全日病ニュース

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要件はクリア。ただし、試算上はわずかに収支マイナス

【2014年度改定への対応― 会員病院の報告】
□亜急性期病床を地域包括ケア入院医療管理料に移行

要件はクリア。ただし、試算上はわずかに収支マイナス
医療・介護連携の上で地域包括ケア病床は重要。要件次第で増床も考えたい

社会医療法人恵仁会くろさわ病院 理事長・院長

自院の概要

 当院は昭和12年に開設された産婦人科医院を元に昭和43年に病院となり、現在は83床のケアミックス型小病院となっている。
 法人として市内に老健併設在宅療養支援診療所、市外に2つの診療所(有床在支診とへき地診療所)のほか、2つの老健や多数の通所系、訪問系介護サービスを揃え、また、平成10年より病院の周囲にグループ会社で小規模有料老人ホームを数ヶ所開設している。当院は外来・入院とも内科・整形外科の患者が多く、年齢層は圧倒的に高齢者が多い。当院の病床内訳は一般床43床、医療型療養床20床、介護型療養床20床で、一般床のうち亜急性入院医療管理料を6床届け出ている。
 地域での連携については、急性期大病院との連携もあるが、最近では診療所との連携が密になっており、在宅患者の受け入れが増加している。

当院における亜急性期病床の現状

 当院の一般床は病院の基本方針に全日病の提唱する「地域一般病棟」の機能を謳っており、平成17年1月に亜急性入院医療管理料を3床届出てから、現在、6床まで増床している。
 現在までの亜急性期病床の実績は、平成25年度に稼働率100%で、整形外科疾患(人工関節置換術後、大腿骨頚部骨折術後、脊椎圧迫骨折、その他骨折など)が98%を占めていた。在宅復帰率は99%で、退院先は自宅80%、老健11%、特養5%、高齢者住宅4%であった。
 当法人はリハビリに注力しており、セラピスト約50名が各施設に配属されており、リハを365日実施している。その中で、当院には24名のセラピストがおり、亜急性期病床では1日1人当たり平均3.5単位提供している。

当院における地域包括ケア病棟入院医療管理料の届出

 現在、当院は、現在の亜急性期病床6床をそのまま地域包括ケア病床に移行する準備を進めている。
  当院における地域包括ケア病床は、当院急性期以降の受け入れ、在宅医療の受け皿、在宅復帰支援が目的になると考える。その中で、近隣の高度急性期病院からの受け入れも打診されているが、現状の病床数では院内からの患者で精一杯であると考える。
  また、届出の目的の一つに10:1を届け出ている一般病床の平均在院日数維持がある。平成25年度の実績で一般病床の平均在院日数は18.7日であるが、冬当院における地域包括ケア病棟入院医療管理料の届出今後の地域包括ケア病床について期は20日を越えてしまう月もある。一般病床の平均在院日数にカウントされない地域包括ケア病床は、そういった観点からも重要である。
  さて、その実績要件に関してだが、当院はデータ提出加算をすでに届け出ており、在宅復帰率も現状であれば70%以上あり、リハビリ介入1日平均2単位以上もクリアしている。したがって、課題になってくるのは「重症度、医療・看護必要度」である。
  前述したように、当院の亜急性期病床は整形外科患者がほとんどで、それも、入院や術後2週間程度してから転床するケースがほとんどである。
  そこで、「A項目1点以上」該当者を現状で照らし合わせてみると、整形術後早期で創処置実施または内科で呼吸ケア実施・心電図モニター装着の患者が、6床の10%であれば最低1日0.6人いればよい計算となり、現状では他の要件に影響なく、「A項目1点以上」の患者を確保することは可能であると考える。
  もう1点、懸念されるのはリハビリ実施についてである。地域包括ケア病床では1日平均2単位以上の条件がついているが、現時点での亜急性期病床での実績は1日平均3.5単位。現状のリハ介入を維持するとなると、専従のリハスタッフ以外のスタッフ投入が必要になってくる。この点については個々の患者のリハ必要度に応じて提供するリハ量を調整し、それぞれのリハ提供量を収支のために減らすことが極力ないように調整していきたいと考えている。
  ちなみに平成26年5月の実績をもとに現亜急性期病床と地域包括ケア病床の収入におけるシュミレーションをしたところ、地域包括ケア病床でごくわずかなマイナスとなった。
  以上の課題やシュミレーションを含めて院内で検討した結果、当院では来る10月に地域包括ケア入院医療管理料の届出をする予定である。

今後の地域包括ケア病床について

 現行の地域包括ケア病床は、目的については概ね理解できるものの、施設基準や算定要件などで使い勝手の悪いところがある。特にリハビリについては制約があり、リハビリに注力している当院としては悩むところである。
 しかし、今後各々の病院が自院の機能を見極め、地域でさらに連携していく必要性がある中で、また、地域包括ケアシステムを中心に医療・介護の連携を進めなければならない中で、この地域包括ケア病棟・病床というのは重要な位置を占めてくると考えている。
 まだ始まったばかりのことではあるが、今後要件の緩和や見直し等あり、さらに使いやすい病床になれば、当院としては増床も検討していくことを考えている。