになる。
 国民会議報告書に「例えばホールディングカンパニーの枠組み」と記されたものが半年で「非営利ホールディング型法人制度の創設」として閣議決定されたように、諮問会議の活用は、既存秩序との調整を重視する厚労省に激変もいとわない迅速な改革を強いる政治主導の手法と化している。
 それだけに、どういう施策提案がなされるのか、議論の資料にどういうデータが使われるのか、医療団体が意見を述べる機会が与えられるのか、今後の展開が注目される。

□社会保障制度改革推進会議の委員
◎は社会保障制度改革国民会議の委員

◎伊藤 元重 東京大学大学院経済学研究科教授
◎遠藤 久夫 学習院大学経済学部長
◎大日向雅美 恵泉女学園大学大学院平和学研究科教授
◎権丈 善一 慶應義塾大学商学部教授
◎神野 直彦 東京大学名誉教授
◎清家  篤 慶應義塾長
 武田 洋子 三菱総合研究所政策・経済研究センター主席研究員
 土居 丈朗 慶應義塾大学経済学部教授
◎増田 寛也 東京大学公共政策大学院客員教授
 宮島 香澄 日本テレビ報道局解説委員
◎山崎 泰彦 神奈川県立保健福祉大学名誉教授