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医療保険制度改革の部会意見は11月末がめど
医療保険制度改革の部会意見は11月末がめど
【医療保険部会】 来春の法改正へ、二巡目の議論を開始
社会保障審議会の医療保険部会が9月19日に2ヵ月ぶりに開かれ、来春の通常国会で法改正を予定している医療保険制度改革について、二巡目の議論を開始した。
事務局(厚労省保険局総務課)は、4月から行ってきた一巡目の議論を整理した「医療保険制度改革の主な論点」を提示した上で、10月に3回ほど、11月には3~4回ほど部会を開き、11月下旬をめどに部会の意見をとりまとめるよう求めた。
このスケジュールに、委員からは「議論の時間が少ない。はたして十分な議論ができるだろうか」との懸念が示された。
これに対して、事務局は、改正法案の準備と来年度予算案を確定する必要もあり、「遅くとも12月の早い時期には取りまとめていただきたい」と、精力的な意見集約を促した。
「主な論点」は、大きく、(1)医療保険制度の財政基盤の安定化(国保改革、協会けんぽに対する国庫補助)、(2)国民の負担に関する公平の確保、(3)保険給付の対象となる療養範囲適正化等、(4)医療費適正化と保険者機能の発揮(予防・健康づくり、データヘルス、後発医薬品の使用促進、医療費適正化の推進)の4点に分けて、一巡目の議論を整理している。
求められている制度改正テーマは(2)がもっとも多く、①高齢者医療の費用負担全体のあり方、②後期高齢者支援金の全面総報酬割、③前期高齢者医療の財政調整のあり方、④高齢者の保険料特例軽減措置等の見直し、⑤国民健康保険組合に対する国庫補助のあり方、⑥国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額および被用者保険における標準報酬月額上限の見直し、という課題からなっている。
(3)については、①紹介状なしで大病院を受診する場合の患者負担のあり方、②入院時食事療養費および生活療養費の見直し、③現金給付の見直し等、からなる。
この(3)について、「主な論点」は、①②とも、負担引き上げの方向性を支持する意見と慎重論とを並記している。
この日は、「医療保険制度をめぐる最近の動向」など部会に提出された資料が多く、事務局の説明に時間を要したこともあり、議論は「主な論点」全体に対する意見表明に終始、次回から各論の議論に入ることを確認した。
その中で、「特定健診の実施率向上や重症化の予防が重要」「重症化や認知症の予防に貢献していきたい」など、複数の医療関係委員が重症化予防を重視すべきとの見解を表わした。
紹介なしの大病院受診における患者負担に関しては、単に負担を増やすだけでなく、患者の受診行動に影響を与える効果的な広報活動を強めるべきとの声も医療側からあがった。
一方、支払・事業主側からは、現行の医療費適正化計画は十分な実効性が担保されていないとして、医療保険部会における検討を求める意見(日本経団連)が出たほか、パートの労働者を国保に加入させる必要性を指摘し、議論の俎上に上げるよう求める意見(健保連)も示され、事務局は検討の必要性を認めた。
□「保険給付の対象となる療養範囲適正化等」に関する「主な論点」
●紹介状なしで大病院を受診する場合の患者負担のあり方
・外来の機能分化を推進するため、患者に定額負担を求めていく方向性はよいのでないか。
初診は救急搬送患者を除き、再診は病状が安定した後の再診について定額負担を求めてはどうか。初再診料相当額のみでは少ないのではないか。定額負担を高療養費の対象とはしないことにすべきではないか。
・現在保険給付されている療養を縮小することになる案は慎重に議論すべきではないか。
・大病院の医療費収入を増やすのではなく、保険給付の範囲内で、一部負担金相当額に加えて新た定額負担を求める案が1つの方法ではないか。
・大病院の範囲をどうするかは、病床数、機能、病床数プラス機能が考えられ、導入する際には、試行的に実施した上で進めることが必要はないか。
・地域の医師をどのように確保・育成していくかが課題であり、医師の研修や患者への情報提供を行う必要があるのではないか。
●入院時食事療養費・生活療養費の見直し
・入院中の食事は治療一環であり、基本的にこれ以上自己負担を増やすべきはないのではないか。今後、議論を進めていく場合には、治療食が必要とされる患者と低所得への配慮が必要ではないか。
・長期入院の患者は自己負担を引き上げる方向で考え、食材費に加えて、調理費も自己負担をすべきではないか。また、療養病床は医療区分によって自己負担が異るが、医療区分2及び3は、医療区分1と同等の自己負担に引き上げるべではないか。
・65歳以上の療養病床の入院患者が他の患者よりも自己負担が高くなることは、説明ができないのではないか。