全日病ニュース

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介護療養型の類型に「療養機能強化型」を創設

▲迫井老人保健課長

介護療養型の類型に「療養機能強化型」を創設

【2015年度介護報酬改定】
必要な機能継続へ厚労省が提案。認知症、医療処置、ターミナル等が要件

 11月6日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会に、事務局(厚労省老健局老人保健課)は、介護療養型医療施設の現行報酬体系を見直し、新たに「療養機能強化型」(仮称)を創設、現行と基準報酬を分けることを提案。
 ①身体合併をもつ認知症患者が一定割合以上、②一定の医療処置を受けている患者が一定割合以上、③ターミナルケアを受けている患者が一定割合以上、④生活機能を維持改善するリハの実施、⑤地域に対する貢献活動等を行なっていること、を要件にあげた。
 委員からの「5つの要件を満たさない施設は今後どうなるのか」との質問に、迫井老人保健課長は「これからの議論だ」と回答を手控えた。
 ターミナルケア(看取り)、医療ニーズへの対応、認知症の受入という機能の継続(存続)を企図した提案に、支払側の委員は強く反発、介護保険法に明記したとおり2018年3月末の廃止を主張した。しかし、分科会の大勢は事務局提案を冷静に受け止め、概ね支持した。

 分科会後のブリーフィングで、迫井課長は、「療養機能強化型」の人員配置を現行基準より引き上げる考えは「現時点ではない。見直すのであれば、本日提案しておくべきだろう」と答え、介護療養型は2類型とも現行の人員基準で臨む考えを明らかにした。
 「一定の医療処置」としては、喀痰吸引、経管栄養、膀胱留置カテーテル・導尿等排尿時の処置、24時間持続点滴が対象となる公算が強い。
 ターミナルケアについて、同課長は「看取りの計画を全患者にはしていないというのは医療機関としては分かるが、介護保険施設である以上、ターミナルや看取りの機能を果たしていただきたいということで、今後の期待感をこめて要件案とした」と語った。
 「療養機能強化型」の要件案のうち、「生活機能を維持改善するリハ」と「地域に貢献する活動」に関しては、「いずれも理念的な規定に近い形にしたい。あまり高いハードルにする考えはない」と説明。
 「地域貢献活動の内容はこれから詰めていく。社会福祉法人改革の話は参考にはするが、施設の性格が異なるので、まったく同じということにはならない」と述べつつも、地域包括ケアを下支えする“新しい”介護保険施設を模索していく方向を示唆した。
 「療養機能強化型」の基本報酬については、「現行要件の介護療養型よりは当然高くなるが、現在の報酬よりも高くなるかは、改定率が関係するので分からない」と言明を避けた。
 人員基準が変わらないとすると、当然に5つの新要件、実質的には、認知症、医療的処置、ターミナルケアと看取りの3つが報酬差となるが、認知症の受入を除くと一定の実施率を保っている。したがって新たなコストは実質上認知症関係といえる。
 「療養機能強化型」の報酬は現在より高くなると受け止める向きが多いが、経営実態調査で介護療養型は一定の収支差を確保している。したがって、仮に財務省が求める6%ものマイナス改定になった場合にも引き上げられるという保証は必ずしもない。引き上げられたとしても小幅との観測もある。
 一方、現行介護療養型の報酬は引き下げが必至で、老健施設への転換がさらに促される可能性が強い。
 2018年3月末廃止となっている介護療養型の今後について、厚労省は転換意向を含む実態調査を行なっており、その結果を踏まえて介護保険部会で議論を開始する予定だ。
 調査結果の公表時期について、迫井課長は「今年度内に公表するとしか言えない」と明言を避けたが、15年度介護報酬改定が決まった後に、「療養機能強化型」介護療養型医療施設を踏まえた議論がされるものとみられる。

老健施設
在宅復帰強化型と在宅復帰・在宅療養支援機能加算を増点

 同日の介護給付費分科会は介護老人保健施設の報酬見直し案も議論した。
 事務局の提案は、在宅復帰強化型の老健施設を増やし、在宅復帰・在宅療養支援機能加算の算定を促すために、リハ専門職の配置数を要件としつつ、評価を引き上げるというもの。
 入所前後訪問指導加算についても、退所後の生活支援計画の策定を新たに評価する。
 一定の要件で介護老人保健施設の看護・介護職員に非常勤職員を充てることができるという提案は、老健施設による訪問系サービスの提供を促すことが目的だ。
 いずれの案も大筋で了承された。

歯科衛生士等
多職種のアプローチで摂食・嚥下機能の向上を目指す

 この日の分科会は、また、介護保険施設における入所者等の経口摂取の維持・復帰の取り組みを強化するために、現行評価を見直す事務局案を了承した。
 栄養改善に力点が置かれてきた経口摂取の維持・復帰の取り組みを歯科衛生士等多職種によるアプローチに変え、摂食・嚥下機能のより向上を目指すというもので、見直しの要旨は以下のとおり。
①栄養管理を中心に評価してきた経口維持加算等を、咀嚼能力等の口腔機能を踏まえた歯科衛生士等多職種による経口維持管理に対する評価とする。
②経口移行を目的に栄養管理を中心に評価してきた経口移行加算に、咀嚼能力等の口腔機能を含む摂食・嚥下機能や食事介助方法の機能的な検討の評価を加える。
③療養食加算と現行の経口移行・経口維持加算との併算定を可能とする。