全日病ニュース

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厚労省 「回リハ以外の回復期患者を資源投入量等でどう区分するか」

厚労省
「回リハ以外の回復期患者を資源投入量等でどう区分するか」

【地域医療構想策定GL検討会】
高度急性期・急性期病床の医療資源投入量の傾向が異なる患者の扱いも重要な論点

 10月31日の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」は、事務局(厚労省医政局地域医療計画課)が示した2025年の医療需要(入院と在宅)の推定方法について議論したが、事務局が次回に示す試算を踏まえて再度議論を行なうことを確認した。(1面記事を参照)

 事務局が示した入院(医療機能別)に関する需要の推計方法は、要旨以下のとおり(詳しくは別掲「推計の考え方」を参照)。
(1)基本的には2025年の人口推計に入院受療率を乗じて医療需要を推計する。
(2)推計に当たってはDPCやNDBのデータを分析する。
(3)都道府県と構想区域ごとの推計とするために、患者流出入と地域差(入院受療率等)を考慮する。
(4)入院受療率は、地域差の要因分析を行なった上で、補正を行なう。
(5)患者数の推計にあたっては、一定の仮定をおいて各機能を区分し、機能ごとに算出する。
(6)患者数の推計にあたっては、入院患者に提供された医療を出来高点数に換算した上で、医療資源投入量の多寡等をみることで患者と機能の関係を推量する方法が考えられる。
(7)需要推計に際しては疾病ごとの需要も推計する。
 事務局案の最大のポイントは、医療機能別の患者数を算出する上で患者を機能別にどう区分するかという点で、医療資源投入量の変化を根拠に求めた点にある。
 医療資源投入量の推移を急性期の定義に用いるという考え方は、病床機能報告にいたる急性期病床議論の過程で医療側から再三表明されたもので、結果的に、事務局は医療側の見解を踏襲したことになる。
 DPCデータの分析を踏まえると、「入院日数の経過につれて医療資源投入量が逓減していく傾向がある」ことから、事務局は「入院から医療資源投入量が落ち着く段階までの患者数を高度急性期と急性期の患者数とする」と、また、「高度急性期機能については医療資源投入量が特に高い段階の患者数とする」と仮定。
 さらに、「医療資源投入量が落ち着いた後、退院までの段階の患者数を回復期機能・慢性期機能の患者数とする」と、そのうち「回復期リハが必要な患者数は回復期機能で対応する患者数とする」と、慢性期機能については、「まず、重度の障害者(重度の意識障害を含む)・筋ジス患者・難病等の患者数は慢性期機能で対応する患者数とする」と、それぞれ仮定した。
 その一方で、事務局は入院需要の推計方法に関する問題点をあげたが、病床機能の区分に関連しては、以下の検討課題を示した。
①高度急性期と急性期の患者には、医療資源投入量は落ち着いているが、引き続き、状態の安定化に向けた医療提供が続けられている患者もいる。
②回復期機能・慢性期機能で対応するとされた患者(回復期リハが必要な患者、意識障害を含む重度の障害・筋ジス患者・難病等)以外の患者数を、医療資源投入量等によってどのように区分するか。
 事務局が示したDPCデータの分析資料によると、医療資源投入量は、肺がんや急性心筋梗塞では入院直後から下がり始めて安定にいたり、入院日数の経過とともに患者数も大きく減少している。
 しかし、多部位外傷(手術あり)は投入量が比較的長い期間高いまま推移し、急性白血病(手術あり)になるときわめて高い投入量が長く続き、入院日数に応じた患者数の減少割合も緩やかになっている。
 こうした、急性期全体の傾向と異なる推移をたどる患者が多い疾患や病床をどう扱うか、また、入院してからどこまでの段階を高度急性期とみなすかなど、正確な需要を把握するためには、細部にわたる精緻な議論が求められる。
 この日の議論では、入院受療率の補正の意味と必要性をめぐって全国一律とすべきか否かの質疑が交わされ、北波地域医療計画課長は「検討会の議論に委ねる」意向を表明した。
 また、高度急性期と急性期の違いに関しては、「高度急性期をどの病院が引き受けるかは各県で考えるが、それに向けた考え方を事務局で出す」と述べ、高度急性期の病床は3次医療圏単位で見込む考えを示唆した。
 この論を進めていくと、医療資源投入量でみていく話が行政の政策判断にすり替えられる可能性もあり、事務局の具体案が注目されるところだ。
 「地域包括ケア病棟はどこに入るのか」との質問に、同課長は回復期機能に該当するという既定の認識を表明したが、検討課題に「回復期機能・慢性期機能で対応するとされた患者以外の患者数を、医療資源投入量等によってどのように区分するか」とあるように、回復期の患者を急性期や慢性期とどう分けて医療需要に組み込むかはこれからの議論となる。

2025年の医療需要推計の考え方(文中の「検討点」という語は編集部が挿入したもので、事務局資料にはない)

1. 推計の基本的な考え方
・入院については医療機能ごとの医療需要を算出し、それを基に病床数を推計する。(病床数の推計は次回以降の検討とする)
・各機能の需要はDPCデータやNDBのレセプトデータを分析して算出する。2025年の高齢化進展によって増加する医療需要に対応した平均在院日数や在宅医療・外来等への移行についても、それらデータから推定する。
・さらに、都道府県及び構想区域ごと医療需要を算出するために、①患者の流出入、②入院受療率等の地域差、を考慮する。

