全日病ニュース

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紹介なし大病院受診の定額負担を議論

紹介なし大病院受診の定額負担を議論

【医療保険部会】
委員は概ね導入を支持、しかし具体案で意見分かれる

 10月15日の社保審医療保険部会は「療養の範囲の適正化・負担の公平の確保」をテーマに取り上げた。事務局(厚労省保険局総務課)は、紹介状なしで大病院を受診する場合の患者負担に関する具体的な論点を提示した。
 論点は、(1)定額負担を求める保険医療機関(大病院)の範囲、(2)初診だけでなく再診も対象とするか、また、定額負担の額をどうするか。、(3)定額負担を求めない(求める)患者・ケースはどういうものか、(4)「療養の給付の費用の額」と定額負担との関係をどうするか、の4点からなる。
 対象病院に関しては「病院機能」と「病床数」という2 つの分類を例示。前者は、①特定機能病院(86病院)、②地域医療支援病院(439病院)、③DPC病院(Ⅰ群80病院、Ⅱ群99病院、Ⅲ群1,406病院)が、後者は、④500床以上(450病院)、⑤200床以上(2,656病院)という区分けが考えられるとした。
 定額負担の額としては、①初再診料相当額から一部負担金相当額を控除した額、②外来における平均的な費用などを勘案した額(例えば5,000円、10,000円など)の2案を例示。
 定額負担を求めない患者に関しては、①初再診共通で「緊急の場合(救急患者等)」および「その他やむを得ない場合」、さらに、②再診においては「他の医療機関に文書による紹介を行なう旨の申し出を医師から受けていない場合」と「その他これに類する場合」が、いずれも該当するとする考えを提示した。
 また、定額負担と「療養の給付の費用の額」の関係について、事務局は以下の3通りの考え方を提示した。
●パターン1 一部負担金を除く初再診料を定額負担とする(初再診料に限って定額負担を課し、その7割給付分を定額負担とする。つまり初再診は0割給付となる)―「定額負担の額として、患者の受診行動に与える効果が少なくないか」という点が論点にあげられる。
●パターン2 保険給付の範囲内で一部負担金(3割)に加えて定額負担を求める(この場合、例えば定額負担を5,000円とすると、初再診時医療費の給付分(7割)の範囲内であれば定額負担として5,000円を徴収する(残りは給付)が、それを上回るときは7割相当額までを定額負担として徴収する)―「窓口の事務が煩雑化する」点が論点にあげられる。
●パターン3 『療養の給付の費用の額』に上乗せして定額負担を求める(したがって初再診時の医療費に定額負担を加えた額をもって「療養の給付」とする)―「定額負担が医療費の総額を膨らませることの合理的な説明が困難」という点が論点にあげられる。
 この日の議論では、新たな定額負担の導入に一部の委員から慎重論が示されたが、強い反対意見は出ず、多くの委員はパターン2を支持する意見を表明した。額は5,000円という声がある一方で、1万円とする意見も多く出た。
 対象病院でも意見が分かれるなど、方向性を詰めるにはいたらなかった。
 同日の部会は入院時食事療養費と入院時生活療養費の見直しについても検討した。
 事務局は「見直してはどうか。その場合に、低所得者等どのような者に対する配慮が必要か」と抽象的な論点にとどめたが、今後は、現行の入院時食事療養費(食材費のみ)を、入院時生活療養費の食費と同様、食材費に調理費を加えた負担とした上で、いずれについても額を引き上げる方向の見直しを提案してくるものとみられる。
 その場合に、見直しの対象を一般病床まで広げるか、さらには、入院時生活療養の適用を療養病床の65歳未満患者にまで拡大するか、今後の議論が注目されるところだ。