全日病ニュース

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法的な枠組を承認。協力病院は前例ある医療の実施が可能に

▲中医協総会で診療側は「患者申出療養」(仮称)を前向きに受け止めた上で、安全面の確保を求めた

法的な枠組を承認。協力病院は前例ある医療の実施が可能に

【患者申出療養(仮称)の枠組み】
患者申出療養(仮称)の枠組み中医協で運用ルールを検討。協力病院の要件如何で拡大も可能

 11月5日の中医協総会は前回(10月22日)に続いて「患者申出療養(仮称)」の議論を行ない、制度の大枠について支払・診療両側とも承認した。総会は、引き続いて同制度の運用ルールについて検討を進めることを確認した。
 11月7日の社会保障審議会医療保険部会は次期通常国会へ提出する健保法等改正法案に書き込まれる「患者申出療養(仮称)」について検討した結果、法的な枠組みを了承した。
 了承された枠組みにおいて、「患者申出療養」として初めての医療を実施する場合に、国への申請は臨床研究中核病院(以下「中核病院」)が行なって実施するが、中核病院が共同研究医療機関として申請すれば、特定機能病院も当該医療を実施できることになった。
 「患者に身近な医療機関」が患者から申し出を受けた場合は、中核病院が申請すれば、「中核病院と連携して患者申出療養を実施する協力医療機関」となることができる。ただし、中核病院と連携した実施であり、具体的には「当該医療機関でも受診できる」とされた。
 前例がある医療を他医療機関が実施する場合は、患者の申し出を受けた「身近な医療機関」は当該医療を実施した中核病院に申請、中核病院によって実施可能と判断されれば当該医療を実施できることになった。
 その際、中核病院は国がつくる「実施可能な医療機関の考え方」を参考に「患者に身近な医療機関」の実施体制を審査する。この「実施可能な医療機関の考え方」は、今後、中医協で内容を煮詰めていく。
 このように、「患者申出療養」は全国で100に満たない中核病院と特定機能病院を中心に実施されることになるが、かかりつけ医を含む「患者に身近な医療機関」は、中核病院の協力医療機関として、前例がある医療に限って、中核病院の審査を経て実施できることになり、その“要件”は基本的に「実施可能な医療機関の考え方」で示される。
 したがって、現時点で協力医療機関の役割は限定的であるが、要件の設定如何で、さらには、今後の制度の改正によって、その数を拡大していくことは十分可能となる。
 中医協と医療保険部会で承認された「患者申出療養」枠組みの説明資料には、「中核病院の承認により、協力医療機関を随時追加する。厚生労働省は、中核病院に、協力医療機関をできるだけ拡大するよう要請する」と明記された。
 また、枠組では、「患者申出療養」の対象となる医療が明確化された。
 それによると、国内外で未承認の技術や医薬品等の使用以外に、先進医療の実施計画で対象から除外された患者に対する治療や治験の対象外とされた患者に対する治験薬の使用も「患者申出療養」の適用対象となる。
 中医協と医療保険部会に示された「患者申出療養」の枠組みは要旨以下のとおりである。(4面に関連記事)

