全日病ニュース

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その地域に必要な病院をつくる!

□療養病棟から地域包括ケア病棟へ転換
その地域に必要な病院をつくる!

療養病棟の機能分化の延長に回復期が。課題はサブアキュートの運用

 平成20年の社会保障国民会議最終報告で、すでに、病床の機能分化と2025年に向けた将来推計のシミュレーションが描かれ、医療・介護の提供体制の将来像が予測され始めていましたが、今回、平成26年度の診療報酬改定は、いよいよ今後の医療・介護の提供体制の再編に向けた本格的な改革が始まったと実感する改定となりました。
 当院は佐賀県の西部に位置し、主に対応する医療圏は伊万里市と有田町の1市1町であり医療圏人口は約7万7千人、現在の高齢化率は25%ですが、2025年推計では高齢化率が33%になると推定されています。
 当院はこの医療圏で救急医療こそが地域医療の根幹であるとの創設者の考えを基に、「患者さんは常に正しい」「頭を下げよ」「ベストを尽くせ」の理念をモットーに、以前より、在宅から病院、そして介護までのtotal health care の確立を目指し、法人を運営してきました。
 平成21年には救急医療要件をクリアした社会医療法人となり、現在の病床数及び機能は150床で、一般病棟54床(DPC対象病床)、医療療養病棟48床(在宅復帰機能強化加算算定)、そして、平成26年7月より新たに地域包括ケア病棟48床(療養病棟から転換)の3病棟で構成されています。
 その他に老人保健施設を2ヶ所、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション、訪問介護事業所、通所リハビリを運営、同一グループとして社会福祉法人では通所介護、グループホームを運営しています。
 また、予防医療の観点から天然温泉を利用した健康増進施設と診療所を運営し、地域住民が安心して生活できるよう、医療・介護を中心とした街づくりに貢献すべく地域包括ケアシステムの中核としての役割を今後も果たしたいと考えています。
 さて、地域包括ケア病棟の活用プランですが、当佐賀県西部医療圏の既存病床数は1,071床(平成24年12月末現在)であり、亜急性期、回復期を担う病床数はわずか83床となっています。
 今後、当医療圏の地域医療を考える中で、都市部ほどではありませんが、2025年には高齢化率が8%増の約3,000人の高齢者が増えることを考えれば、複数の疾患を有した患者を医療機関として受け入れ治療し、尚かつ在宅へと導くためには、急性期治療後の回復段階にある患者へ対応できる体制と在宅療養中や施設入所高齢者の急性疾患発症後に対応できる体制の両方を整備した病棟、今回の改定でいう地域包括ケア病棟のような役割を持つ病棟が、この医療圏にはまだまだ少ないと思われます。
 また、都市部とは違う地方の医療圏範囲が約30分圏内で収まる地域で医療機関としての中核的役割を果たし、地域完結の医療提供体制を構築するためには、急性期から亜急性、回復期そして慢性期といった各段階に応じた医療がシームレスに提供できる病院体制を整備し、患者ニーズはもとより、地域の様々な医療機関のニーズにもこたえていく必要もあると考えました。
 元々当院は地域の救急医療を担ってきた病院であり、年間救急車搬送数が約800人、地域の救急受入れの約30%以上を担う病院です。
 このような現状の中、一般急性期54床で入院を必要とする救急患者などの急性期患者を受け入れていくためには、長期急性期的な考えで療養病棟を運営しなければ地域の医療ニーズに対応できるベッドを確保できない面がありました。
 そのためMSWを各病棟に配置して退院支援体制の整備を行うとともに、退院後の患者を支援するため、地域を巻き込んだ在宅医療支援体制整備の両方に、現在まで取り組んできました。
 また、3年前の事業計画から、各病棟機能の維持向上のため、まずは一般病棟へDPCを導入し急性期としての機能整備を行い、昨年からは2病棟ある療養病棟の各病棟をリハビリ集中型と緩和や長期ケアなどに機能分化した病棟として運営し、それぞれに質の向上と人員整備等を行うことで療養病棟の機能強化を図ってきました。
 その成果は指標面と経営面の両方であらわれ、指標面としては現状の療養病棟在宅復帰率80%(2013年度)、平均在院日数48日(2013年度)となり、経営面ではDPCによる急性期単価の増加はもちろんですが、リハビリの稼働増加や各指導料等の増加によって、療養病棟では約2,000円の単価増に繋がっています。
 また、このような取り組みを療養病棟で行ってきたことで、今年7月より療養病棟から地域包括ケア病棟への転換がスムーズに行え、入院単価はさらに約1,500円から3,000円の増加を見込んでいます。
 そのほか、DPCを導入するために診療情報管理室を整備して診療データ管理を行っていたことも、地域包括ケア病棟を運営する事だけでなく病院全体の診療データ管理と経営指標作成などを容易にし、今後の病院運営を担うための体制整備ができたといえます。
 当院は、今回の改定で創設された地域包括ケア病棟を、今後、本格的に運営していくことになりますが、現状でもポストアキュート的な役割が大きくなっています。
 しかし、施設基準要件の一つである医療・看護必要度を今後も持続的にクリアし、経営面として病棟稼働を維持向上していくためには、サブアキュートの運用をどのように考えるかがカギになると思われます。
 どちらにしても、今後、地域医療の中核をなす地域包括ケア病棟を確立していかなければなりませんが、各地域に応じてその役割も今後多様化すると思われます。
 しかし、もっとも大切なことは、その地域の特性に合わせて住民の命を守る重要な医療機関として自分たちのミッションを明確化し、リーダシップをもって、地域包括ケアシステムを中心とした地域貢献を行うことがもっとも重要ではないかと考えます。