全日病ニュース

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最高裁 妊娠理由の降格は男女雇用機会均等法違反と判断

最高裁
妊娠理由の降格は男女雇用機会均等法違反と判断

元病院職員の上告に一審・二審へ差し戻しの判決。「不利益」に当たらない基準も明示

 広島市の病院に勤務していた女性が妊娠を理由に降格させられたのは不当だと訴えた裁判の判決で、最高裁は10月23日、女性側の敗訴とした一審・二審判決を破棄し、審理を広島高裁に差し戻した。
 判決の主旨は「妊娠や出産を理由にした降格は、女性の自由な意思に基づく承諾があったと客観的に認められる場合や、円滑な業務運営などに支障があり、降格させても女性の不利益にならないような特段な事情がある場合を除いて違法」というもの。
 男女雇用機会均等法は「妊娠などを理由に女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」としている。今回の差し戻し判決は妊娠や出産を理由にした降格に対する初めての最高裁判断となった。
 一審・二審の判決等によると、理学療法士として広島市の生協病院に勤めていた女性は管理職の副主任に昇格後、妊娠したため負担の軽い部署への異動を希望したが、異動先は3人からなる部署であることに加えてすでに主任がいることなどから、病院は異動後に打診の上で副主任の職を解いた結果、女性は月9,500円の手当を失った。
 産休があけて職場に復帰したところ管理職への再登用がないことなどから、女性は管理職手当の賠償などを求めて10年に病院開設者を提訴、その後退職した。
 妊娠に伴う降格が「不利益な取扱い」にあたるかどうかが争点となっていたが、病院側は「(降格は)本人の同意を得ていた」と主張。一審の広島地裁は「病院側は同意を得たうえで事業主としての必要性に基づき、裁量権の範囲内で(降格を)行った」として請求を棄却、二審の広島高裁も一審判決を支持した。
 これに対して、最高裁の第一小法廷(桜井龍子裁判長)は「原告の女性は降格を承諾していたとはいえない」とみなし、裁判官全員が男女雇用機会均等法に違反すると判断した。
 ただし、妊娠等にともなう降格をすべて「不利益な取扱い」とするのではなく、「本人の自由な意思に基づく承諾」と「特段の事情」がある場合は違法ではないという基準を示した。
 判決の補足意見で、桜井裁判長は上告理由に該当していない育児休業から復帰した後の配置にも言及し、「妊娠中に就いた軽い業務での地位ではなく、もともとの地位との比較で(不利益な取扱いの判断を)行うべきである」と論じた。