患者の申し出から医療の実施までの流れ

1.「患者申出療養」として初めての医療を実施する場合と前例がある医療を他医療機関が実施する場合とでは実施のプロセス・要件等が異なる。
2.「患者申出療養」として初めての医療を実施する場合
(1)患者からの申し出
①患者は臨床研究中核病院(以下「中核病院」)または特定機能病院に申し出る。申し出を受けた特定機能病院は中核病院に共同研究の実施を提案する。
②申し出に対応できない場合は対応可能な医療機関に患者を紹介する。
③中核病院および「患者申出療養」を実施しようとする特定機能病院は、患者の申し出に対応できる窓口機能(専門部署)を設けなければならない。
(2)臨床研究中核病院からの申請
①申し出を受けた中核病院は、当該「患者申出療養」の実施が可能であると判断した場合、実施計画、安全性・有効性等のエビデンス、患者からの申し出であることを示す書類を添付の上、国に申請する。
②患者が特定機能病院に申し出た場合、中核病院は当該特定機能病院を共同研究医療機関として申請することができる。
(3)国における安全性・有効性等の審査
①中核病院からの申請を受けて、国は「患者申出療養」に関する会議で安全性・有効性と実施計画の妥当性を確認する。
②国は申請から原則6週間で当該医療の実施可否を判断する。
③保険収載を目指すことを前提としていることから、明らかに疾病や負傷の治療とはいえないもの(編集部注・美容整形等)を除き、一定の安全性・有効性が確認されたものを患者申出療養の対象とする。
(4)医療の実施
①申し出を受けた中核病院・特定機能病院で当該「患者申出療養」を実施する。
②申し出を受けた中核病院・特定機能病院以外の「患者に身近な医療機関」も中核病院と連携して「患者申出療養」を実施する協力医療機関となることができる。その場合は、当該医療機関を協力医療機関として最初から申請し、当該医療機関で受診できるようにする。
③国は、対象となった医療と当該医療を受けられる医療機関をホームページで公開する。
④定期的(少なくとも1年に1回)のほか、必要に応じ、実績等について中核病院から国への報告を求める。
3. 患者申出療養として前例がある医療を他医療機関が実施する場合
(1)患者からの申出
・患者は、中核病院等のほか、「患者に身近な医療機関」(かかりつけ医等も含む)に申し出る。
・「患者に身近な医療機関」が患者からの申し出に対応できない場合には、対応可能な医療機関に紹介する。
・患者は「患者申出療養」についてかかりつけ医等と相談することができる。その際、かかりつけ医等は患者からの相談に応じ、申し出るための支援を行なう。
(2)「患者に身近な医療機関」からの申請
・「患者に身近な医療機関」が申し出を受けた場合、患者からの申出であることを示す書類を添付の上、当該医療を実施している中核病院に申請を行なう。
(3)中核病院における実施体制の審査
・申請を受けた中核病院は、「実施可能な医療機関の考え方」を参考に、「患者に身近な医療機関」の実施体制を個別に審査。申請から原則2週間で当該医療の実施可否を判断する。
・中核病院は、判断後、地方厚生局に速やかに届け出る。
(4)医療の実施
・中核病院の承認により、協力医療機関を随時追加する。厚生労働省は、協力医療機関をできるだけ拡大するよう中核病院に要請する。
・対象年齢が適合しないなど実施計画対象外の患者からの申し出は、中核病院で安全性・倫理性等を検討の上国に申請し、国は「患者申出療養」に関する会議で個別に判断する。

「患者申出療養」の対象となる医療のイメージ

(1)先進医療の実施計画(適格基準)対象外の患者に対する療養
 高齢者、病期の進んだ患者、合併症を有する患者 等
(2)先進医療として実施されていない療養
 一部の国内未承認・海外承認医薬品等の使用、実施計画が作成されていない技術 等
(3)現在実施中の治験の対象とならない患者に対する治験薬等の使用
 治験の枠組み内での柔軟な運用(日本版コンパッショネートユース)では対応できない患者

2015年度介護報酬「介護保険施設の報酬と基準の見直し案」
11月6日介護給付費分科会※1面記事を参照

□療養機能強化型介護療養型医療施設(仮称)の案

 以下の要件をすべて満たす介護療養型医療施設を、医療ニーズや看取りへの対応が充実した施設として重点的に評価する。
【要件】
(1)入院患者のうち、重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者が一定割合以上であること。
(2)入院患者のうち、一定の医療処置を受けている人数が一定割合以上であること。
(3)入院患者のうち、ターミナルケアを受けている患者が一定割合以上であること。
(4)生活機能を維持改善するリハビリテーションを行っていること。
(5)地域に貢献する活動を行っていること。


□介護老人保健施設の見直し(案)

1. 在宅復帰支援機能のさらなる強化
(1)在宅復帰支援機能をさらに強化する観点から、リハビリテーション専門職の配置等を踏まえ、以下を重点的に評価する。
・在宅強化型基本施設サービス費
・在宅復帰・在宅療養支援機能加算
(2)入所前後訪問指導加算について、退所後の生活を支援するための要件を満たす場合に、新たに評価を行う。
【追加する要件】
①生活機能の具体的な改善目標を本人・家族とともに定めるとともに、退所後の生活も、施設と在宅の双方にわたる切れ目ない支援を行う計画を策定する。
②計画の策定にあたっては、医師、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護支援専門員等によりカンファレンスを行う。
2. 看護・介護職員に係る専従常勤要件の見直し
 介護老人保健施設の看護師、准看護師、介護職員は当該施設の職務に専従する常勤職員でなければならないが、当該施設に併設される介護サービス事業所に従事する場合に、その一部に非常勤職員を充てることができる旨を明確にし、その要件を定める。

□施設系サービスの口腔・栄養に関する報酬・基準(案) (省略)