全日病ニュース

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医療各界が集まり、医療事故調査の運営方法で研究班

医療各界が集まり、医療事故調査の運営方法で研究班

西澤会長が代表研究者。検討成果が厚労省GL策定の素案に

 西澤寛俊会長は7月16日に記者会見を開き、6月に成立した医療介護総合確保法で医療法に位置づけられ、2015年10月1日の施行が決まった医療事故調査制度に関するガイドラインの素案となる研究を開始したことを発表した。
 研究のテーマは2014年度厚労科研に採択された「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」で、西澤会長が研究代表者を務める。研究班には、24の医療関連学会・団体、法曹界、患者団体等から28人が参加した。
 研究班がまとめる報告は厚労省が策定するGLのたたき台となる。西澤会長は、10月末までに検討結果を中間的に整理、14年度末には最終報告を厚労省に提出する方針を明らかにした。  

 医療事故調査の仕組みの創設は、厚労省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」が13年5月にまとめた提言にそって、医療法改正項目として、医療介護総合確保推進法に盛り込まれた。
 予期しない診療関連死は、全例を第3者機関に報告した上で、院内で原因究明調査を実施し、その結果を、遺族とセンターに報告するというのが制度の骨格。
 提言には「院内事故調査の手順は、第3者機関への届け出を含め、厚生労働省においてGLを策定する」と記され、医療介護総合確保推進法の附帯決議も「GLの適切な策定」を求めた。
 このGLを策定するにあたって、厚労省は、関係者を集めた研究班を設置して医療界の総意ともいえる草案を作る方針を固め、その代表として西澤会長を指名した。
 事故調査制度の成否は、財源を別にすれば、医療界と患者がともに納得かつ信頼する公正透明な運営をどう確保するかにかかっており、GLの質がその命運を左右する。
 医療事故調をめぐる長年の論争を知る者にとっては多難な役とも思えるが、責任追及と分離した原因究明・再発防止制度を求めて議論をリードしてきた全日病の代表として、西澤会長は医療界と患者の意見集約に努めることを決意、その役を引き受けた。
 研究班は4月以降4回にわたって勉強会をもち、研究協力者の人選やGLのポイントなどに関する事前検討を行なった。そして、6月18日の医療介護総合確保法成立を経て、7月16日に第1回会合を開き、本格的な検討作業を始めたもの。
 会見で、西澤会長は、GLの主要な課題として、(1)制度の基本理念と骨格、(2)届出のルール、(3)外部支援を含む院内調査の方法、(4)調査結果の報告制度、(5)医療事故調査・支援センターの業務の5つをあげた。
 その上で、「原因究明の最大のポイントは院内調査をいかに適切に行なうかにある」と指摘。院内調査の方法と院内体制のあり方をもっとも重視する考えを示した。
 日程的には、月2回の会合でこれら課題を検討、10月いっぱいに中間報告をまとめる方針だ。
 この中間報告について、西澤会長は「かなり具体的なものとなるだろう」と展望。「これを基に関係者の意見を得て、さらに深め、来年3月末には研究報告としたい」とした。
 また、GL策定に医療界の意見を集約していく必要を強調。その中で、「医療事故の主たる原因は個人よりもシステム、したがって組織にある。そういう意味から病院団体が中心となって取り組む必要がある」との認識を示した。
 研究班には、日医、日歯、日看協、日薬、助産師会の職能4団体とともに四病協4団体と全国医学部長病院長会議の役員が名を連ねており、まさに、病院界の総力を上げた取り組みになろうとしている。
 西澤会長は、「これは医療人の自律的な取り組みでもあり、同じ事故を繰り返さないようにしていかないと患者との間に信頼が築けない。こうした思いを研究班として共有していきたい」と述べ、理念に支えられたGLづくりを目指していく考えを強調した。