2. 入院の医療需要について
 入院の医療需要は1日当たりの入院患者数であり、基本的には、人口(性・年齢階級別)に入院受療率(人口10万人対入院患者数。性・年齢階級別)を乗じて算出する。よって、2025年の医療需要は同年の推計人口に入院受療率を乗じて算出する。
(1)疾病ごとの医療需要
 各機能の需要を推計する際に疾病ごとの医療需要も推計する。(「5疾病とそれ以外」又はDPCの「主要診断群18分類」とする)
(2)都道府県及び構想区域における医療需要の考え方
・地域医療構想では都道府県と構想区域ごとに医療需要を算出、これを基に病床数を推計する。
・医療需要は患者の住所地を基に推計することとし、その上で、患者の流出(他区域医療機関へ入院)と流入(他の区域に住所を有する者の入院)を加味する。
(3)患者の流出入の加味の仕方
 医療機能によって患者の流出入状況は異なることから、流出入を医療機能別に考えて加味する。検討点/現状の流出入状況が今後も続くと考えて推計すべきか、区域内で入院医療を完結する考え方に基づいて流出入を一定枠内で収めるべきかという論点がある。
(4)入院受療率の地域差
・患者の新規発生数と平均在日数に影響される入院受療率には地域差があるが、単に現状の受療率を用いるのではなく、地域差要因の分析を行った上で補正を行う。
・その際に、平均在院日数の差に伴う医療機能別入院受療率の地域差について検証・分析を行った上で、補正を行う。

3. 各医療機能の需要
・各医療機能の患者数は、DPCデータやNDBのレセプトデータから診療実態を分析し、患者の状態を一定程度推測することにより、より適切な推計を行うことができる。
 具体的には、平均在院日数だけでなく、患者に対して行われた医療の内容に着目することで、患者の状態や診療実態を勘案した推計になると考えられる。そのため、患者に行われた診療を出来高点数で換算し、医療資源投入量の多寡を見ていくことが考えられる。
 (1)DPCデータの分析から分かること
①医療資源投入量の逓減
・DPCデータの医療資源投入量と在院日数の関係をみると、入院日数の経過につれて医療資源投入量が逓減していく傾向がある。
 具体的には、入院初期は高密度な医療が提供され、資源投入量が特に多い状態があるが、その後医療資源投入量が減少し、一定の水準で落ち着くという傾向がある。
・疾患によっては、数日程度で医療資源投入量が落ち着くものから、1ヵ月を超えて、医療資源投入量が高い状態が続くものある。
②在院患者数の減少と医療資源投入量との関係
・疾患ごとに入院経過日数ごとの在院患者数をみると、入院日数が経過するにつれて減少するが、一定日数以上経過後も少数の患者は入院を継続していることが分かる。
・こうした在院患者数の減少を上記医療資源投入量の傾向と照らしてみると、医療資源投入量が減少した後も在院患者はすぐには減少せず、日数が経過してから徐々に減少していることが分かる。
(2)医療資源投入量と各機能の患者との関係
・医療資源投入量の逓減傾向を踏まえ、各機能患者数の推計に当たって、以下のような一定の仮定をおいて区分することが考えられる。
・入院受療率は、現在、機能ごとに地域差が生じていると考えられため、単に現状の入院受療率を用るのではなく、地域差要因の分析を行った上で補正を行う。
①高度急性期機能・急性期機能について
・入院から投入量が落ち着く段階までの患者数を高度急性期及び急性期の患者数とする。
検討点/出来高換算点数でみた投入量は落ち着いてるが、引き続き、状態の安定化に向けた医療提供が継続されている患者も存在するのではないか。
・高度急性期機能については投入量が特に高い段階の患者数とする。
②回復期機能・慢性期機能について
・①を前提として、医療資源投入量が落ち着いた後、退院までの段階の患者数を回復期機能・慢性期機能の患者数とする。回復期リハが必要な患者数は回復期機能で対応する患者数とする。
・慢性期機能については、まず、重度の障害者(重度の意識障害を含む)・筋ジス患者・難病等の患者数は慢性期機能で対応する患者数とする。
検討点/回復期リハが必要な患者、重度の障害(意識障害を含む)、筋ジス患者及び難病等以外の患者について、回復期機能・慢性期機能で対応する患者数を医療資源投入量等によって、どのように区分できるか検討する。
③在宅医療の患者数について
・2025年の在宅医療患者数は、基本的には、イ)退院して在宅医療を受ける患者数(現状は入院しているが、入院医療の機能強化と効率によって退院し、在宅へ移行すると考えられる患者数)、ロ)現状で在宅医療を受けている患者数、の合計として考える。
検討点/その際、必要な患者に過不足なく在宅医療が提供されるよう、イ)地域の在宅医療提供体制整備状況、ロ)上記イに係る地域差、ハ)適正・効率的な提供体制のあり方、などをのように反映するか検討する。(在宅医療を実施する場所には、自宅のみならず、介護老人保健施設以外の介護施設等が含まれる)