全日病ニュース

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関係者の意見を反映させる会議がスタート

【総合確保方針】
関係者の意見を反映させる会議がスタート

厚労省
「2018年度が節目」医療介護の総合確保へ、保険・医政・老健の3局が協同

 厚生労働省は7月25日に医療介護総合確保促進会議を開催、座長に田中滋慶應義塾大学名誉教授を選出した。
 事務局(保険局厚労省医療介護連携政策課)は、「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本方針(総合確保方針)を検討する」と、促進会議の主たる役割を説明した。同会議に、全日病から西澤寛俊会長が構成員として参加した。  

 6月に成立した医療介護総合確保推進法のうち、(1)「地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律」に盛り込まれた「厚生労働大臣による総合確保方針の策定」と「基金による財政支援」、(2)医療法における「総合確保方針に即した医療計画の作成」、(3)介護保険法における「総合確保方針に即した介護保険事業計画等の作成」と、3つの改正事項が公布日(6月25日)に施行された。
 (1)の「地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律」(基盤整備促進法)とは、1988年に制定された「民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律」の題名を2005年に改めたもので、地域介護・福祉空間整備等交付金の根拠法となっている。
 その基盤整備促進法は先に成立した医療介護総合確保推進法に括られた1つとして改正され、名称も「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」(医療介護総合確保促進法)に改められ、基盤整備促進法における「公的介護施設等の整備」は「地域における医療及び介護の総合的確保」に置き換えられた。
 さらに、改称後の医療介護総合確保促進法は、新たに、①地域における医療と介護を総合的に確保するための基本的方針(総合確保方針)を定め、そこに、基金で実施する都道府県事業に関する基本的な事項等を定めること、また、②総合確保方針の案を作成・変更するときは、医療・介護を受ける者、都道府県知事、市町村長、医療保険者、医療機関、介護サービス事業者、診療・調剤に関する団体他の関係団体、学識経験者他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じること、を厚生労働大臣に課した。
 6月25日に施行された(2)と(3)は、総合確保方針は都道府県が策定する医療計画(地域医療構想を含む)と市町村が策定する介護保険事業計画(および都道府県が策定する介護保険事業支援計画)の上位計画に位置し、両計画とも総合確保方針との整合性を確保することを、法律として明確化したものだ。
 したがって、医療計画の基本方針と介護保険事業計画の基本指針は総合確保方針を踏まえて作成されることになる。
 このように、総合確保方針は、今後、都道府県における医療と介護の基本計画を両分野の連携の面で誘導し、2025年に向けて日本の医療・介護の提供体制を一体に整備していくための戦略的指針となる。
 医療と介護の総合確保は消費税財源を投入する基金に支えられる。したがって、総合確保方針の役割の1つは、効果的な基金事業を各地に創出する仕組みをつくることである。
 この総合確保方針の作成は、これまでであれば、社会保障審議会等の常設諮問機関もしくは目的特定の検討会に委ねるところであるが、医療介護総合確保促進法は、ステークホルダーの意見を聴くことを厚生労働大臣に課した。
 その結果、医政局長と老健局長の協力を得て、保険局長が主催する医療介護総合確保促進会議が設置されたもの。事実上、厚生労働大臣の諮問会議である。

9月の告示までに総合確保方針の骨格を固める

 促進会議に呼ばれた構成員は28人。そのうちの5人が病院団体の代表であり、日医、日歯ほかを加えると医師が9人と、1/3近くを占めた。
 事務局は新設された医療介護連携政策課の担当となったが、厚労省は、保険、医政、老健各局の局長のほか、主たる課長も出席する省内横断の布陣で会議に臨んだ。
 医療介護連携政策課の渡辺課長は、次の診療報酬・介護報酬同時改定となる18年度から医療計画と介護保険事業計画が同じサイクルとなると指摘。総合確保方針は次回は17年度に改定されることを明らかにした上で、「18年度が節目になる」との認識を示した。
 その事務局が提示した促進会議の検討事項は、①総合確保方針の作成・変更、②基金の使途と配分等、③その他医療及び介護の総合的な確保に関する事項の3点。
 事務局は、初回の会議に、総合確保方針の作成に関する「主な論点」(別掲)を提示した。
 そこには、「医療と介護の総合確保を図るべき区域の設定」「基金に関係者の意見が反映される仕組みの構築」「(基金配分における)公民の公平性の確保」「基金を活用する都道府県事業の範囲」など、重要なテーマが多く例示された。
 ただし、9月内に予定されている総合確保方針の告示までに、促進会議はあと2回しか予定されていない。
 この日は全構成員が1回づつ発言しただけで2時間かかったが、28人と介護給付費分科会の25人を超える大規模な審議会なだけに、現場の声を反映させた緻密な議論がどこまでできるか、楽観はできない。

□総合確保方針に盛り込むべき事項に関する主な論点から

○医療と介護の総合的確保の意義や改革の基本方向に、どのような視点を盛り込むべきか。
○医療と介護の総合的確保に際して、国、都道府県、市町村が果たすべき役割をどのように考えるか。
○医療・介護サービス提供者や地域住民の役割をどのように考えるか。
○都道府県が医療計画と介護保険事業支援計画を一体的・整合的に策定できるようにするため、国としてどのような基本方針を示すべきか。
○総合確保方針に基づいて都道府県や市町村が策定する計画にどのような事項を盛り込むべきか。
 (例)
 ・医療と介護の総合確保を図るべき区域の設定
 ・医療と介護の総合確保にかかる目標
 ・計画策定に当たって意見を聴取する関係者の範囲 等
○基金について国が示すべき基本方針としてどのようなことが考えられるか。
 (例)
 ・基金の活用に関係者の意見が反映される仕組みの構築と透明性の確保
 ・事業主体間(公民)の公平性の確保
 ・配分に当たっての基本的な考え方(都道府県計画、市町村計画の位置づけなど)
 ・基金を活用する都道府県事業の範囲地域医療構想の達成に向けた医療施設等の整備 等
○基金事業と診療報酬 ・介護報酬の基本的な関係をどのように考えるか。
○各都道府県への配分に当たって、地域医療構想等に基づく医療介護の提供体制への取り組みの評価をどのように反映させるか。

■地域における医療及び介護を総合的に確保するための仕組み